ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

トライXがとらえたジャズ・シーン

2006年11月22日 | 映画
「チェット・ベイカー&クルー」という1956年のアルバム、のちにジャズメッセンジャーズに加わるボビー・ティモンズがピアノに入っているところが西海岸のジャズらしからぬ味付けになっているのだが、このジャケットは、ヨットにコンボのメンバーが乗って帆柱につかまったチェットがトランペットを構えているという実に奇妙な写真が使われている。これを撮ったのが、写真家ウィリアム・クラクストン。ジャズ写真の一つのスタイルをつくった人だ。

 この頃のウェストコースト・ジャズのアルバム・ジャケットはほとんどがこの人の作品といわれるが、WOWWOWでクラクストンのドキュメンタリー映画「JAZZ SEEN カメラが聴いたジャズ」(監督:ジュリアン・ベネディクト)を観ることができた。WOWWOWはさりげなく、こういう音楽もののドキュメンタリーをやってくれるのでうれしい。

 この映画によれば、クラクストンはこの頃、西海岸らしさを出すため、こんな演出をしていたらしい。ウェットスーツを着て海から上がってきた男にトランペットをもたせたり、ノー天気な明るさが笑える。映画には、チェット、エリントン、エラなど懐かしいジャズマンのライヴ映像もふんだんにあり、こうした人たちの“アネクドーツ”やら、妻で60年代の代表的なモデル、ペギー・モフィット、デニス・ホッパー、ヘルムート・ニュートン、ジョン・フランケンハイマーなどが登場し、クラクストンの写真の魅力を語る。ヘルムート・ニュートンとの対談が、二人の写真家の個性の違いを際立たせておもしろい。被写体に恋するように撮るというクラクストンに対し、モデルをモノとして冷徹に扱うニュートン。ニュートンが「フィルムは何使ってるの?トライXだろ。感度はどのくらいにしてるの」なんて聞くシーンがあるけれど、久しぶりに耳にした「トライX」、これが分かるのは何歳までだろうと思い、妙にうれしくなるのだった。


 ロバート・アルトマンが亡くなった。ロンググッドバイ、そして合掌。

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