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アルトマン監督「ロンググッドバイ」を観ながら春を待つ

2007年02月12日 | 映画
 ロバート・アルトマン監督「ロンググッドバイ」をDVDで観る。最も好きな映画のうちの1本。役者(猫も含め)、カメラ、音楽、舞台装置すべてがジャズ的な魅力にあふれているからだ。ちなみにこのDVDは900円だったはず。

 音楽は、「スターウォーズ」などで有名な巨匠ジョン・ウィリアムズ、ほぼ全シーンにわたってテーマ曲が、ジャズっぽいさまざまなアレンジで流される。ピアノトリオ・ヴァージョンはデイヴ・グルーシンが演奏している。鼻歌やバーのピアニストの練習曲、作家のロジャー・ウエイド邸のチャイム音までテーマが使われる懲りようだ。撮影はヴィルモス・ジグモンド で、常に流れるように移動しているカメラが気持ちいい。ウエイド邸での海のシーンが秀逸。窓ガラスごしのウエイド夫妻と波うち際で戯れるマーロウを窓ガラスに反射する映像で同時にとらえたシーンは美しい。

 マーロウが住むアパートの建物もコンクリートのツリーハウスみたいで不思議。エレヴェータで上昇と下降を繰り返しながら物語が展開していく。エリオット・グールドのフィリップ・マーロウ。いつも紺のスーツ。暑いメキシコの田舎町でもだ。そして全編でタバコを吸っている。主題曲の変奏。すべてが反復され、変奏されるのが、この映画のリズムをつくり出している。ニコチン中毒のような主人公もいまなら禁煙団体からクレームがつきそうだが、理不尽で暴力的な警察、マーロウの隣人で、裸で集団生活する女ダンサーたち、変態的なやくざの振る舞いなどに70年代の匂いが漂う。

 映画における「お別れ」の引用もいろいろあるようだ。警察に共犯容疑で拘留されたマーロウが指紋採取の後、手についた墨を顔に塗りたくるシーンはゴダールの「ピエロ」が自爆する前のしぐさ、メキシコの田舎町の並木道でマーロウとアイリーンがすれちがうラストシーンは「第三の男」のラスト、アリダ・ヴァリとジョセフ・コットンだ。きっとほかにもあるはず。逆にベンツのオープンカーで走り去る謎めいた作家の妻アイリーンをひたすら走って追いかけるシーンは、確か村川透と松田優作の遊戯シリーズで引用していたっけ。

 来週になるとまた、ひとつ歳を重ねてしまう。春も近い。

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