肥満があると、不整脈の一つである心房細動の発症リスクが高まることが「American Journal of Cardiology」5月号に掲載された論文で報告された。心房細動は心不全や脳卒中の原因となることから、研究者らは肥満の管理や治療には心房細動の予防も視野に入れる必要があると指摘している。
この研究では、米国民の医療請求データベースを用いて、6万7,278人の米国成人を2006年から2013年にかけて縦断的に追跡し、肥満と心房細動の発症との関連を調べた。対象者の平均年齢は約44歳で、約半数は肥満者であった。
その結果、肥満群では、肥満のない群と比べて高血圧(29.5%対14.6%)と糖尿病(12.7%対5.2%)の有病率が高かった。8年間の追跡期間中に1,511人(2.2%)が新たに心房細動を発症した。心房細動の発症率は、肥満のない群(1.8%)と比べて肥満群(2.7%)で高く、年齢や性、高血圧や糖尿病の有無で調整した解析でも心房細動リスクは肥満群で40%高かった。
論文の筆頭著者である米ペンシルバニア州立大学ミルトンS. ハーシー医療センターのAndrew Foy氏は「肥満と心房細動を合併する場合には、肥満の治療は心房細動の治療と管理にも役立つことになる。また、肥満の人は食生活の改善や運動、手術などで減量すると心房細動などの慢性疾患リスクの低減にもつながるだろう」と述べている。
心房細動は、心臓の上部にある「心房」と呼ばれる2つの部屋で生じる不整脈を指す。心房細動になると、心房がけいれんしたように小刻みに震えて全身に十分な血液が送れなくなり、心不全リスクが高まる。また、血液が心房内に滞るため血栓(血のかたまり)ができやすくなり、この血栓が脳の血管をふさいで脳梗塞の原因となることから適切な予防や治療が必要とされる。
Foy氏によると、肥満により心臓に負荷がかかること自体が心房細動リスクが高まる理由の一つに挙げられるという。同氏は「心臓にかかる負担が原因で心房に異常が生じ、心房細動の発症につながっている可能性が考えられる。また、肥満の人でよく見られる心臓組織の線維化や血圧の上昇、心房内の脂肪沈着などが心房細動と関連しているかもしれない」と指摘しつつ、「今回の知見は、健康そうにみえても肥満の人はきちんと治療を受けるべきことを強調するものだ」と付け加えている。
[2018年5月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights
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