大修復が進められている東近江市躰光寺町の「石畠山弘誓寺本堂」(国登録有形文化財)で3月11日、工事の経過を知る見学会が地元住民を対象に開かれ、300年の歴史を持つ本堂の内部が一般公開された。
↑写真:滋賀報知新聞より
東近江市躰光寺町の「弘誓寺(ぐぜいじ)」は近江七弘誓寺の一つに数えられ、1742年(寛保2年)に上棟したと伝わる。
これまで幾度と修復がなされてきたが、数10年前から床の老朽が著しくなり、門徒役員らで修復委員会を立ち上げて修復費を積み立ててきた。
床の修復を中心に昨年10月に工事が着工し、御本尊が収まる御宮殿を本堂から取り除くなど大がかりな作業が進められてきた。完成は10月末を予定。この機会を通して地域の文化財に関心を持ってもらおうと開いた見学会に門徒や住民約30人が集まった。
工事を行う白鳳社寺(本社・岐阜県金園町)によると、沈下調査や劣化調査などの結果、蟻害や木材の緩みなどが本堂全体に影響し、床が少し傾いている状態にあるという。工事を担当する1級施工管理技士の加藤卓也さんは「琵琶湖から吹く水分を含んだ風が木材などの風化につながり、強くない地盤の影響も重なってこのような状態になったのでは」と話す。
この日の見学会では、本堂を支える床下の格子状の柱が公開された。成形されていない柱を前に加藤技士は「歪な柱の形が文化財としての価値がある証拠。大きな機械がなかった昔の技術が集結している。それをいかに残し、生かすことが重要」と文化財の価値を示し、木材のパッキンや鉛板などで補強や高さを調整する職人の技術に門徒らは関心を寄せていた。
門徒の今井清さんは「これまで何度も修復されてきた箇所を見て、代々大事にされてきたお寺であると改めて感じた。しっかり引き継ぐためにも私たちの年代でできることをしていきたい」と話した。
<滋賀報知新聞より>
近江七弘誓寺(ぐぜいじ)
那須与一に所縁の寺。那須与一には七人の子供がありそれぞれ一寺を建て寺名をすべて弘誓寺(ぐせいじ)と号した。これを那須の七弘誓寺という。
弘誓寺(東近江市建部下野町)(浄土数)
弘誓寺(東近江市瓜生津町(西本願寺派)
弘誓寺(東近江市五個荘金堂町(東本願寺派)
弘誓寺(東近江市躰光寺町)(西本願寺派)
弘誓寺(東近江市小田刈町)(西本願寺派)
弘誓寺(東近江市中一色町)(東本願寺派)
法蔵寺(彦根南川瀬町)(西本願寺派)