戯曲の傑作「瞼(まぶた)の母」の主人公「番場の忠太郎」の銅像が、米原市番場の旧中山道沿いに移設された。
かつて近くの国道21号沿いにあり、数年前からは行方が分からなくなっていた。長浜市内にあるのが見つかり、番場の住民グループが「里帰り」を実現。3月18日、除幕式が開かれ、出席者らが「忠太郎、お帰り」と喜び合った。
↑写真:中日新聞より
目深に笠をかぶり、真っ直ぐに前を見つめる忠太郎の銅像は高さ1,75m、幅70cm。住民グループ「番場史蹟(しせき)顕彰会」によると、10年ほど前までは国道沿いの飲食店「忠太郎食堂」近くにあり、国道を行き交う人々を見守っていた。
店の解体時に長浜市の男性が買い取り、自宅庭に保管したが、その行方は番場の住民らに知られていなかった。会長の泉峰一さんは「銅像も壊されたと思っていた」という。
昨年3月、知人を通じて銅像の存在を知った泉さんらが「地域で大事に守っていきたい」と男性に持ちかけ、了承された。移設のための資金を、クラウドファンディングなどで集めた。
忠太郎を巡っては、番場にある蓮華寺に「瞼の母」の作者長谷川伸と地元住民らが協力して、1958年に建立した「忠太郎地蔵尊」がある。顕彰会は毎夏、地蔵尊の供養会「忠太郎地蔵まつり」を営んでおり、泉さんは「今後も地蔵尊とともに番場のシンボルとして、子どもたちにも伝えていきたい」と銅像を見上げた。
「瞼の母」は1930年発表。番場出身の忠太郎が、幼い頃に生き別れた母親を探す旅に出る物語。
<中日新聞より>