15 まず、お前にしっかりと伝えなくてはならないことといえば、我らの使命なんだ。この無秩序と暗闇の混沌から抜け出すのには、セルダン方程式の基本を忘れてはならないことは、イルミナ、お前も十分にわかっていることと思うが、人類全体の幸福の願いを未来に向かって投射し続けていくという行為なんだね。
そのためには、日々一歩づつたゆまない過去との対話を通して前進していく他にはない、ということ。極素輻射体の照射については、アルカディアが見出だした「グレディアの日記」からある程度、描写されている。その極素輻射体の機能の中心は、その装置を操作する人間の中心心理と同調し、その意思に沿って多様変化する、ということなんだ。極素輻射体はまず全面に「白い世界が描写され、次に黒い斑点が全面を覆い、それから紫の斑点が拡大し、その反対側に赤の極点を映し出す」という。この装置は許された数名の者しか、その使用を許されていない。もしかしたらこの銀河のどこかにユーゴ・アマリル由来の極素輻射体が複数個存在しているかもね。
ミーター、あまりにも込み入った話なのね!
これからも何度も説明していく機会があると思うから一度に理解しなくていいと思う。
それで、「我らの使命」と言ったわね?
そうなんだ。俺も、ハニスさんもオリンサスさんも同じ気持ちだと思う。アルカディアが成し遂げた使命の次の使命。彼女がなし得なかったこと。彼女から託されたことがあるんだ。
アルカディアは、二つのファウンデーションの確執をどうにか解決しようとして彼女の三部作を通して、セルダン、ガールから続く彼女の家系の足跡を明白に明らかにした。そのことによって二つのファウンデーションの使命を揺るぎなきものとした。
「我らの使命」とは、今度は消された銀河の歴史をもう一度明らかにすることによってこの銀河を復興することなんだ。いわば歴史消滅の結束点以前を探るという大使命なんだ。
ふ~。もしかしたら、ミーターの名講義はもう少しづつくみたいね!
イルミナ、おっしゃる通り。もう少し我慢してくれないか。
yatcha john s. ミーターの大冒険 オーロラへ 15 「歴史消滅の結束点以前」