41 私がベイタ・マロウです。エブリング・ミス博士に急なお話しで参りました。
これはこれは、こんなぼろやに、よくぞいらしてくれました。もっと堅苦しい方だと思いきや、若くて美人のお出ましとは、我が家には不似合いです。調べものが多くてこんな状態ですが、そこいらのものをどかしてお座り下さい。
なにせ、セルダン、ドーニック、ハーディン、マロウのご子孫様が来るなんて、光栄極まりありませんから。
実は、誰にも話せない事実をお伝えに参りました。母ロアには内緒でお伺いしました。ドーニックの館が我が家の所有だということはご存知でしょうけど、ドーニックの直筆の手紙を所有しておりまして、ミスさんもご存知ないことかと思って、お伺いさせてもらったのです。
セルダン宛の手紙で、その原書だと思います。
あなたもそうでしょうけど、心理歴史学は全体の帰趨を扱う学問であって、個々人の個別行動の有り様はそれに結びつかないという前提でしょうけど、セルダンはその個別様態をも視野にいれていた、という内容だったのです。その調査のためにドーニックに行かせたのです。銀河帝国が成立する前、ふるさとの星からの第一波の銀河への移民として五十数個の惑星に移民したスペーサーワールドと呼ばれる、中心星オーロラ、最後に移民されたソラリアに赴きました。オーロラで彼が発見したのは、当時Rといいわれた存在の代わりの番犬の群れ、でした。ソラリアでは人間一人につき一万台といわれていたR は存在してはおりませんでしたけど、当時医学の過度の発達によって何百歳という寿命を獲得していた反動で、奇形した人間が存在しているのです。それが両性具有の人間だったんです。
それがどうしたっていうのかね?私の研究は長年「心理学」に携わって来たが、ハッキリ言って「心理歴史学」という実態が思うように探りあてられないで、私の研究が中途で頓挫している。そしてこのターミナスの存亡は、もう一つのそれを操る奴ら、いわば第二ファウンデーションが握っていると理解している。その彼らの脅威をどうにか取り除かなくてならない。私はそれだけに関心がある。ドーニックの私的手紙なんて、どう見てもでっち上げに決まってる。私には関係ないと、思うがね。
でも、その博士の第一の関心事にボー・アルーリンやガール・ドーニックが関わっているとしたら?
いやいや、そんなことありはしない。
関係ないとお思いですか!「心理歴史学」では、奇形や突然変異体による感応能力者の全体構成に対する影響を考えてはおられないと、おっしゃるんですね!
論外ですね。セルダンやドーニック、アルーリンの学説をくまなく調べてもどこにもありゃしない。私が問題にしているのは、ただ第二ファンデーションの存在だけなんだよ、お嬢さん。私が調べる。専門家じゃない人が、とやかくいうものではありません。
ミスさん、最近ではターミナスでは第二ファウンデーションの話は聞かれないでしょうけど、他のターミナス所属の星々では、セルダンの誕生日もちゃんと祝われ、第二フウァンデーションの存在も真実として語られているということをご存知ないのですね!
ベイタさん、言っておくが仮に第二ファウンデーションが存在するとしたら、取り除かねばならない我らの脅威ではないだろうかねぇ!
https://youtu.be/oHdJas4t9_Q
yatcha john s. 『ファウンデーションの夢』 ベイタ・マロウ 1 「ミュータント」