ミーターの大冒険 第四部 コンポレロン 第7話 「 航海日誌 」
あらすじ
ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、シンナの軌道上、カルガン以来、初めての惑星探索を果たした。はじめはドローンで、そしていよいよ、ミーターはコンポレロンの地表に到達し、人間社会にも扮装して紛れ込んだ。人間たちは、透明なドームの鋼鉄都市に住みはじめていた。それはトランターの繁栄した時代のような外界の宇宙空間から身を守るような形態であって、ターミナスやその周辺星域の惑星とは異なっていることに二人(?)はいわゆる懐古趣味というような違和感をおぼえた。さらに、コンパーやジスカルド・ハニス、オリンサスの縁故がいないのには何故か落胆したが、ミーターの洞察力はにわかに鋭さを増していく。
ミーターは、コンポレロンの人々が最古の星の話題に異常な恐怖感を持つのに、あるもう一つの理由があることに思いつく。
それは、太古の星についての忌まわしい伝説、地表は放射能で焼けただれているという。それは真実なのか?ただの迷信なのか?
問題なのは、コンポレロンからオーロラという禁断の星へのルートがわからない。困難に直面した二人(?)であったが、そのとき、突如としてイルミナにある異変が生じた!イルミナは、いよいよフィードフォアード症候群の症状が起きる。そしてある感応者の精神と繋がる。その感応者とは?
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ミーター イルミナ、どういう具合でそういう学者を抽出できたんだ?ヴァジル・デニアドールという個人名まで、お前の神経が繋がるとは!
イルミナ それなのよ。まず懐疑主義のリストを五千人位ピックアップしたわ。銀河聖語アルファベットの1番からチェックしても何日もかかるわね。そうしたら、なんとなく、このヴァジル・デニアドールという名前に釘付けになったの。なんというか、例えていうなら人間の頭脳のニューロンとニューロンの間に放電するシナプスのような、そんな感覚よ。あの方(かた)が私たちのためにデニアドールという名前を明示してくれたんだわ、きっと。
ミーター それでデニアドールの心理に到達できたのか?
イルミナ できたわ。二つの情報よ。一つ目は「航海日誌」よ。デニアドールが保有する資料で彼が肌身離さずバックにしまっているものよ。しかもこのコンポレロンが人間によって植民された時代のものよ。ある航宙船の残骸の中で発見された代物よ。その航海日誌のなかに幸運にも、オーロラを含む三つに星の宇宙座標のデータがあったのよ。
ミーター オーロラのね。アタカナのデータはなかったのか?
イルミナ オーロラとね、ソラリアとメルポメニアよ。残念ですけど、アタカナはなかったわ。
ミーター そのデータを早速、ファー・スター2世号に読ませよう。
そしてあともう一つの情報というのは?
イルミナ 起源の恒星系(カビレ)の異様さについての伝説よ。
ミーター 異様さ、だって?
イルミナ この銀河にはまるっきりないというわけじゃないけど、その恒星系には異様な天体が二つあるって言う。
ミーター 「イルミナ、それは対(つい)ってことだな。」
イルミナ そうよ。一つ目の異常な天体はカビレを回っている惑星群の中の一つで、そのガス惑星を取り囲む光る巨大リングがある星のことよ。
もう一つはカビレを回る惑星の一つのそれを回る衛星が異常に巨大であるっていう伝説だわ。この特異性が故郷の恒星系の特徴だって。
ミーター ありがとう。それは興味深い。意味深長だ。
Photo はコンポレロンの貴重な歴史的遺産の「航海日誌」。