上巻に続いてユリアヌスを主人公にした話となる。正帝となったユリアヌスはキリスト教の優遇を廃し、全ての宗教を同等に扱う世界に戻そうとする。しかし、偶然に飛んできた槍で命を落とす。わずか19ヵ月の治世だったという。
塩野さんのこの巻の締めくくりは、もしこれが19ヵ月ではなく19年であったなら、キリスト教中心のローマ帝国も元の世界に戻っていたかもしれないというもの。明言せずとも読者はみな同じ考えに至るだろう。そして、ユリアヌスは古代では唯一人、一神教のもたらす弊害に気づいていた人だろうというのである。