【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第61回
「温故知新(おんこちしん)」(論語)
この言葉は、論語の一節で、
「子曰(いわ)く、故(ふる)きを温(たず)ねて、而(しか)して新(あたら)しきを知る。」
という有名な四字熟語でもあります。
明治から大正、昭和にかけて、我が国の政・財界・さらに社会公共事業に
偉大な業績を遺し、日本近代化の父と言われる渋沢栄一氏も、
幼少期に「論語」をはじめ漢学に触れ、人間性の基礎を確立していきました。
その渋沢氏も 原点である人生や事業の軸は、論語というものに置きながらも、
当時の明治維新の新たな文明開化においては、
西洋から様々な技術や知識を吸収し、近代化に貢献していきました。
もし、渋沢氏にとって論語というものがなければ、
時代や西洋諸国に翻弄されて、様々な偉業はなしえなかったのかと想像いたします。
渋沢氏は、このようにも言っております。
「正直・倹約・勤勉・質素の四つの徳を守って、算盤(そろばん)をはじけば、
必ず社会が指示してくれる。がむしゃらに利ばかり追っても、
最期は必ず破れる。倹約した資金を新しい企業にどんどん投資をして
社会をゆたかにしていくことが、実業家の使命なのである。」
これも、しっかり論語を通じた人間性の軸である「徳」という基準をしっかり持ちながら、
行動された証ではないかと僭越ながら感じております。
渋沢栄一氏のお墓は 日暮里にある谷中霊園にあります。
実は、私の母方の先祖のお墓も同霊園にある関係で、先祖のお墓参りもかねて、
渋沢栄一氏のご命日である11月11日前後にも 伺うようにしています。
渋沢氏が設立に関わった会社の関係者が、毎年 霊園に訪れて献花に溢れていらっしゃいます。
今年は、渋沢氏のご命日の翌日に伺いましたが、沢山の花に囲まれていました。
何か大切なものを継承されている気持ちを感じ、清々しい気持ちになりました。
まさに、温故知新ということかもしれませんね。
参考文献
『論語と算盤』渋沢栄一著 国書刊行会
『不易の人生法則』赤根祥道 PHP文庫
日暮里 谷中霊園にある渋沢栄一氏のお墓
11/11は御命日なので
清水建設、帝国ホテル、みずほ銀行など ・・・
渋沢氏が設立に関与した多くの企業や団体からの献花がありました。