When I Dream

~気侭な戯言日記~

誕生

2009-03-09 22:30:30 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
ブラインドから差し込む白い光に起こされ、クシャクシャの髪のままで顔も洗わずにダイニングのドアをそっと開けると、そこには、システムキッチンの前を溜息まじりで行ったり来たりする母、椅子に座ってTVニュースを見ながら、時折広げた新聞に目を落とす父がいた。それはいつもと何ら変わらない光景ではあった。いつもなら、ビングに入る前から独り言のように言葉を並べ合っている声が聞こえてくるのに、今日は二人ともやけに無口で静かだった。いつもと違わないのは、TVの音と新聞をめくる紙の擦れる音、焼けたパンの香り、トントンとまな板を包丁が叩く音くらいだ。いつもなら、ドアを開けた途端に、言葉を発しないまでも、ダイニングに入ろうとするボクの顔をホンの一瞬でも見るの両親なのに、なぜだか今朝はそれすらなく、二人とも、どこか遠くを眺めて気にしているようでもあって、明らかにいつもとは違っている。 . . . 本文を読む
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