もう10年以上前のはずですが
理・美容店の全国チェーン「プラージュ」の長野店が駅前にオープンし
意を決して立ち寄ってみたのは、それまで何十年も通っていた
“従来”の理髪店、いわゆる床屋のG店に不満があったからです。
その不満の1つ目は“ビフォー・アフター”に差があり過ぎたことです。
つまり、若くて剛毛の頃はともかく、毛が細くなり始めた35歳頃からは
毎日のシャンプー後も櫛で分け目を付けてから横分けに髪を流すだけの
自然乾燥によるいわばナチュラルヘアにしていたのですから
ドライヤーでクソ熱い風を当ててサイドや分け目を押し固めたり
てっぺんを平らにしたり、果ては前髪を無理やり上に捻り上げてオデコを出すなど
普段していないヘアスタイルにされたら終わった後はまるで別人のようになってしまうのです。
1カ月半に1度のペースのG店での散髪は、「もっと自然に流して!」と指摘しても
次に訪れる時は言ったことがもう忘れられていて、結局、“元の木阿弥”
ガチガチに固めてマスター一人が悦に入っていることを数回繰り返されてからは
1本の毛の乱れも許さないような、このマスターの云わば
マスターベーションとも思えるこだわりにもしょうがなく付き合うようにしていました。
帰ってから水で濡らして自分で直せばいいや、と内心で思いながら。
さらに若い頃には、当時ハヤリの「長髪&パーマ」だった時期でもあり
美容院に通っていましたので、こちらのカットの方が自然になることは知っていましたが
さすがに歳をとってから美容院に入る勇気はなくなっていました。
(そう言えば、この頃の疑問は「なぜ美容院のオーナーを“先生”と呼ぶの?」で
私は違和感を感じてそう出来ず「〇〇さん」と名前で呼んでいました)
そして2つ目の不満は、毎日入浴時にしているのでシャンプーが不要なのに
省いてもらっても当時3600円だった料金は確か3000円と600円安くなるだけだったこと
それは許すとして、さらに理解できなかったことは作業を一つなくしたのに
終わる時間が一緒になってしまうことです。
「これってなぜ?」と思って
約1時間かかる一連の作業をよく見ていてよ~く分かりました。
通常、このG店もそうでしたが
町の床屋はマスター一人+練習生(?)や奥さん等がタッグを組み
最初のカットと最後の仕上げのセットをマスターが担当し
この練習生が間のシャンプーと髭剃りを担当します。
そしてマスターが私のカットを終わり練習生がシャンプーと髭剃りをしている間に
マスターは次のお客のカットに入るわけですから、私がシャンプーを省いたら
次のお客のカットの時間を短くしなければならず、それは出来ないので
本来、私がシャンプーされている時間はただ単に待たされるだけ、ということになるのです。
(ガチガチにドライヤーで固めるのも、そうするための充分な時間が組み込まれているため
簡単に手櫛で流すだけのようなセットでは時間が余ってしまい間が持たないからでしょう)
これが分かってからは何となくローテーションを狂わすような依頼が申し訳なくて
数時間後に入浴してシャンプーすることが明確な夕方に散髪しても
黙って定価3600円の普通のパターンに従うようにしていました。
この「シャンプーをなぜするのか」については
条例で新規出店を規制するため「シャンプー台を設置しなければならない」と決めた
千葉県の理美容業組合の講釈が大義名分にされているようです。
曰く「髪を洗わないのは不衛生」
すなわち 「散髪後に掃除機のような 吸引装置で処理したのでは
切った髪を完全に除去できず、微小な毛が飛散し
不衛生や感染の原因となる危惧(きぐ)がある」 なんですとさ…。
しかし、設置してもお客に使う義務はなく、設備があっても
使うかどうかはお客次第なのですから 、シャンプーしても切った髪が十分に流されるとは限らず
「衛生的かどうかは店次第では」とその効果を疑問視する声もあるのはもっともなこと。
事実、このG店で私がシャンプーを省いてもらった時も
不衛生などという言葉はただの一度も聞いたことがありません。
つまりは格安店の出店を阻むための詭弁であることは明らかで
事実、確か千葉県にはプラージュが出店していないと思うのですが
日本一の売り上げを誇る同店のこと、これに対抗する意味でも、
シャンプー台を設置した店舗で千葉県にも拡大して欲しいものです。
もっとも、それでも出店していないのは組合からの献金などの見返りとして
もっと露骨な政治的圧力がかかっているのかもしれません。
ちなみに、私はもちろん1度も依頼したことはありませんが
私の知っている限り長野市の店舗は全部シャンプー台が設置されていますので
もしかしたら長野県もこの意味不明な条例や同じような状況があるのかも…。
ところで、シャンプーについてはもっと根本的な疑問もあります。
他人に髪を洗ってもらうこと自体に快感を感じる人もいますのでこの方は除くとして
また、シャワーさえできない環境で1週間も過ごした方は別として
そもそもカットした髪の毛を洗い流すためだけなのに、正体不明のあのシャンプー液を使って
さらに髪の油分を取り去る必要があるのでしょうか。
私はおかげさまで未だに薄毛や抜け毛に悩んでいませんが
現代では毛根やキューティクルに気を遣って数多くの種類の中から
厳選したシャンプー液を日常的には使用している方も多いのに、成分も匂いも違う
もしかしたら“業務用”かもしれない液を無理やり振りかけられることって
なんかおかしいと思えてなりません。
(その後、髪を傷める熱い風を吹き付けて無理に形を作り上げることまで強要されて)
もしかしたら油分がない方がセットがし易い事情が潜んでいるのかも…。
最後の3つ目は、全ての床屋の待ち時間がとにかく長いこと。
G店は途中から予約制になり改善されたとはいうものの
予約通りの10分前には必ず着いているのに30分待ちは覚悟しておかなければならず
床屋に限らず私の待ち時間の個人的限界の20分を超えてイライラさせられたことも
ままあったのですが、その後の知恵で朝一番の8:30に予約を取れる日にしておけば
早く着いた分の待ち時間だけで済むようになりましたので
この不満はさほど大きなものではなくなってはいました。
こうして、待ち時間の不満は解消してはいても、3600円も払わされるのに
365日の内の約8日だけは“自分でない”ヘアスタイルにされ
それを水をかけて元に戻すまでは例え数十分間とはいえ我慢しなければならず
また、365日しかないのに不要な8回を加えた373回もシャンプーすることを
暗に強要する“従来”の床屋に何十年も耐えて暮らしてきたわけですから
少なくても不要なシャンプーは別料金の上
「カット代1575円」に期待しないわけにはいかなかったのです。
ただし、誰でもそうであるように
私とて床屋を変えることにはかなり勇気が必要だったことは確かで
しばらく迷った後のある日、失敗しても大きな支障がなさそうな時期を見計らって
意を決して駅前の「プラージュ長野店」に飛び込み
“目からウロコが落ちる”ほどビックリさせられることになるのです…。