
今回は磯野家ではなく
サザエ、マスオ、タラオの3人家族のフグ田マスオ宅のお話です。
当のマスオは“大阪生まれ”ではありますが
実は国籍が韓国(=大韓民国)だった場合を考えてみます。
もちろん、“帰化(*1)”していないものとします。
まず、法律上の基本は
「相続は被相続人の本国法に依る」とされています。

1.サザエが死亡した場合
サザエは日本人なので日本の民法の
「被相続人の子等とともに被相続人の配偶者も相続人である」が適応され
子供のタラオと外国人配偶者であるマスオも相続権を持つことになります。
マスオが購入したサザエ名義の不動産が韓国にあるケースでも
基準になる法律は日本の民法になります(*2)
2.マスオが死亡した場合
マスオが残した財産が、日本の銀行預金や不動産その他を問わずに
マスオの本国である韓国の相続法が適応されます。
このため、相続人の範囲や法定相続分の割合は
相続手続きを日本国内で行う場合であっても
日本の民法の定めとは異なることになります。
ところで、どの国の法律に基づいて相続を決めるか(準拠法)の他に
日本の裁判所で手続を進めることができるか(裁判管轄)という問題があります。
・準拠法について…韓国人のマスオが死亡したケースでは、韓国法においても
日本と同じく「相続は、死亡時の被相続人の本国法による」ので
韓国法が準拠法になりますが、国によっては
相続の準拠法を「死亡時の住所地」や「遺産の所在地」としている国(中国など)もあり
その場合は準拠法が日本法に戻ってくるという現象が生じますので注意が必要です。
・裁判管轄について…遺産分割に関しては「被相続人が日本で亡くなった場合」
または「相続財産が日本に存在する場合」には
日本の裁判管轄を認めるという説が多数派です。
ただし、相続人の大半が外国に在住しているような場合は
日本で裁判手続を進めることは他の相続人に著しい負担を与えることになり
公平に反するという見解もあります。
また、外国に遺産が存在する場合に
日本で成立した遺産分割調停や審判が
外国で承認・執行されるかどうか不明という問題も生じてきます。
このように、国際間の相続問題は複雑で解釈も分かれているので
専門家に相談されることをおすすめします
(*1) ・・・日本国民の配偶者である外国人で
引き続き3年以上日本に住所または居所を有し
かつ、現に日本に住所を有する者
または、婚姻の日から3年を経過し
かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する者は
一定の条件を備える場合
法務大臣の許可により日本国民になることができます。
(*2) ・・・例えばアメリカのほとんどの州では
「不動産はすべてその所在地の法律にしたがって相続される」というのが
原則になっていますので 、この場合
不動産がサザエの単独名義であったとしても不動産の所在地の法律に
「実際は夫婦共同の働きによって取得した財産なので
夫婦共同の財産である」とする条文があると
事実上は夫婦の共同財産とされてしまうことがあります。
こうした相続の複雑さがある中で
何の準備もなく不動産の所有者が亡くなってしまうと
相続手続きが非常に困難になりますが
遺言状を作るという方法がこれを解決してくれます。
日本は「遺言に関する条約」に加入していて
“遺言の成立または死亡の時”に
国籍を有した国の法律に基づいて作られた遺言状は
他の加入国でも有効 となりますので、外国に財産がある方は
遺言状を書くことにより希望通りに財産を相続人に引き継ぐことができます。

このように、外国人を配偶者に持つ場合
日々の生活においても行政書士などとのお付き合いがあると思いますが
特に相続に関しては、法律関係が複雑になりますので
できれば生前に、弁護士、税理士、司法書士を含めた専門家に
予めご相談なさっておくことをお奨めします。