Die Blechtrommel(1979)
ドイツ文学の巨匠ギュンター・グラスの著作を映画にしたドイツ映画。監督フォルカー・シュレンドルフ。原著「ブリキの太鼓」はドイツ文学を学ぶ上で外せない重要作品。この1979年のドイツ映画、個人的に「最も印象に残る強烈な映画賞」をあげたい。(1979年のアカデミー外国映画賞とカンヌグランプリ受賞。)20年近く前に見、それ以来私のドイツ映画のイメージを決定してしまった記念作品。また、子供が主人公のお気に入り映画を挙げろ、(お勧め、とは違いますよ)と問われたらこの「ブリキの太鼓」とスペイン映画「みつばちの囁き」を挙げます。
←DVD。超音波を発しているオスカルの写真。(SFか?!)
第2次大戦前のドイツの町ダンツィヒ。少々男女関係に複雑な家庭に生まれた少年オスカル(ダーフィト・ベンネント)は、3歳の誕生日、大人になりたくなくて階段から身を投げ、自らの成長を止めます。(階段から身を投げたのはカモフラージュですけどね)それ以来3歳のまま、戦争に向かう激動の時代を身をもって体験します。そして21歳の時、父親の葬式で再び成長することにしたオスカルが、おばあさんとはぐれるところで映画は終わります。簡単に書くとこのようなストーリー。登場人物がみな癖あり。とくにオスカルの祖母、いかにもたくましいドイツ農婦の彼女は、畑で焼き芋をぱくついていた時、逃げてきたチビの放火犯をスカートの下に隠し、オスカルの母アグネスを身ごもります。映画イントロからこれですから。そのオスカルの母は、ドイツ人の同僚と結婚しますが、ポーランド系のいとこと愛人関係にあります。ある日海辺を散歩中にうなぎ捕りの漁師に出会った彼らは、うなぎ漁の真実を見てしまいます・・・これが気持ち悪い。それ以来もともと精神的に不安定だった母は、心を病んでいき、トイレで自殺します。このだんだん狂っていく様がとにかく怖い。ホラーと呼びたい所以です。うなぎ漁とこの母の狂っていくシーンはこの映画で最も印象に残った部分。実際この映画のこのシーンを見て、うなぎが食べられなくなったという人に会ったこともあります。食べ物に繊細な人は要注意。馬好きも要注意。欧州系映画が平気な人は大丈夫。
オスカル(ダーフィト・ベンネント)独特のこの横顔。ナチス慰問に行った時の写真。
今回お正月にBSで再見。3時間近い作品ですが、長さを感じませんでした。昔見た時に気に入った理由は今思えば、この映画は欧州的アート系でありながらファンタジー、オカルト、ホラー、コメディの各要素を持っていたから。そしてその底に流れる強烈なブラックユーモアは、類を見ません。最近になって原作者ギュンター・グラスが少年時代にナチスに関わっていた事を自分で公表、大問題になりましたが、この映画ではナチスをも主人公オスカルの餌食にしてしまいます。第2次大戦にいたる歴史の流れをベースにした映画でありますが、それは大きな歴史の流れで語られるのでは無く、あくまで主人公オスカルの目線、日常に起こる1エピソードとして寓話的に語られます。
主人公のオスカル役ダーフィト・ベンネント、俳優とダンサーの親を持つ彼は撮影時12歳。でっかいヘイゼルの目玉を見開いて大人の世界を凝視する様は妖怪です。目が怖いです。もちろん子供らしい可愛さもありますが、無表情に怖いことをする不気味さは、ホラー&オカルト。この演技力は凄いです。オスカルは図らずも、回りの人間を死に至らしめる原因を作り出す名人。父や叔父、叔父の同僚が死ぬきっかけを作ります。特に父が殺されるきっかけとなったエピソードは、強烈なナチスへの皮肉とも取れますが、あまりにブラックで怖すぎです。超音波を発してガラスを割り、母亡き後家事手伝いに来た少女とベッドで××、銃弾が降り注ぎ砲弾が炸裂するポーランド郵便局で「太鼓を取ってぇ」と泣き叫んだり、コメディなんだかシリアスなんだか、説明しがたいシュールな演技はまさに天才・・・
映画コンセプトは「人間の狂気」であると私は思います。その狂気が大人によってもたらされるものだと見て取ったオスカルは、子供のままで居ようと決め、狂気の傍観者として子供の無垢な目と、大人以上に冷めた観察眼をもって冷静に状況を観察します。彼の持つ「ブリキの太鼓」は、矛盾と欺瞞に満ちた大人の世界に対する武器であり、抵抗の象徴。ドイツの大戦前後の歴史を強烈なアイロニーとともに「妖怪少年」オスカルのクロニクルとして描いた、文字通りの名作、そして怪作。小難しい映画だと思って敬遠していた方には特に言いたい。決して難解ではありません!見るべし。
ドイツ文学の巨匠ギュンター・グラスの著作を映画にしたドイツ映画。監督フォルカー・シュレンドルフ。原著「ブリキの太鼓」はドイツ文学を学ぶ上で外せない重要作品。この1979年のドイツ映画、個人的に「最も印象に残る強烈な映画賞」をあげたい。(1979年のアカデミー外国映画賞とカンヌグランプリ受賞。)20年近く前に見、それ以来私のドイツ映画のイメージを決定してしまった記念作品。また、子供が主人公のお気に入り映画を挙げろ、(お勧め、とは違いますよ)と問われたらこの「ブリキの太鼓」とスペイン映画「みつばちの囁き」を挙げます。
←DVD。超音波を発しているオスカルの写真。(SFか?!)
第2次大戦前のドイツの町ダンツィヒ。少々男女関係に複雑な家庭に生まれた少年オスカル(ダーフィト・ベンネント)は、3歳の誕生日、大人になりたくなくて階段から身を投げ、自らの成長を止めます。(階段から身を投げたのはカモフラージュですけどね)それ以来3歳のまま、戦争に向かう激動の時代を身をもって体験します。そして21歳の時、父親の葬式で再び成長することにしたオスカルが、おばあさんとはぐれるところで映画は終わります。簡単に書くとこのようなストーリー。登場人物がみな癖あり。とくにオスカルの祖母、いかにもたくましいドイツ農婦の彼女は、畑で焼き芋をぱくついていた時、逃げてきたチビの放火犯をスカートの下に隠し、オスカルの母アグネスを身ごもります。映画イントロからこれですから。そのオスカルの母は、ドイツ人の同僚と結婚しますが、ポーランド系のいとこと愛人関係にあります。ある日海辺を散歩中にうなぎ捕りの漁師に出会った彼らは、うなぎ漁の真実を見てしまいます・・・これが気持ち悪い。それ以来もともと精神的に不安定だった母は、心を病んでいき、トイレで自殺します。このだんだん狂っていく様がとにかく怖い。ホラーと呼びたい所以です。うなぎ漁とこの母の狂っていくシーンはこの映画で最も印象に残った部分。実際この映画のこのシーンを見て、うなぎが食べられなくなったという人に会ったこともあります。食べ物に繊細な人は要注意。馬好きも要注意。欧州系映画が平気な人は大丈夫。
オスカル(ダーフィト・ベンネント)独特のこの横顔。ナチス慰問に行った時の写真。
今回お正月にBSで再見。3時間近い作品ですが、長さを感じませんでした。昔見た時に気に入った理由は今思えば、この映画は欧州的アート系でありながらファンタジー、オカルト、ホラー、コメディの各要素を持っていたから。そしてその底に流れる強烈なブラックユーモアは、類を見ません。最近になって原作者ギュンター・グラスが少年時代にナチスに関わっていた事を自分で公表、大問題になりましたが、この映画ではナチスをも主人公オスカルの餌食にしてしまいます。第2次大戦にいたる歴史の流れをベースにした映画でありますが、それは大きな歴史の流れで語られるのでは無く、あくまで主人公オスカルの目線、日常に起こる1エピソードとして寓話的に語られます。
主人公のオスカル役ダーフィト・ベンネント、俳優とダンサーの親を持つ彼は撮影時12歳。でっかいヘイゼルの目玉を見開いて大人の世界を凝視する様は妖怪です。目が怖いです。もちろん子供らしい可愛さもありますが、無表情に怖いことをする不気味さは、ホラー&オカルト。この演技力は凄いです。オスカルは図らずも、回りの人間を死に至らしめる原因を作り出す名人。父や叔父、叔父の同僚が死ぬきっかけを作ります。特に父が殺されるきっかけとなったエピソードは、強烈なナチスへの皮肉とも取れますが、あまりにブラックで怖すぎです。超音波を発してガラスを割り、母亡き後家事手伝いに来た少女とベッドで××、銃弾が降り注ぎ砲弾が炸裂するポーランド郵便局で「太鼓を取ってぇ」と泣き叫んだり、コメディなんだかシリアスなんだか、説明しがたいシュールな演技はまさに天才・・・
映画コンセプトは「人間の狂気」であると私は思います。その狂気が大人によってもたらされるものだと見て取ったオスカルは、子供のままで居ようと決め、狂気の傍観者として子供の無垢な目と、大人以上に冷めた観察眼をもって冷静に状況を観察します。彼の持つ「ブリキの太鼓」は、矛盾と欺瞞に満ちた大人の世界に対する武器であり、抵抗の象徴。ドイツの大戦前後の歴史を強烈なアイロニーとともに「妖怪少年」オスカルのクロニクルとして描いた、文字通りの名作、そして怪作。小難しい映画だと思って敬遠していた方には特に言いたい。決して難解ではありません!見るべし。
最近、ブログをはじめまた髭ダルマLOVEと申します。
興味深くレビューを拝見しました。
私も、ブリキの太鼓のDVDを持ってます。
初めて観たとき、かなり衝撃的でした。
迂闊にもむしゃむしゃとお菓子を食べながら観ていたので、ものすごく気持ち悪くなってしまったことをおぼえています(笑)
トラックバックさせていただきます。
今後とも宜しくお願い致します。
この記事にコメントもらえて嬉しいです~!
ブリキの太鼓なんてマイナーな映画の記事・・・誰も読んでないんじゃないかと泣いていたところです。衝撃的ですが、忘れられない映画ですよね。なんともいえないシュールな映画です。
ダルマさま(すみません略してしまって)の所へさっきお邪魔しました。名作を毎日上げておられるようで。一年後には凄いデータベースとなるのでは??おお私もがんばらなくては。
それではRTBさせていただきます~
さっそくのコメントありがとうございました!
名作ばかりの美味しいとこ取りでおはずかしい。書きながら気恥ずかしいです。
過去約10年くらい前から観た作品の記録「観た帖」なるものを作り始め、その中でいいなあと思ったもののみDVDを購入したんです。意外と、DVD所持しているものに関しては何も記録がなかったので先にそちらをアップしていこうという作戦なんです(笑)
基本的に雑食なので節操のない作品チョイスです。過去観たものの中には、何度も睡魔と戦う羽目になった自分に合わないものも多数です。はやくそこまでたどり着ければいいなあと思っています。
今後とも宜しくお願い致します。
10年前からメモ付けておられるとは、凄いです。昔見た映画をレビューしようとしても、詳細思い出せません、私は。だからってレンタルにあるものばかりじゃないですし。
すぐ題名忘れるし・・・
雑食なのはいいと思いますよ、私は偏ってますからねぇ。世間一般の映画話についていけないときがありまして・・・最新のシネマ情報とか全然疎いです。
印象的なHNですこと・・・!
いまさらですが再びおじゃまします。
>最新のシネマ情報とか全然疎いです。
いや、最新のシネマ情報は私も疎いです。というか、映画は興味はありますが基本的に詳しくないです。だから「今頃、それみてんの?」っていう感じはしばしばです(笑)
>印象的なHNですこと・・・!
「髭ダルマ」は友達と話すときに使っているキューブリックのあだ名なんです(笑)この監督は、観る作品観る作品みんなため息をつかされます。なのでかなりダイレクトなHNなんです。
>だから「今頃、それみてんの?」っていう感じはしばしばです(笑)
それ私もよく言われます。
HNの由来を教えていただいて、疑問がとけましたよ。キューブリックのことだったんですね。髭ダルマとは笑える!世の中いっぱんで髭ダルマといったらキューブリックのことを指すのでしょうか?!(んなわけない・・・)
それではまた!