海洋プラスチック汚染問題の有力な選択肢として旧来の石油系プラスチックから生分解プラスチックへの移行があげられる。
その生分解性プラスチックとして現在最も研究されているものが,ポリ乳酸(PLA)である。
ポリ乳酸(PLA)は,ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリスチレン(PS)とよく似た物理的特性を有し、植物に含まれるデンプンや糖類を発酵させ,得られた乳酸を重合させて製造した生分解性プラスチック。繊維製品や包装用フィルム,容器などに利用される。生分解性プラスチックである。
ポリ乳酸は水分を加え60℃の温度で活発に分解するが自然界ではそのような状況はまれである。
そのため、ポリ乳酸は海洋では分解されないといわれる。
だが水中で分解する生分解性プラスチックの研究は進んでおり、東京大学大学院農学生命科学研究科の岩田忠久教授らの研究グループが,水中で分解する論文を学術誌「Biomacromolecules」(2020年7月17日)に発表した。
遠くない未来、水中で生分解されるプラスチックが普及するのは確実だろう。
しかし、水中で生分解するプラスチックが開発されたとしても乗り越えなければならない課題は多い。
石油由来のプラスチックは用途、性質などの違いから50種類以上あるが、生分解性プラスチックはまだまだ種類が少ない。
既存のプラスチックの用途や性質をクリアーして、なおかつ生分解性の要素を加えなければならない。
考えられる課題として。
1、コスト
1、コスト
いくら環境に配慮しているとはいえ現在よりもコストが大幅にアップすれば、企業は採用できない。
すると、ますます普及が遅れ、開発もストップするだろう。
2、性能
生産から流通し在庫され使用され使用が完了するまでは十分な強度を保ち、誤って環境中に放出された場合は速やかに分解する。
そのような矛盾する性質が求められる。
そして分解速度。
自然環境に放出された際に分解までどのくらいの時間の猶予があるのか。
1週間で分解すれば、生物に負荷を変えずに済むのか、その分解とはマイクロプラスチック状態が消えるまでなのか。
分解速度を制御できる因子が発見できるのかがカギを握る。
3、人間の意識
生分解プラスチックならポイ捨てしても問題がないと思うようになる。
生分解性プラスチック開発はこれからのゴミ問題の解決策であるが、生分解性プラスチックが開発されたとしても現在海洋を漂っているプラスチックごみが消滅するわけではない。
生分解性プラスチックの研究開発とともに、現在の海洋プラスチックごみの回収方法も視野に入れて行動しなければならない。