(11月17日コメント:「地に足の付いた誠実な本です」という意味を込めてつけたタイトルだったのですが、別の意味に誤解されかねないタイトルと考え直して、タイトルを修正しました。)
管理栄養士の成田さんの監修した新刊が、オレンジページから出ました。野菜をトマトの「トマ美」ちゃんやブロッコリの「ブロッコ委員長」などのキャラに見立てて、イラストでそれぞれの良い特徴を紹介する、小学校低~中学年くらい向けの本です。
子どもや初心者向けに「野菜の健康性」を紹介する類書は他にもありそうですが、「やさいーズ」は細部に気遣いが行き届いているので、じわじわと感動します。
タミアのツボだった所は次の3点です。
1・家庭で出来る手軽な科学実験なども盛り込んでいて、大人も子どもも好奇心をそそられる内容です。
2・野菜を子どもに食べて欲しいとがんばっている親の気持ちに寄り添いつつ、無理強いをしないで暖かい目で見守ることが大事ですよね、というメッセージで、ほっとする文章です。文章を書いた柳本さんのお力もあってと思います。
3・健康に関する記述は、科学的に裏付けのある内容だけに絞り込んでいます。医学的根拠の希薄な説は棄却しています。
野菜の健康性を紹介する最近の「啓蒙書」には、例えば次に挙げるような奇妙な言説が紛れ込んでいることが多いものです。
●「大根にはデトックス効果がある。」(そもそも論としてデトックス効果というものが医学的に定義出来ないのに、どうしてその効果があると測定できるのか疑問ですよね。)
●「キュウリを食べると身体を冷やす効果がある。」(キュウリは普通は冷やしてたべますから、キュウリの成分による効果ではないですよね。トマトでも大根でも、冷やして食べれば身体は冷えますよ。)
●「根菜は身体を温める効果がある。」(大根の冷やしおでんは身体を冷やしますよね。根菜は冬に食べることが多く、しかも冬には加熱調理して熱い内に食べるから、昔の人は「根菜そのものに身体を温める効果がある」と勘違いしたのでしょう。)
以前、野菜の専門書を読んだ時に、レタスやキュウリには特段の優れた健康性や機能性というものはなく、健康ウンヌンよりもおいしさや歯ごたえを楽しむ食品と考えるべきだと書いてありました。「やさいーズ」にも、レタスやキュウリのページがないことからも分かるように、過度に野菜の健康性を煽る奇妙な説は載せないように工夫していることが分かります。
ただ、大変済みませんが、あえて気になった点についても触れます。それは、科学的根拠のない説について記載もしてないが、否定もしていない、という点です。科学的根拠のない説を並べ立てる本と「やさいーズ」の両方を読んだ読者の中には、同時に信じてしまう可能性もある、ということです。「そうか~。大根ってジアスターゼがある上にデトックス効果もあって身体を温めるからすごーい♪」的台詞を言う人が現れるトホホな状況を想像してしまいました。この点はなんとかならないのだろうかと気がかりです。
もう一つ、気になったことがあります。それは、旬の野菜は栄養価が高いから旬を意識することが大事だ、という趣旨の文章があったことです。旬の知識はないよりあった方がいいとは思いますが、この話はまじめに考えれば考えるほどラビリンスに陥ります。
なにしろ、すでに旬がない野菜があるのです。例えばキャベツは一年中収穫できます。温室栽培などではなく、地べたに生やしてお日様で育てて、それでもほぼ1年を通して日本のどこかで収穫できるのです。
次に、旬でない野菜にも、少し含有量は減るもののその野菜に特徴的な栄養成分が含まれていることです。であれば、多少季節外れのものでも年間通じて時々食べる方が、むしろ年中リコペンや葉酸やカロテンと、いろんな栄養を取れてバランスが良いのでは?「旬の方が少し栄養価が高いから」という話にこだわるならば、旬に収穫した冷凍野菜を年中食べるのが健康的、という結論にもなります。
旬について知っていれば、おいしくて安い生鮮野菜が手に入るので経済的ですし、雑談のネタになったり、純粋な「知る喜び」があります。これらの点で、タミアも旬を知っておくことには賛成です。ですが健康面ということに的を絞ると、平成の今日において旬を知ることがことさら大きなメリットになり得るのか、その点については、考えあぐねてしまいました。
・・・ちょっと気になる点も書いてしまいましたが、でも、総論としては☆5つです。野菜嫌いの子どもを持っても(ウチがそうですが。)親は力まずに、少しずつ長い時間をかけて子どもに野菜を薦めれば良い、暖かい目で見守ることが大事なのだという趣旨に心温まります。ウチも、暖かく見守りながら少しずつ野菜好きに育てていきたいなあと思いました。ポジティブな気持ちで今日の献立を考えるための元気を与えてくれる良書と思います。
管理栄養士の成田さんの監修した新刊が、オレンジページから出ました。野菜をトマトの「トマ美」ちゃんやブロッコリの「ブロッコ委員長」などのキャラに見立てて、イラストでそれぞれの良い特徴を紹介する、小学校低~中学年くらい向けの本です。
子どもや初心者向けに「野菜の健康性」を紹介する類書は他にもありそうですが、「やさいーズ」は細部に気遣いが行き届いているので、じわじわと感動します。
タミアのツボだった所は次の3点です。
1・家庭で出来る手軽な科学実験なども盛り込んでいて、大人も子どもも好奇心をそそられる内容です。
2・野菜を子どもに食べて欲しいとがんばっている親の気持ちに寄り添いつつ、無理強いをしないで暖かい目で見守ることが大事ですよね、というメッセージで、ほっとする文章です。文章を書いた柳本さんのお力もあってと思います。
3・健康に関する記述は、科学的に裏付けのある内容だけに絞り込んでいます。医学的根拠の希薄な説は棄却しています。
野菜の健康性を紹介する最近の「啓蒙書」には、例えば次に挙げるような奇妙な言説が紛れ込んでいることが多いものです。
●「大根にはデトックス効果がある。」(そもそも論としてデトックス効果というものが医学的に定義出来ないのに、どうしてその効果があると測定できるのか疑問ですよね。)
●「キュウリを食べると身体を冷やす効果がある。」(キュウリは普通は冷やしてたべますから、キュウリの成分による効果ではないですよね。トマトでも大根でも、冷やして食べれば身体は冷えますよ。)
●「根菜は身体を温める効果がある。」(大根の冷やしおでんは身体を冷やしますよね。根菜は冬に食べることが多く、しかも冬には加熱調理して熱い内に食べるから、昔の人は「根菜そのものに身体を温める効果がある」と勘違いしたのでしょう。)
以前、野菜の専門書を読んだ時に、レタスやキュウリには特段の優れた健康性や機能性というものはなく、健康ウンヌンよりもおいしさや歯ごたえを楽しむ食品と考えるべきだと書いてありました。「やさいーズ」にも、レタスやキュウリのページがないことからも分かるように、過度に野菜の健康性を煽る奇妙な説は載せないように工夫していることが分かります。
ただ、大変済みませんが、あえて気になった点についても触れます。それは、科学的根拠のない説について記載もしてないが、否定もしていない、という点です。科学的根拠のない説を並べ立てる本と「やさいーズ」の両方を読んだ読者の中には、同時に信じてしまう可能性もある、ということです。「そうか~。大根ってジアスターゼがある上にデトックス効果もあって身体を温めるからすごーい♪」的台詞を言う人が現れるトホホな状況を想像してしまいました。この点はなんとかならないのだろうかと気がかりです。
もう一つ、気になったことがあります。それは、旬の野菜は栄養価が高いから旬を意識することが大事だ、という趣旨の文章があったことです。旬の知識はないよりあった方がいいとは思いますが、この話はまじめに考えれば考えるほどラビリンスに陥ります。
なにしろ、すでに旬がない野菜があるのです。例えばキャベツは一年中収穫できます。温室栽培などではなく、地べたに生やしてお日様で育てて、それでもほぼ1年を通して日本のどこかで収穫できるのです。
次に、旬でない野菜にも、少し含有量は減るもののその野菜に特徴的な栄養成分が含まれていることです。であれば、多少季節外れのものでも年間通じて時々食べる方が、むしろ年中リコペンや葉酸やカロテンと、いろんな栄養を取れてバランスが良いのでは?「旬の方が少し栄養価が高いから」という話にこだわるならば、旬に収穫した冷凍野菜を年中食べるのが健康的、という結論にもなります。
旬について知っていれば、おいしくて安い生鮮野菜が手に入るので経済的ですし、雑談のネタになったり、純粋な「知る喜び」があります。これらの点で、タミアも旬を知っておくことには賛成です。ですが健康面ということに的を絞ると、平成の今日において旬を知ることがことさら大きなメリットになり得るのか、その点については、考えあぐねてしまいました。
・・・ちょっと気になる点も書いてしまいましたが、でも、総論としては☆5つです。野菜嫌いの子どもを持っても(ウチがそうですが。)親は力まずに、少しずつ長い時間をかけて子どもに野菜を薦めれば良い、暖かい目で見守ることが大事なのだという趣旨に心温まります。ウチも、暖かく見守りながら少しずつ野菜好きに育てていきたいなあと思いました。ポジティブな気持ちで今日の献立を考えるための元気を与えてくれる良書と思います。
大根のデトックス成分はわかりませんが、IP6(フィチン)とイノシトールのHg排出効果等の有害金属排出促進をデトックス効果といえば、医学的にその品物を食べて排出量が増えれば、定義可能かもしれません。
https://books.google.co.jp/books?id=TGroAAAACAAJ&source=gbs_ViewAPI
>●「キュウリを食べると身体を冷やす効果がある。」(キュウリは普通は冷やしてたべますから、キュウリの成分による効果ではないですよね。トマトでも大根でも、冷やして食べれば身体は冷えますよ。)
これはカリウムによる血圧低下や代謝低下によるものもあるかもしれません。(特にたくさん食べた場合)