タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

デマを阻止ししちゃいけないの?今問われる日本人の善意

2020年04月12日 | Weblog
今、新型コロナの大流行で私たちは厳しい局面にさらされています。一緒に打ち勝つために、デマとの戦い方について考えましょう。

2月27日にツイッターに投稿された「トイレットペーパーは中国産だから輸入できなくなる」とのデマに、大勢の方が「トイレットペーパーは国産。無くなるという話はデマだから、落ち着いて。」と善意でツイートしたら品薄になった、と4月6日付け日経朝刊一面に記事が載りました。この記事を見て、「たとえ善意でも、デマを阻止しちゃいけないの?」と不安になったかたも多いことと思います。でもご安心ください。答えを先に言うと、一般論としては、正しい情報だとする確証があるなら、デマを打ち消すことが社会の役に立ちます。でも、運悪く、トイレットペーパーの場合は特殊な事情が重なったため、善意があだになったのです。

なぜそう断言できるのでしょう。ITmediaビジネスonlineの3月16日記事によると、トイレットペーパーを買いだめした人にアンケートしたら、大半が「デマだと分かっていてそれでも買い占めに走った」と答えたそうです。大抵の人間は、デマがつまらないデマだと分かったら、そんなのに振り回されるのは人生無駄だから、節度ある行動に切り替えます。ところが今回のトイレットペーパーの件だけは、デマだと確信してて、それでも買い占めしたんだから、通常の例ではないことがわかりますよね。
 だから、もしもあなたが「カード会社の人が玄関先にカードを受け取りに来るという話はデマだから気をつけて」等、明らかに正確な話題をツイートするなら、決して萎縮しないで。

では、なぜトイレットペーパーの件だけは、人々はデマだと知っててそれでも買い占めしたのでしょう。実は、先ほどのITmedia記事によると、買い占め行動を後押ししたのは、ツイッターの善意投稿ではなくて、その後でメディア、特にテレビがトイレットペーパーのデマを報道したためでした。

その経過を詳しく説明しましょう。
まず27日午前10時過ぎに、デマが1つ投稿されました。それについてのリツイートはたった1件のみでした(日経によると、別アカで類似デマ投稿が2件あったが、それらもほとんどリツイートされてなかったそうです)。日経によると、このデマを否定する善意の投稿が、同日午後2時ごろ急増したとのこと。同紙5面にグラフが載っており、午後2時ごろにだいたい5万件のリツイートになってます。

そしてこの5面の記事に、夕方以降にニュースサイトと民放がこの話題を取り上げたと書いてありますが、そのことについてはそれ以上触れていません。一方ITmedia記事は、この夕方以降のメディアがパニック買いを引き起こしたとあります。どうしてでしょう。テレビや、テレビを転載したweb記事を見た人々が、「こんなデマを信じるつまらん連中が近所にいたら、結果的に迷惑を被るのはわしらだ。」と考えて自衛に走ったからなのです。なかでも決定的だったのがテレビ番組の影響だったと東大大学院の橋本良明教授(社会心理学)が分析していますので、関心のある方はITmedia記事原文を読んでください。日経さんの分析に協力した先生は、トイレットペーパーとツイッターの関係に注視するあまり、テレビの与えた影響までは想像してなかったのでしょう。


みんな知ってる通り、ツイッターは大体30~50歳代に利用されているので多くの利用者は「デマを信じるお馬鹿さんもいるのかねえ?」と思って読みますが、テレビ番組を転載したweb記事の読者は平均40~60歳代、さらにテレビ番組は60歳以上の高齢者が主な視聴者です。そして、60歳以上の人にはいまでもテレビは非常に信頼されており、テレビのニュースを見て、昭和のオイルショックのトイレットペーパー買い占め騒動を思い出すのもその世代です。そして、スーパーに繰り返し足を運んで多量にトイレットペーパーを購入する時間の余裕がある人はどの世代に多いでしょうか。その世代の方々のツイッター利用率はどの程度でしょうか?さあ、もうこれ以上言わなくてもわかりますよね?

マスコミの方々には、「物がなくなったスーパーの映像」を流すのは慎重にして欲しいと思いました。ニュースとしては面白い絵だとしても、見る側は、空っぽになった棚の映像を見て、「こんな馬鹿な連中が実在するのか?これは明日は俺たちの住む町のことかもしれない。静観していて迷惑を被るのはごめんだ。」と考えて、われもわれもと真似して購入します。それを見た人がさらに不安をあおられて「予言が成就」するのです。

ツイッターで投稿する方にもお願いですが、あやふやな情報しか持ってない方は善意でも投稿しないでください。多少教育を受けた読み手なら、あなたが無名だろうが有名だろうが、その投稿内容が何をデータソースとしているか、裏付けする専門家がいたり論文があるのか、投稿の信頼性をチェックしています。匿名でも、専門家の論文や正確なデータに裏打ちされた情報を誠実に提供するすばらしい方もいます。情報過多で揺れる不安な現代だからこそ、1人1人が誠実な情報提供に気をつけて理性的に行動したいですね。そして、このつらい危機をみんなで乗り越えましょう!!

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