一本の桜の木
描かれているのは一本の桜の木だが、遠くから観ると湯上りの若い女性が佇んでいる
よにも見える。色香が漂う不思議な名画で、素人でも、何回観ても飽くことがない。
この絵を観ながら思う。
運のいい時というのは、満開の桜のようなものだ。美しく華やかで、一目わひく。
一方、不運に見舞われ、不遇わかこっている時は、桜の木が土の中に根付こうとしてい
る時期である。
人は満開の花に目を奪われ、色や枝ぶりわ誉めそやしているが、根っこを張っているだ
けの木には目もくれない。あるいはね「この桜はダメだね」などと言っている。眼に見え
ない土の中のことは無視され、花をつけていなければ敗者として処理されていくが、今の
世の中である。
だが、しっかりと根を張った桜は、やがて芽を出し、驚くほど豊かな花を咲かせる。
不運とは、幸福の根源にほかならないのである。
米長邦勇著 「不運のすすめ」より抜粋
写真は時期を逸した桜であるが、8月の桜の木は葉桜を謳歌している。
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