事をなすに快活㉛・・・水運問答
雲 およそ事をなさんとするときには、快活にしたいものであります。たとえば千金
の褒美を与えても、けちけちして出したのでは人はその恩に感服しません。一毛を
抜いてやるというような、ほんのわずかな品物でも、誠意があれば人はみな感動い
たします。たとえば質素倹約の令を下すのに、とかく眉をしかめて、その上けちけ
ちして経費を削減などするものですから、ほとんど成功した例はありません。こん
な時にはさっぱりと、大掛かりにやると、疑いなく人心は服しましょう。人を使う
のに、生かして使うか、殺して使うかは雲泥の相違で、たいへん大事なことであり
ます。八代将軍吉宗公の上意に「困ったときにうつ向く者は役に立たず、困ったと
きに仰ぐ者が役に立つのだ」と言われておりますが、まことに大切な御意見で感服
しております。
水 これは自分の精神のできておるか、どうかの違いでありまして、快活でないのに
無理に快活をよそおうのは誠ではありませぬから、人は服しません。誠意をつくし
て、初めは人が服そうが服すまいが頓着なしにやると、そのうち人心は服するもの
であります。額にしわをよせて仕事をするのは、自分でできるかできないかと心配
してかかる証拠でありますから、成功する例は少ないのであります。古人は困難な
仕事をやってのけておりますが、今の人はきわめて容易なことでも仕とげません。
これは精神ばかりではなく、見識に欠けた所も原因であります。見識があってその
上気力の充実した者は、どんな大事も成就しましよう。吉宗の教訓に、精神が旺盛
でなければできない。たとえ見識があっても柔弱な人は何の用にも立たぬ、と申す
のはこの点であります。
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