梁石日(ヤン・スギル)原作の『闇の子供たち』を渋谷・シネマライズで観てきました。現在都内での上映館はここだけ。8月末から拡大公開されます。
(財)日本ユニセフ協会の推薦映画ではありますが、PG-12(12歳以下は親の同伴が望ましい)でもあります。12歳にはちとキツイ場面もありますよ。
人身売買、児童売買春、臓器売買・・・微笑の国といわれるタイの裏社会で日常的に行われている非人道的な現実。けして小説の中だけのことではない事実の映画化です。
一人の少女が売春でエイズになり、働けないとわかるとゴミ袋に生きたまま入れられて捨てられる。
彼女は袋を破り、必死に逃げ延びて家までたどり着くが、待っていたのは病気による死。親は娘が寝ていた狭い小屋(鳥小屋みたいに小さい)ごと焼き払います。身体中にアリが這っている娘の身体。まだ10歳、生まれてきたことの喜びをひとつも知らないまま逝ってしまった娘なのに、厄介払いをするように簡単に。
また別の女の子は、健康体であったため臓器提供者になります。最初で最後の、清潔なかわいい服を着せられ、病院の医師に手を引かれて歩いていきますが、生きて戻ってくることはありません。麻酔をかけられたあと、日本人の少年に心臓を提供するからです。
被害者は少女だけではありません。
ある少年は白人のカップルにホルモン剤を4本注射されたあげく、ショックで痙攣しながら亡くなってしまいます。成人でも3本打てば死んでしまうといわれるホルモン剤だそうです。少年は自分に何が起こっているかわからず、この時間をやり過ごせば・・・それだけを思って耐えていたんじゃないでしょうか。
幼い女の子を買って、自身のブログにアップする日本人。
8歳の息子の心臓移植のために犠牲になるタイの子供がいるとわかっていても、手術を中止することができない夫婦。
大国のエゴです。
性癖とはなんだろう?
たまたま同じ時期に読んでいた石田衣良の小説『池袋ウエストゲートパークⅥ』の中のひとつ“駅前無認可ガーデン”に主人公マコトの言葉として
「欲望の対象なんて、自分で決めるものではなく、意地の悪い神さまか誰かにダーツでも投げるように決められてしまうものだ。黒いダーツがはずれたら、おれもゲイでハードSで、おまけにスカトロマニアの幼児性愛者になっていた可能性だってある。」というのがあります。
つまり性癖とは持って生まれたもの。自分ではどうしようもないということなのでしょう。
だからと言って他国まで出張り、好き勝手をしていいということではないのである。それも経済的に弱者である国の人たちに対して、札束で頬を張るような真似は絶対してはいけない。
現実に自分の性癖に悩みながら、健全であろうと努力している人の方が多いと私は信じているのですが、こればかりは自信がありません。
映画を観た後の私の精神はペチャンコにつぶされそうでした。
何か自分にできることはないだろうか・・・そんなことを真剣に考えさせる映画でした。重いです。でもたくさんの人に観てもらいたいな。
◆『闇の子供たち』公式サイト
http://www.yami-kodomo.jp/