マイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』を観て来ました。
遅ればせながら・・・ですが、地元のシネコンでは1月9日からの上映だったんです。
最初に言っておきますが、特にマイケル・ジャクソンのファンというワケではありません。むしろ彼には変人のイメージを強く持っていて、いい曲を発表してもほとんど耳を傾けていませんでした。
映画はロンドン公演に向けてのリハーサルを記録したドキュメンタリーです。
オーディションで選ばれたダンサーたちは、踊りがうまいだけではダメ、華がなければ・・・と言われる。どんなに華があってもマイケルの前ではかすんでしまうんですが。マイケルにはそれほどのカリスマ性があります。
まず、50歳なのにシャープな体つき。声はカストラートを思わせる少年のようで、細かいビブラートの歌声は時に切なく聴衆に訴えかけてきます。
*カストラート=近代以前のヨーロッパに普及した去勢された男性歌手
何度も歌ったり踊ったりした曲だから、すっかりこなれているのに崩れてはいない。ダンスは新しいアレンジを加えられてはいるけど、お馴染の振り付けはそのまま残してあったりする。例えばBeat Itでの、手を腰の辺りで激しく振った後、身体をS字状態にくねらせて後退していく・・・といったもの。まあここら辺は興味がおありでしたらYouTubeでご覧になって下さい。
ステップや指先を注意深く見ました。曲に合わせて踊るというより、曲とダンスはひとつで内側からほとばしるモノを表現するのがもどかしいという感じ。
リハーサルの際のダメ出しも、感情的になったりせず「怒っているわけじゃないよ。曲のためだからね」とか「いいものにしょう。そのためのリハだから」とか、とても優しい物言いなんです。
そして何度も出てきたのが「THANK YOU」ではなく「GOD BLESS YOU」。訳は「ありがとう」となっていましたが、マイケルはGOD BLESS YOUを多用していました。
外国で、くしゃみをした時に言ったり言われたりしたことはあったけど「ありがとう」の代わりにもなるんだ~と思いましたよ。
マイケルの死で、ダンサーやバンドの面々は職を失ったわけですが、彼らはそんなことより心酔していたマイケルを失ったことのショックのほうが大きかったんではないだろうか。
自分自身、意外だったのは曲が流れ出すと、それが何の曲だかわかったことです。
マイケルはロンドン公演の発表の場で「ファンのみんなが聴きたい曲をやる」と言っていました。集大成のつもりだったことは明らかですね。
50歳では早すぎる死だとファンの方々は思うでしょう。
私は「いやこれで良かったんだ」と思います。
長く暮らしたショウビジネスの世界で、誰も適切な助言をしてくれなかったとしか思えない可哀相なマイケルは色々なものからスポイルされ変人になってしまった。
神というものがあるなら、そういう彼を哀れんで自分のそばに置こうと思ったのかもしれない。少し感傷的な感想になってしまったな。