ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

決めた!

2021-04-18 | アメリカ事情

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昔風の蓋付きサワードウ・スターターをいれるストーンウェアのクロック:ゴールドラッシュと書いてあるのは伊達にではなく、実際にゴールドラッシュ時代にできたカリフォルニア州特有のサワードウ・スターターだからである。アラスカでも同種のスターターは頻繁に使われた。

 

 

 

何を決めたのか言うと、サワードウ・スターターを始めることである! サワードウ・スターターとは、酸度の強い乳酸菌種によるパン種で、私が始めんとするのは、ヨーロッパ種ではなく、Lactobacills sanfranciscensisと言う学名のサンフランシスコ乳酸菌種で、それを「飼育」していくのである。厳密には「始める」ではなく、それでパンを作る、である。

サワードウ・スターターは、少なくとも世界中に500種類あり、合衆国には429種あると言われる(ノースキャロライナ州立大学・パブリックサイエンスラボが2018年に行った世界的規模での調査による)。その429種の中でおそらく最もアメリカ人が好むのは、サンフランシスコ発祥のサワードウ・スターターだろうか。アメリカ西部の、このサンフランシスコ種と、ユタ州のものが有名で、ユタ州のものはプレイリー(大草原)を越えて東部や中西部からの開拓者たちによって持ち込まれ、いまだに延々と引き継がれて使用されているパン種である。又アミッシュ・サワードウ種も有名である。

以前日本の流行りのベイカリーで、サンフランシスコスタイルのサワードウブレッドを食した日本の若い女性の方々が、酸っぱい!と口々に言っていた番組を見た。サンフランシスコのサワードウブレッドは、その酸味ゆえ、クラムチャウダーに合うし、イタリア料理のお供にも好まれる。このパンのサンドウィッチも捨てがたい。サワードウのロールはローストビーフやスープやシチューにも最適である。つまり我が家はサワードウのパンが大好きなのだ。別にパンの形式でなくとも、パンケーキや、チョコレートケーキにもこのパン種は使用できる。

Googleで検索すると欧米は勿論日本の方もたくさんブログやウェッブサイトでパン種の作り方や様々なパンのレシピを紹介している。そしてそうして公に紹介しているだけあって、皆さん実に美味しそうなパンを載せていらっしゃる。拝読致すいくつかのブログでは、見事にヨーロッパのアーティザンブレッドをスクラッチからお作りになっていらっしゃり、敬服の念に堪えない。そうした方々に劣るとも勝らない私はしっかり啓蒙されてしまった。

私が大学生だった頃、日本人でこちらの方と結婚されているY子さんから、御夫君の家庭に長い間継承され続けているパン種を少しいただいた。その時、彼女は100年は続いている「フレンドシップ」スターターだと説明していたが、おそらくあれはアミッシュのパン種であったか。独身の学生の身ゆえ、自作のパンを焼く時間もなく、スキルもなかったので、そのお分けいただいたパン種は私の代で滅びてしまった。嗚呼。

その後結婚して南カリフォルニアに住んでいた時も、教会の友人から、これまた100年以上続くというサワードウ・スターターを少量いただいた。パン種というのは、生きていて、「餌」の小麦粉を与えて「飼育」するものだ。ぬか味噌と同じだ。手入れを怠ると、パン種はやがて腐敗し、コンポストになってしまう。一週間は様子を見ながら「飼育」していたが、何せ2歳違いの子供が5人いる母親は、つい6番目の「子」を忘れがちになった。結局又一度もそのパン種を使用せずに終わってしまった。嗚呼。

そうした2度のチャンスを物にできなかった私は、大いに反省したが、その後今になるまで幾人もの友人・知人は、エアルーム(伝統・伝承)のパン種を大事にしていると話してくれる。分けていただいてもその次に会う機会に、どうでしたか?美味しいパン焼けた?などと質問されて、はいとは答えられないだろうと怖れた私は、持続できないことは遠慮すべきだと黙っていた。ところが孫娘の一人は、大のベイキング好きで、たかが4歳とは言え、「グランマ、一緒にパンを焼きたい!」と言い出すかもわからない。あと2ヶ月でその孫娘はフロリダからカリフォルニアに戻ってくるのだ。支度しなければならないではないか。

 

 

と言う訳で、突如真夜中にぱっちりと暗闇の中で、目が覚めて隣の夫をゆり起こして「今度こそ私はサワードウ・スターターやるわよ」と宣言したのだった。「またなの?」と夫は寝ぼけ眼で言ったが、「そうよ、人生は挑戦の連続よ」と私。「コスコのじゃダメなの?」「あれはもうパンになっちゃっているじゃない。私はズズと一緒にパンを作らなきゃいけない使命があると思うのよね。」と私が説明しているうちに夫は再度眠りに落ちていた。

厳密に言うと、スクラッチからスターターを起こすのではなくて、Lactobacills sanfranciscensisと言う学名のサンフランシスコ乳酸菌種を仕入れてそこから始めるのである。そう、端折るのだ。小麦粉と水のミックスで空気中の自然酵母を集めるのも手だが、とりあえずはズズとの近い将来焼くサワードウ・ブレッド。

ちなみにスクラッチから始めるスターターは、大まかに言えば、清潔なプラスチックやガラスの容器に小麦粉(ライ麦でもよろしいし、アメリカで普通に売られているAll Purpose(万能とでも?)白い小麦粉でも全粒粉でも)を水とともに入れて室温で置いておけば、数日後には泡が出てきて、酸っぱいサワードウの香りさえしてくる。そうすればそれを少量使ってパンを焼けるのだ。容易いと思ってすると難しく、難しいと思ってすると容易いのが、スターターである。オレンジやパインアップルのジュース、ブドウを使用することもあるが、使用しなくとも構わない。

こうして新しく作ったサワードウの酸度はマイルドで、種が古くなればなるほど酸度は増してくる。10年物よりも100年物の方がより良い味わいであるのは確かだが、最初はマイルドだった種はだんだん風味を整えてくると、味わいの度はグラフで言うところの台地が続く。だから100年物は素晴らしいが、若輩者種でも決して悪いことはない。

長い間プロのベイカーやシェフは、スターターの自然酵母とバクテリアはその誕生地にユニークなものと考えてきて、確かにサンフランシスコでの自然酵母は、ニューヨークの自然酵母とは異なる。そしてさらに例えばサンフランシスコの種は、ニューヨークに持っていくと、オリジナルの風味をなくすとも考えられていた。ところが、酵母のような微生物には、新入りの微生物に排他的になる可能性があることを示すデータがあるのだ。パン種の性格というか、クセというかは、それに使われる小麦粉に関係があり、土地に対しての執着はないと言うことである。だからサンフランシスコに住んでいなくとも、サンディエゴやサンルイスオビスポでもサンフランシスコのようなサワードウ・ブレッドはできる。勿論ベーカーズフィールドでだって。

スターターは、もしパンを毎週焼くのなら週単位で小麦粉を与えなければならない。普通スターターの半分を使用し、残りの半分に小麦粉を足しを次回の焼く機会に使う。もし毎週パン焼きを計画するのでなければ、毎週小麦粉を与えずとも良い。スターターは冷蔵庫で数ヶ月生存でき、次に使用する時あまり時間がかからずに働いてくれる。休暇で留守にするなどの場合は、冷凍庫にさえ短期間保存できる。そしてスターターを全て使い切ってパンを焼いてから、次回分が無くなったのに気づいても、慌てることはなく、その焼いたパンのひとかけらを温水と混ぜ、そのパンのかけらの二倍ほどの量の小麦粉を足し、キッチンのカウンターに置いておけば良い。そのミックスが二倍ほどに膨らんできたら、小麦粉を足すが、量はきっちり計られなくともよい。こうしてミックスを「飼育」して、思うような量になったら、使い始める。

よって、このサワードウ・スターターをスクラッチから始めるのは、この夏年長の孫息子と一緒にやるプロジェクトにしよう! ラディッシュ・クラブという子供向けのクッキング・クラブに参加している孫は、何かとキッチン作業に興味がある。よし、これでこの孫とのスターワーズごっこを私は引退させていただこう!

 

これでこの夏のプロジェクトは決まったよ、少年!

 

 

 

 


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4 コメント

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酵母、育て中。 (kaorin)
2021-04-18 02:29:01
私も、今、酵母を育てています。
昔から、自分でパンを焼くのが夢で、何年か前にトライしたときは挫折したのですが、今回は毎日パンを焼いています。

昔に買って持っていた「自家製酵母の美味しいパン」という本の中に、色んな果物や、ヨーグルトなどから、酵母を育てるやり方が描いてあったので、今はリンゴから育てています。次は小麦粉と塩を加えてより強い酵母を育て増やしていきます。

こういうのって、とっても楽しい!
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Unknown (aromadeyui)
2021-04-18 06:16:53
いつも素敵な投稿楽しんでます!!
私も冬はリンゴ、干し葡萄(オイル不使用)でもトライして継続の難しさを実感しています
いまは、市販のイーストで焼いています

ズズちゃんとのコネコネ写真見せてくださいね(^-^)/

ケフィア(ヨーグルト種)は増えすぎてコントロールできず、継続を断念した経験があります
いまは、手作り豆乳ヨーグルト(玄米種)を楽しんでいます

文章の中から"ままちゃん"さんの並々ならぬ熱意を感じて
私もパン種チャレンジしたい虫がムズムズし始めました
返信する
kaorin様 (ままちゃん)
2021-04-20 01:34:13
コメントをありがとうございます。

拝見いたしました!!リンゴの液種、とおっしゃるのですね。その御本、私も探してみましょう。どう言う風にパンが出来上がるか楽しいですね。

いつも野鳥のお写真を拝見しては感心してしまいます。まずなんて綺麗な野鳥が日本には多くいるのだろう、と驚き、その美しいお写真!うちの庭にくる野鳥は、ハウスフィンチの赤が多く、たまに黄色もやってきて、それから小さな名も調べてはいない鳥です。ハミングバードもぐんぐんと羽音をさせてやってきます。風が強い日は、たまにウッドペッカーもきたり、小柄なタカもきます。けれどもkaorin様のブログにあるような野鳥はあまり来ません。ソウシチョウなど見たことのない鳥ばかりです。ですからいつも楽しみにしております。
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aromadeyui様 (ままちゃん)
2021-04-20 01:40:25
コメントをありがとうございます。

aromadeyui様のお作りになる「捏ねない」パン、とても美味しそうですね!
過去何度か普通のパンを作ってきましたが、サワードウは、前々からチャレンジしたいものだと思っていました。それもパン種作りからしてみたいと。私にできるかどうか分かりませんが、6歳のチャーリーとこの夏試してみるつもりです。ズズとはちょっと端折った形でパンを焼いてみます!
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