ILLUSTRATION BY JEAN-LEON HUENS, NATIONAL GEOGRAPHIC STOCK
次の話を「都会の伝説」、「民話」またはMeme「ミーム」(ウィルスのようにまたたくまに模倣によって伝播され、やがて淘汰される情報)、あるいは真実だとお思いだろうか。
英国の偉大な科学者であるアイザック・ニュートン卿には同じく偉大な科学者の友人がいたが、その友人は信仰を持たず、ニュートン自身は敬虔なクリスチャンであった。 科学に対する彼らの相互の関心が彼らを引き寄せたが、二人はしばしば神に関するそれぞれの見解を議論した。
ある時ニュートンは、熟練した職人に太陽系のミニチュア模型を作らせ、それは歯車とベルトでつながれた惑星を表すボールが、クランクを回して始動させると、調和して動くようになっていた。
しばらくして、ニュートンを、その神を信じないという科学者の友人が訪問がした。ニュートンが書斎でその模型の置いてある大きなテーブルの傍で本を読んでいると、その友人は、部屋に入ってきて、相対的的な速度でそれぞれの軌道をなぞる惑星であるボールを目の前にして、あからさまな感嘆の声を上げた。
その模型から少し離れて立っていた彼は、叫んだ。「これはなんて素晴らしいのだろう!誰がこれを作ったのかね?」と叫んだ。読んでいた本から目をそらさずに、ニュートンは「誰も。」と答えた。
すぐにニュートンに目を向けて、信仰心のない友は言った、「見たところ、あなたは質問を理解していなかったようだね。 私は誰がこれを作ったのかと尋ねたんだよ?」
今度は目を上げて、ニュートンは厳かに彼に誰もそれを作ってはいず、たいへんに称賛されるこの模型の集大成はたまたま元からあった形に、似せているに過ぎない、と言った。
しかし、驚いた友人は少々熱を帯びて返答した。「私がバカだとお思いなのかい! もちろん誰か天才である人がそれを作ったに決まっているから、私はそれが誰か知りたいんだ。」
ニュートンは本を脇に置いて立ち上がり、友人の肩に手を置いた。
「これは、あなたが知っているどの法則よりもはるかに壮大なシステムの模倣にすぎません。そして、この単なるおもちゃには設計者や製作者がいないことを私はあなたに納得させることはできないでいるのに、あなたは、この設計の基となった偉大な原型が設計者も製作者もなしに、ただ存在していると信じ、それを公言しているんですよ! さて、あなたはそのような矛盾した結論にどのような推論で到達するのか教えてください。」
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森鴎外は、亀井勝一郎によると、「多くの師には会ったが一人の主にも会わなかった」部類の人であったが、1913年から毎年自宅でクリスマスを祝ったと言われている。時代が合えば、ニュートン卿の「お友達」になったかもしれない。そしてブレーズ・パスカルと友人だったら、森鴎外はどう反応したことだろうか。。。などと、タッティング(シャトルで編むレース)をしながら秋の夜長、妄想は尽きない。
見上げる夜空に瞬く数多の星を見て、あるいは小さな命が生まれる瞬間、その命の体の緻密な機能、毎年時計を持っているかのように冷たく固い土の中から芽を伸ばす草花に、人と人との間に芽生える柔和な感情に、無私で他人を助ける人のいることに、神を感じることがある私は、単純な者でよかったと単純に思う。