基礎からのアメコミ映画講座、第3回からは
8月公開の「ダークナイト・ライジング」に向けて、
アメコミヒーローの代表格・バットマンについて
紹介していきたいと思います。
初回である今回は、原作のアウトラインを解説します。
財閥当主であり、医者としても慕われるトーマスと
愛情溢れるマーサの間に生まれたブルース・ウェイン。
幸福な少年時代を送った彼の運命は、一夜にして変わります。
両親とともに映画「快傑ゾロ」を見に行った帰り、
強盗に襲われ、気高く優しかった両親は目の前で射殺。
生き残ったブルースは、莫大な財産と巨大な屋敷、
そして有能な執事のアルフレッドを受け継ぎます。
その夜から彼の心を支配したのは、犯罪への憎しみでした。
探偵術、科学知識、医学知識を始めとしたあらゆる知識と
人類最高レベルまで鍛え上げられた肉体に
暗殺術を含めたあらゆる格闘技など・・・
そのすべてを極めるために世界を放浪、
悪徳の町・ゴッサムシティに戻り、悪との戦いを開始するための
準備を始めましたが、まだ何かが足りませんでした。
・・・犯罪者を恐怖で怯えさせる、シンボルの存在が。
窓から飛び込んできた蝙蝠の姿に、ブルースは決意します。
「あぁ、父さん、僕は蝙蝠になろう」
1939年5月発売の「Detective Comic」27号。
これまでは探偵が主人公の漫画を掲載していたこの雑誌に
史上二人目の「スーパーヒーロー」が誕生しました。
先にデビューしていたスーパーマンとはことごとく逆・・・
宇宙人で超能力を持った「カンザスの田舎者」で
明るいイメージのスーパーマンに対し
超能力を持たない人間であり、ゴッサム(=ニューヨークの異名)の都会人、
そして何よりダークなイメージを纏ったヒーローとして
登場と同時に子供たちのハートを鷲掴みにしたのが
バットマンの誕生でした。
原作初期では銃も使い、犯罪者も意識的に殺すことがありましたが
いつしか銃を使わず、(事故以外では)不殺という設定が固まります。
暗いカラーを明るくするために、相棒(サイドキック)として
「脅威の少年」ロビンが赤・緑・黄色という配色で画面を明るくし、
バットモービル、バッタラン(バットラング)などの秘密兵器や
時に恐ろしく、時にユーモラスな悪党たちが登場、
40~50年代にかけてはバットウーマンやバットガール、
バットハウンド(ブルースの飼い犬のエース)、
いたずら者の妖精・バットマイトなどのキャラが増え続け
コミック規制問題(暴力的描写への規制)もあって
どこか牧歌的な雰囲気も持つことになりました。
しかし60年代、ライバルであるマーベルが
「ファンタスティック・フォー」や「スパイダーマン」で
新たなヒーロー像を打ち出してきたこともあり、
だんだんとかつてのシリアスでダークな雰囲気を取り戻していくことになります。
(しかし66年から放送されたTVドラマシリーズは、コメディ色の強いもので
日本における「アメコミ」のイメージはこのドラマ版バットマンの影響が強い可能性もあります)
60年代後半からは人気No.1ペンシラーであるニール・アダムスのリアルな絵が
凶悪な犯罪者たちとの戦いを盛り上げ、
70年代には知力・体力ともにバットマンと互角のライバルである
ラーズ・アル・グールが登場、
80年代には「ダークナイト・リターンズ」「キリング・ジョーク」などの
アメコミの歴史に残る名作が連発され、
89年のティム・バートンによる映画化を迎えることになるのです。
(DCコミックス世界の変革により、85年に一旦世界がリセットされ
バットマンもよりシリアスな路線で語りなおされることとなったりもしています)
90年代には一時引退・2代目バットマン登場の
「ナイトフォール」ストーリーラインから
ゴッサム大地震を頂点とした、大規模なストーリーが多くなります。
映画も92年にバートン監督による2作目「リターンズ」が公開され
ジョエル・シュマッカーに監督が引き継がれ
95年に「フォーエヴァー」97年に「&ロビン」が公開されますが
この4作で一時映画化がストップすることになります。
また、92年からはTVアニメもスタートし、
シンプルな線と陰影の効いたデザイン、
シリアスなストーリーが好評となります。
2000年代に入り、バットマンの物語は
彼の隠し子・ダミアンを軸とした大河ドラマ的様相を見せ
その流れは「バットマンの死」という衝撃の結末を迎えます。
(このあたりの展開は、現在邦訳本で発売中です)
映画も2005年にクリストファー・ノーランが監督として
その誕生からを語りなおした「バットマン・ビギンズ」から
新シリーズがスタート、2008年の「ダークナイト」が
高い評価を得ることとなるのです。
DCコミックスのスーパーマンと並ぶ2本柱であり
世界でももっとも有名なヒーローの一人でもあるバットマン。
かつてはスーパーマンのよき友人として名コンビでもあったわけですが
85年の設定リセットからは時に敵対する関係となったり、
スーパーマンを含む他のヒーローとチーム(ジャスティス・リーグ)を組みながらも
自分の敵に回ったときのために各ヒーローの弱点を調べたりと
(それが原因で、大事件が発生したことも・・・)
現在のバットマンには、どこかアウトロー的というか
「己が追っている犯罪者とも紙一重」的な部分が見られ
そこがこのキャラクターの持つ複雑な魅力となっているように思います。
次回は、バートン版シリーズを中心とした
映画版についての話を行なっていこうと思っています。
なんとか8月の公開までにノーラン版まで追いつけるといいな(苦笑)
8月公開の「ダークナイト・ライジング」に向けて、
アメコミヒーローの代表格・バットマンについて
紹介していきたいと思います。
初回である今回は、原作のアウトラインを解説します。
財閥当主であり、医者としても慕われるトーマスと
愛情溢れるマーサの間に生まれたブルース・ウェイン。
幸福な少年時代を送った彼の運命は、一夜にして変わります。
両親とともに映画「快傑ゾロ」を見に行った帰り、
強盗に襲われ、気高く優しかった両親は目の前で射殺。
生き残ったブルースは、莫大な財産と巨大な屋敷、
そして有能な執事のアルフレッドを受け継ぎます。
その夜から彼の心を支配したのは、犯罪への憎しみでした。
探偵術、科学知識、医学知識を始めとしたあらゆる知識と
人類最高レベルまで鍛え上げられた肉体に
暗殺術を含めたあらゆる格闘技など・・・
そのすべてを極めるために世界を放浪、
悪徳の町・ゴッサムシティに戻り、悪との戦いを開始するための
準備を始めましたが、まだ何かが足りませんでした。
・・・犯罪者を恐怖で怯えさせる、シンボルの存在が。
窓から飛び込んできた蝙蝠の姿に、ブルースは決意します。
「あぁ、父さん、僕は蝙蝠になろう」
1939年5月発売の「Detective Comic」27号。
これまでは探偵が主人公の漫画を掲載していたこの雑誌に
史上二人目の「スーパーヒーロー」が誕生しました。
先にデビューしていたスーパーマンとはことごとく逆・・・
宇宙人で超能力を持った「カンザスの田舎者」で
明るいイメージのスーパーマンに対し
超能力を持たない人間であり、ゴッサム(=ニューヨークの異名)の都会人、
そして何よりダークなイメージを纏ったヒーローとして
登場と同時に子供たちのハートを鷲掴みにしたのが
バットマンの誕生でした。
原作初期では銃も使い、犯罪者も意識的に殺すことがありましたが
いつしか銃を使わず、(事故以外では)不殺という設定が固まります。
暗いカラーを明るくするために、相棒(サイドキック)として
「脅威の少年」ロビンが赤・緑・黄色という配色で画面を明るくし、
バットモービル、バッタラン(バットラング)などの秘密兵器や
時に恐ろしく、時にユーモラスな悪党たちが登場、
40~50年代にかけてはバットウーマンやバットガール、
バットハウンド(ブルースの飼い犬のエース)、
いたずら者の妖精・バットマイトなどのキャラが増え続け
コミック規制問題(暴力的描写への規制)もあって
どこか牧歌的な雰囲気も持つことになりました。
しかし60年代、ライバルであるマーベルが
「ファンタスティック・フォー」や「スパイダーマン」で
新たなヒーロー像を打ち出してきたこともあり、
だんだんとかつてのシリアスでダークな雰囲気を取り戻していくことになります。
(しかし66年から放送されたTVドラマシリーズは、コメディ色の強いもので
日本における「アメコミ」のイメージはこのドラマ版バットマンの影響が強い可能性もあります)
60年代後半からは人気No.1ペンシラーであるニール・アダムスのリアルな絵が
凶悪な犯罪者たちとの戦いを盛り上げ、
70年代には知力・体力ともにバットマンと互角のライバルである
ラーズ・アル・グールが登場、
80年代には「ダークナイト・リターンズ」「キリング・ジョーク」などの
アメコミの歴史に残る名作が連発され、
89年のティム・バートンによる映画化を迎えることになるのです。
(DCコミックス世界の変革により、85年に一旦世界がリセットされ
バットマンもよりシリアスな路線で語りなおされることとなったりもしています)
90年代には一時引退・2代目バットマン登場の
「ナイトフォール」ストーリーラインから
ゴッサム大地震を頂点とした、大規模なストーリーが多くなります。
映画も92年にバートン監督による2作目「リターンズ」が公開され
ジョエル・シュマッカーに監督が引き継がれ
95年に「フォーエヴァー」97年に「&ロビン」が公開されますが
この4作で一時映画化がストップすることになります。
また、92年からはTVアニメもスタートし、
シンプルな線と陰影の効いたデザイン、
シリアスなストーリーが好評となります。
2000年代に入り、バットマンの物語は
彼の隠し子・ダミアンを軸とした大河ドラマ的様相を見せ
その流れは「バットマンの死」という衝撃の結末を迎えます。
(このあたりの展開は、現在邦訳本で発売中です)
映画も2005年にクリストファー・ノーランが監督として
その誕生からを語りなおした「バットマン・ビギンズ」から
新シリーズがスタート、2008年の「ダークナイト」が
高い評価を得ることとなるのです。
DCコミックスのスーパーマンと並ぶ2本柱であり
世界でももっとも有名なヒーローの一人でもあるバットマン。
かつてはスーパーマンのよき友人として名コンビでもあったわけですが
85年の設定リセットからは時に敵対する関係となったり、
スーパーマンを含む他のヒーローとチーム(ジャスティス・リーグ)を組みながらも
自分の敵に回ったときのために各ヒーローの弱点を調べたりと
(それが原因で、大事件が発生したことも・・・)
現在のバットマンには、どこかアウトロー的というか
「己が追っている犯罪者とも紙一重」的な部分が見られ
そこがこのキャラクターの持つ複雑な魅力となっているように思います。
次回は、バートン版シリーズを中心とした
映画版についての話を行なっていこうと思っています。
なんとか8月の公開までにノーラン版まで追いつけるといいな(苦笑)