漱石の命日が近いので、ウチにあるこんな本を手にとってみました。
古書店のダンナでありながら作家でもある出久根達郎氏の
『漱石を売る』(文春文庫)
という51本のエッセイが入った本です。
1作目の表題作は、まさに
「漱石」をいかにして売るか、四苦八苦する話。
なにぃーっ!?漱石を売るですとぉ~!?
はい、漱石直筆の書簡を売る話です(笑)。
さすが古書店主らしく“お宝の価値”についても触れていて
「文人の書簡は、本文と状袋(じょうぶくろ)をもって一対とみなす。
書状のみだと一段安い。まがいものを危惧するからである。」
「内容によって高下がある。文学を論じたものを第一等となす。
近況を報じるものを次とし、儀礼的短文を更に低く評する。」
などとあります。
サインが入っていても、「○○さんへ」と個人名が書かれていると
「○○さん」が余程有名人でない限り価値が下がる・・・ぐらいの話は
『なんでも鑑定団』を観ていれば承知の助ですよね!(^^)
さてさて件の書簡、これがただの手紙でない。
漱石が書いたものではあるけれど、
お悔み状だから店主も困ってしまうのです。
「天下周知の文豪の書簡といえども、弔詞となると、さばきにくい。
客が縁起をかつぐからである。」
さぁ、この文豪のお悔み状を、もうけが出るように売りさばくことが
できるのかどうか・・・。
よろしければご一読ください。
漱石が亡くなったのは
大正5年(1916年)12月9日、49歳。
生前、弟子たちや面会者と語らう場であった
漱石山房での「木曜会」は、
死後、命日にちなんで「九日会」と名前を変え、
なお漱石山房に弟子たちが集ったそうです。
漱石山房・・・漱石が亡くなるまでの最後の9年間を過ごした家