こもれび

悩み多き毎日。ストレス多き人生。でも、前向きに生きていきたい。だから、自然体で・・・

エデュケーション--大学は私の人生を変えた  by タラ・ウェストーバー

2021年12月13日 | Weblog
衝撃である。これがノンフィクションとは信じがたい。あまりの衝撃で時々本を閉じた。読み進めるのが苦しかったからだ。この話が19世紀の出来事ならば、そんなこともあったのかと読み終えたと思う。しかし、この著者は1980年生まれで、私の長女と同い年である。

著者はタラ・ウェストーバー。彼女自身の半生を描いたノンフィクションである。国家を全く信用していない極端なキリスト教徒の父(本書の中で精神的な問題があるのではと示唆されている)のもとで、7人兄弟の末っ子としてアイダホ州に生を受ける。学校にも病院にも行かせてもらえず、出生証明書さえもない。父や兄に精神的にも肉体的にも暴力を受け、それでも家族の一員でいることに多大な努力をしながら、壮絶な子供時代を送る。壮絶すぎて時々本を閉じざるを得なかった。

そんな彼女が自分で学ぶことを始め、大学入学検定試験に合格する。そこから、父がこれまで家族に押し付けていた世界観に疑問を抱くようになる。彼女にとって初めての学校である大学の授業で「ホロコースト」とは何かと質問をするほど、育ってきた環境はあまりにも普通とはかけ離れていた。大学在学中も家族との関係に悩みながら、それでもケンブリッジ大学に留学をし、ハーバード大学で学び続ける。父親から家族を取るか学びを取るかと迫られたときに、どうしても元の異常なほどに限られた世界には戻れないと判断すると、ほとんど勘当状態になる。家族を愛しているため、そのことに発狂するほど悩むタラ。せめて母親がタラを理解してあげていたら、彼女の苦悩はもっともっと少なくて済んだはずだ。

最初はある程度の常識を持ち合わせていた母親だが、とんでもない状況下で交通事故に遭った際、病院にもいかずやり過ごさざるをえず、その後、夫の狂気に巻き込まれていく。母親ならば、もっと子供を守るべきであろう、もっと分かってあげるべきであろうと思ったが、母親は自分自身を守るだけで精いっぱいだったのかもしれない。

読み終えて、タラの父親のような人たちが今も存在していることにも驚きを覚えた。日本にいるとトランプ政権がどうしてあれほど支持されるのか不思議だが、この本を読んで、その理由が垣間見えた気もする。

読むのがつらい本だが、一度は手にする価値がある。