ノンフィクションにほんの少しのフィクションを加えて書かれた「淳子のてっぺん」。読み応えのある本だった。文庫本で625ページの大作だが、あっという間に読み終えた。「エベレスト? 女なんかに登れるもんか!」という時代に、女性だけの隊で世界の最高峰、エベレストを目指した田部井淳子さんの物語だ。
今から20年ほど前にどこかの里山を歩いていた時、すれ違った人から「あら! 田部井さんですか?」と声をかけられたことがある。その時は、あら、いやだ、私あんなにおばさんじゃないし。。。と思った。地球上で一番高い所、8848メートルの山頂を女性で初めて踏破した田部井さんとは知っていたが、テレビなどで見かける田部井さんは、どこにでもいるような気のいいおばさんという感じだったからだ。エベレストと七大陸最高峰への登頂に成功しているのに驕りの欠片も見当たらない。
この本を読むと田部井さんの性格の良さと高度順化の凄さがどれほどのものかよく分かる。いたるところで泣けるし、登山の描写ではハラハラドキドキ。77才で亡くなったのだから、山から生還していることは明らかなので遭難の心配はしなかったが、あの時代の海外遠征となると、山に登ること以上に、それこそ山ほどの問題が持ち上がる。それがハラハラ、ドキドキなのである。
そして、「淳子のてっぺん」はエベレストの山頂ではない。ではどこか。思い出すだけで涙が出てくる。これからしばらくは、田部井さん自身が書かれた著作を読んでみようと思う。
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