rosemary days

アロマテラピー、ハーブを中心にフィトテラピーあれこれ。自然療法全域とフィットネスについて。

『今朝の春』~浮腫みを取るほうき草

2018-10-25 00:18:20 | 物語の中の植物と香り
コキアが今旬ですね。ひたち海浜公園までは遠くて行かれませんが、一度行ってみたいと思っています。そんなわけで、コキアが出てくる小説を紹介します。

TVでもドラマ化された時代小説『澪つくし料理帖』シリーズの4巻『今朝の春』の中のははきぎ飯という短編です。料理人の澪には密かに思いを寄せてる小松原様というお侍さんがいます。ある日小松原が店に来た時、紙に折りたたんだ何かを忘れて行きます。中身は乾燥した種のようなもので、医者の源斉に聞いてみると、地膚子(じふし)というほうき草を乾燥させた薬種で、腎臓の悪い人が浮腫みを取るのに使うと教わります。また、ほうき草の実を食べることができるとも言われました。

澪は小松原が腎臓を患っているのかと懸念し、薬ではなく料理として食べさせたいと思い、帚屋からほうき草の実を分けてもらいます。店の前で実を洗っていると高貴な武家の夫人が、
「それは、ははきぎではないか?」
と尋ねてきます。ははきぎはほうき草のことだと教わり、料理の仕方も教えてもらいます。

「乾燥させ、茹でてから幾度も水に晒して固い皮を外すのです。皮が外れるまで気が遠くなるほど冷たい水で揉み洗いせねばなりません。そして重石をかけての水抜き。どれも怖ろしく厄介なことで、思いつきのみで試すのなら止めたほうが良い」
そうアドバイスされましたが、澪はやってみると言うので、その夫人は5日後に食べに来ると約束します。

それから澪は何度も何度も冷たい水の中に手を入れて作業を繰り返しました。約束の日、澪の料理を黙って完食した夫人は、涙を流し、あかぎれ、ひび割れている澪の手を労わるようにやさしく包み込みました。そして、自分の父が南部藩に奉公していたころ、飢饉で食べ物がない時にもははきぎに助けられ、江戸へ出てからも非常に感謝の思いを抱いてること、自分は小松原の母親であると語ります。

なかなか結婚しない息子に思う人がいるようなので、探りにきたのでした。身分が違いすぎるので結婚はさせられないけれど、息子の人を見る目は確かだと言い残して行きました。


ほうき草の現在の正式名称は帚木(ほうきぎ)で、昔は乾燥させた茎で帚を作っていたようです。一般にはコキアという呼び方のほうが広まっていますね。秋田の郷土料理のとんぶりはコキアの実を熱加工したもの。とんぶりの名前の由来は唐からきたぶりこ(ハタハタの卵)に似たもの、とうぶりこが変化したものらしい。

地膚子は漢方の生薬で、主に利尿と強壮に使われる。また、最近の研究では血糖値の上昇を抑える働きをするらしいです。



今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
クリエーター情報なし
角川春樹事務所

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