ハムの人

　まだ結婚したての頃、同じ職場に同じ年の女の人がいたんです。そこの職場はちょうど私の母親くらいの世代の女の人が多かったので、私たち二人は何かと目立ちました。私は若い頃は食べても食べても太らない体質で、一方その人は誰が見ても太っていると感じる位に太っていました。なので気の毒にその人はよくオバサン達に
「ぴぐもんさんみたいに細くならなきゃ」
「ダイエットしなさいよ」
と余計なおせっかいを受けていました。

　本人も痩せられるのなら痩せたかったのでしょうが、小さい頃からの体質らしくほぼ諦めていたみたいです。それはそれでいいと思うのですが、時々なんでこの人がこのファッションをするんだろう？と首を傾げたくなることがありました。

　ある日、長かった髪の毛をバッサリ切ってきました。ちょうど中森明菜がDesireを歌っていた頃で、ボブにしたかったのだと思います。でも、その人がやるとボブというよりおかっぱ。しかもまんまるい顔が強調されてまるで金太郎みたい！

　よく、そういう時は正直に言ってあげるほうが親切だよ・・・という人がいますが、さすがに本人前にして
「金太郎みたいだからやめたほうがいいよ」
とは言えず
「え～、なんで切っちゃったの～、もったいな～い、前のほうがよかった」
とだけ言いました。

　それからよく
「私は太っているけど、ウエストは細いんだ」
と言って、ウエストをきゅっと絞った服を着ていたんです。本人曰く、ウエストだけは６３か６４くらいなんだそうです。ただ・・・
　ウエストをぐいぐい締め、おまけに薄着をする夏にはブラジャーのベルト位置までくっきり浮かび上がりまるでハムみたい！

　さすがに「ハムみたいだからやめたほうがいいよ」とはいえず、その件に関しては何も触れずにいました。ただ、着る物をもう少し工夫すればいいのにな・・・と余計なことを感じていました。

　さて、私は先月からとある企業に事務員として採用されました。これまでも主に事務系の仕事を中心にやってきたのですが、私が採用される会社ってほとんど制服がなかったんですね。ところが今度お世話になる会社は白いブラウスにグレーのベストとスカートといった、古典的な事務服が貸与されるのです。

　人事の担当の人に服のサイズは何号ですかと聞かれ
「９号です」
となんの迷いもなく申し出、９号の制服を受け取ったのですが・・・

　ス、ス、スカートが入らない！！

　「ヤバイ！太っちゃった！」
　と思わず大声を出しちゃったにで、周りにいる若い女の子達に笑われてしまった

　その日家に制服を持ち帰ってフックの位置を少しずらしました。それでもやっぱりキツキツ。私もハムの状態です。これは頑張って痩せなければ・・・






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