高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

高齢期の備え20:高齢期の支出の推算結果からみえること

2019年09月21日 | 高齢期の備え
・前回までの高齢期の支出の推算からは次のようなことを言えると思います。

・生活費など(生活費、住居費、通院費、保険料)は1年間の支出はおおよそ一定額であるものの、長く生きるほど総額が増える。そこで生活費などは可能な限り終身年金で賄うようにしておくことで資金不足のリスクが減る。たとえば、単身男性の場合、年金額が年額120万円(月額10万円)であれば、つつましい生活をする限り生活費などのための貯蓄は不要となる。逆に年金がゼロとすると、70歳10人が3人になるまで自分も生きるとすると生活費などのためだけで70歳時点で2,600万円の貯蓄が必要になる。

・介護費も非常に幅がある。特に女性は介護が必要になる可能性が高く、さらに寿命も長いため介護のための費用が多くなる。なお、前回ブログの推算結果は2030年頃には自己負担3割となるとの前提となっていることから、現在と比べると高額となっている。しかし、当ブログ「高齢期の備え13」で述べたように自己負担割合が増える可能性は高いので、貯蓄または私的な保険で備えておく必要がある。

・交際費や趣味のための費用は、自分が将来すると決めれば必ず必要な資金であり、保険にはなじまない。現役時代に余裕があれば必要な予算をたてて貯蓄しておく。余裕がなければ実際に高齢になったとき、交際や趣味を控えれば少なくとも生活はできる。

・上記の考え方に基づいた今から始めておきたい備えは次回からのブログで。

結局、高齢期の支出はいくらか

2019年09月20日 | 高齢期の備え
(高齢期の支出のまとめ:70歳以降、10万円単位を四捨五入)

・70歳10人が1人になる年齢まで生き、同年齢のうち1人でもある介護度の介護サービスを受ける年齢には自分も同様の介護サービスを受けるなどとした場合
【男性:70歳から寿命97歳まで総額:5,100万円】
(生活費など)3,400万円(毎年120万円)
(介護・医療費)1,200万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)500万円
【女性:70歳から寿命101歳まで総額:5,800万円】
(生活費など)3,700万円(毎年117万円)
(介護・医療費)1,600万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)500万円
【夫婦:70歳からの総額:9,500万円】
(生活費など)5,900万円(夫婦時代毎年193万円)
(介護・医療費)2,800万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)800万円

・70歳10人が3人になる年齢まで生き、同年齢のうち3人がある介護度の介護サービスを受ける年齢には自分も同様の介護サービスを受けるなどとした場合
【男性:70歳から寿命91歳まで総額:4,000万円】
(生活費など)2,600万円(毎年120万円)
(介護・医療費)300万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)1,100万円
【女性:70歳から寿命96歳まで総額:4,700万円】
(生活費など)3,200万円(毎年117万円)
(介護・医療費)700万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)800万円
【夫婦:70歳からの総額:7,200万円】
(生活費など)4,800万円(夫婦時代毎年193万円)
(介護・医療費)1,000万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)1,400万円

・70歳10人が5人になる年齢まで生き、同年齢のうち5人がある介護度の介護サービスを受ける年齢には自分も同様の介護サービスを受けるなどとした場合
【男性:70歳から寿命87歳まで総額:3,300万円】
(生活費など)2,200万円(毎年120万円)
(介護・医療費)0万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)1,100万円
【女性:70歳から寿命92歳まで総額:4,000万円】
(生活費など)2,700万円(毎年117万円)
(介護・医療費)100万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)1,200万円
【夫婦:70歳からの総額:6,100万円】
(生活費など)4,100万円(夫婦時代毎年193万円)
(介護・医療費)100万円
(交際費・趣味など:介護を受け始める年齢まで)1,900万円

・自分が受け入れられる、または納得できる可能性を10人中何人と見込むかによって備えるべき高齢期の資金が変わります。一度ご自分の可能性をどのように見込むのかを考えてみてはいかがでしょうか。

高齢期の備え18:交際費・趣味の費用・孫への小遣いなど節約が可能で「必ずしも必要ではない」費用

2019年09月19日 | 高齢期の備え
・高齢期の支出を3つに区分(9月3日当ブログ:以下に再掲)して、最初の2項目について見込みを立ててきました。
(1)生活費、住居費、通院費、保険料など:年間の支出額はほぼ一定で寿命が長くなれば総額が増える。収入(年金)に合わせて節約できるが「最低限は絶対に必要」な費用。
(2)介護費と医療(入院)費:個々人の身体の状態によって違う。多くの場合年齢を重ねるにつれて増え、節約が難しく「絶対に必要」な費用。
(3)交際費・趣味の費用・孫への小遣いなど:節約が可能で「必ずしも必要ではない」費用。

・最後の3番目の費用は、個々人の趣味や生活環境などによって様々です。たとえば、旅行が趣味であれば結構な出費となりますし、親戚が多ければ冠婚葬祭のための出費が多くなります。

・総務省の家計調査年報によると、平成29年の高齢者世帯(65歳以上、無職)の平均的な一か月当たりの支出は、夫婦世帯26万3,718円、単独世帯15万4,252円となっています。

・この内訳で「教養娯楽」と「その他の消費支出」をみると、夫婦世帯でそれぞれ月額2万5,007円と5万4,028円、単身世帯でそれぞれ月額1万6,760円と3万1,446円となっています。

・これらの金額を参考にして、3番目の費用については、夫婦世帯で年額100万円、単身世帯で年額60万円を目安にすればよいと思います。

・実際に高齢になったとき、年金などの収入が少ない場合や貯蓄が少ない場合はこの3番目の出費を抑えざるをえません。

高齢期の備え17:介護費と入院費(確率的に必要な費用)(8)

2019年09月18日 | 高齢期の備え
(入院費)
・入院1回当たりの費用は様々ですが、現状では高額医療制度があります。

・高額医療制度は、医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額が支給されるものです。

・この上限額は、年齢や所得によって区分されていて、70歳以上で収入が一般(年収156~約370万円)の場合は5万7,600円となっています(2018年8月時点)。たとえば、1ヶ月間の入院費が100万円で自己負担割合が1割とすると窓口で10万円払い、後で4万2,400円が戻ってくるという仕組みです。

・2030年以降もこの制度が続いているものの、上限値は医療費の自己負担3割の仮定と同じように現在の3倍になっていると仮定します。この仮定に基づいて1回の入院費は17万円とします。

・この単価と前回のブログ(高齢期の備え16)で推算した入院回数を掛けて、当ブロブ(高齢期の備え10)の70歳以降の入院費の総計を推算しました(1万円の単位を四捨五入)。以下に再掲します。
男性(70~寿命91歳): 140万円(入院8回)
女性(70~寿命96歳): 100万円(入院6回)

高齢期の備え16:介護費と入院費(確率的に必要な費用)(7)

2019年09月17日 | 高齢期の備え
(入院の可能性)
・高齢になったとき、入院するかどうかは、介護と合わせて大きな関心事です。

・入院は歳を重ねるにつれて可能性が大きくなります。また入院の可能性は男性のほうが女性よりも大きくなっています。

・同じ年齢層10人のうち1年間に1回入院される方の人数を推算すると次のようになります。
【75~79歳】
男性:3.4人、女性:2.1人
【85~89歳】
男性:5.0人、女性:3.7人

・推算の方法:推計入院患者数(出典:患者調査 平成29年)×(365日/平均在院日数(出典:同))/推計人口

・70歳以降について「同じ年齢の人10人のうち【ある人数】以上が入院する年齢以降は自分も入院する」と仮定して介護の可能性を調べてみます。この【ある人数】を1人とすれば非常に悲観的に、5人とすれば中間的に、10人とすれば非常に楽観的に将来の見通しを立てることになります。
【同じ年齢の人10人のうち1人以上が入院する年齢以降は自分も入院する】
男性:70歳以降、女性:70歳以降
【同じ年齢の人10人のうち3人以上が入院する年齢以降は自分も入院する】
男性:70歳以降、女性:80歳以降
【同じ年齢の人10人のうち5人以上が入院する年齢以降は自分も入院する】
男性:85歳以降、女性:入院しない

・入院回数は次のように推算しました。
男性:(70~74歳)5年に1回、(75歳以降)5年毎に2回
女性:(70~84歳)5年毎に1回、(85歳以降)5年毎に2回

・推算の方法:推計入院患者数(出典:患者調査 平成29年)×(365日/平均在院日数(出典:同))/推計人口×5年、(小数点1位を四捨五入)