貴の一文~22BYの酒造りを終えて
本日半年振りの再会です。
dancyuでは大きく取り上げられ「貴の時代」の到来を感じさせます。
まずは今年の「貴」の酒の出来映えを聞いてみましょう。
『22BY造り全般について』
ようやく、3月24日の甑倒し、4月16日の皆造と終え今期の酒造りを終えることが出来ました。
酒造りの前、8月下旬の高温障害(穂が出る時期に25℃以上が続くと
米の芯の部分が硬くなり溶けなくなる現象)の影響が心配されました。
実際造って見ると、確かに米が例年より硬く割れが多かったのですが、
近年最も影響があった19酒造年度ほどの硬さではなかったのと、
19酒造年度の経験から吸水歩合を3~4%多めに調整して仕込みました。
仕込み時の気温は例年よりも寒く、逆にもろみを温めるような日が結構
ありました。
弊社においては生酒は透明感のある例年にも遜色ないレベルに仕上がったと自負しております。
火入れ酒に関しては、原料処理である程度はカバーできましたが、
やや苦味が残ったお酒も正直あり、もう少し熟成があってもよいのかな
という仕上がりです。
『新酒生の位置付け』
例年書いている事と重複してしまうかもしれませんが、
火入れのお酒は熱処理の時点である程度酸化からお酒を守ることが出来ます。
ただ、生酒はそのあたりの技術の精度を上げる事だと思います。
とにかく瓶詰めのスタッフを総動員し、お酒を搾った日にはきちんと瓶詰めの段取りをつけるよう徹底し、
とにかく酸化しないよう心がけました。
開封時に「ポンッ」という大きな音がするものがありますが、あのガスが鮮度を守ってくれています。
『レギュラー商品について』
近年、やや回転が早くなり熟成期間がゆっくり取れないので申し訳なく思っていますが、
きちんとお米の芯の部分の吸水を見極め、
貴らしい「お風呂に入っているような温かみのあるお酒」だといって頂けるよう、
一本一本を丁寧に造る事に全神経を注ぎました。
『辛口酒について』
今年は米が例年よりやや硬かったことにより、例年より少し「淡麗」な感じです。
ちょっと「濃醇」という雰囲気が弱い今期の辛口ですが、
口に含むとやや青いバナナ系の香りが口に広がり、ほんのり甘く切れていく食中に最高です。
『山廃仕込み酒について』
今年は、改めて難しいな~という感じです。
山廃に関しては毎年が勉強ですね。
今年のお米は米としてはやや硬めですが、案外後から溶けていくお米でした。
そうなってくると、追水というあとから水を加えて濃度を伸ばし
酵母のストレスを取ってやらないければなりません。
タイミングを逸すると酸が強く出すぎます。
この追い水のタイミングを頻繁にチェックしどうにか良い膨らみのお酒になりました。
『夏の酒について』
山田錦の後味の良さと旨味のバランス感に頼りながらも夏にモッタリした味にならない様、
先程の生酒の時に書いたようにお酒にいかにストレスをかけない事を
注意し造りました。
にごり感はそれほどでも無いですが、心地よいプチプチ感を感じてもらえるよう酒質を設計している(つもり)です。
6月をお楽しみに。
『今年のチャレンジ』
毎年向かうお米、気候、いろいろな事を考えながら一年一年がチャレンジの連続ですが、
今年はアルコール度数というものを視野にいれた酒造りも行いました。
まだ瓶詰めもやってないのできちんとした事を言える状況では
ありませんが、
常に新しいお客様を想像し、0杯を1杯にお客様を育てる努力をしたいと思います。
『POWER TO the 東北! 北関東!』について
先日、福島の会津若松に行ってきました。
会津鶴ヶ城で福島の蔵元様と一緒に酒を酌み交わし、
絶対、福島のお酒は頑張るぞ!!というみんなの意気込みを感じて帰りました。
私たちは、東北の蔵元さんにたくさんの事を教えて頂き、
いつも暖かく私達を迎え入れてくれます。
本当になんらかの形で被災された蔵元様にお返ししたいという思いが日に強くなっています。
この度は、改めて東北の被災された蔵元様に「ありがとうございます」
「お帰りなさい」という気持ちでご挨拶したいと思います。
※6/21~22と渋谷シダックスホールにて行うチャリティ試飲会です。
詳細は近々お知らせ致します。
打ち合わせの後は 「石鎚」越智さん 「村祐」村山さんと一緒に 西新宿 「達 菊うら」さんへ
菊うら大将のお気遣いで食べ切れんばかりのおいしい料理
仕込みの疲れも取れ、充分リラックスと思いきや今年もまた・・・・
酒質は向上しても酒酔いの睡魔には勝てませんでした。
東の蔵を応援する日はこうはならないようにご用心下さい。
永山さんもガンバレ!!!!!