S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲15-2

2006-09-21 14:15:03 | 真冬の狂想曲
15-2
 さっき多摩川を渡ったので、ここは川崎だろう。後部座席の佐々木は腹に、平井は後ろ頭に銃を突きつけられて身体を硬くしていた。佐々木はまた俺に殴られて鼻血を流している。これから起こるであろう事に平井は怯え、佐々木はこれで解放されるであろうという思いに安堵感を感じているだろう。俺にはこれからどうなるかは解らない。
「松、中村ってのはどうするん?誰か残ってはっちょかな悪かったんやねーん?」
「いい、いい。平井がこっちにおれば、中村はまた生け捕れるやろうけ。のう、平井?」
 松は助手席から振り返って、平井を睨みつけた。その目には殺意にも似た淀んだ光が宿っている。
「わ・私は何も知りません。な・何も知りません…。」
「好きなごと言っちょけ、これからいろいろ喋りたくなるやろうけ。」
 そう言いながら、運転しているキムの肩をポンポンと叩いた。
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真冬の狂想曲15-1

2006-09-18 18:02:49 | 真冬の狂想曲
15-1
 2時間程待っただろうか、ようやく佐々木達が料亭から出てきた。佐々木の横にいる、背が低く、少し太ったさえない男が平井らしい。他に3人の男がいた。みんなサラリーマン風だ。中村の姿は見えない。佐々木達を目で追いながら、しばらく待ってみたが中村は出てくる気配がない。
 俺と、どっちがどっちだか憶えていないがイとチョンで車を降り、佐々木達の後をつける事にした。ハイエース停めたままだ。あまり待たずに佐々木と平井の二人だけになった。俺は携帯電話で松に電話をかけた。
「今、二人になったけ、車すぐまわしてくれ。」
 2分も経たずにハイエースは近づいてきた。俺と韓国人の二人は足を速めて佐々木達に近づいた。それと同時にハイエースが佐々木達の横に停まり、後部座席のドアが勢いよく開いた。俺とイとチョンは佐々木と平井の肩を抱くように掴み、ハイエースの後部座席に押し込んだ。そして何事もなかったかのようにその場を走り去った。
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真冬の狂想曲14-2

2006-09-16 17:37:54 | 真冬の狂想曲
14-2
 ホテルの佐々木の部屋に松と松木社長、佐々木と洋子は入って何やら話しをしている。残りの俺達5人はノブの部屋で待機していた。
 しばらくして松と佐々木が俺達のいるノブの部屋にやってきた。どうやら、松木社長は洋子のお守りらしい。もうあまり時間が無いので、とりあえず俺達はホテルを出る事にした。

 6時をまわった東京は夜が落ち始めていた。俺達を乗せたハイエースは赤坂方面に向かっているみたいだ。フルスモークの窓からは東京の景色も見えないので、どこを走っているかは解らないが、これから俺達がしなくちゃならない事を考えると、間違いなく赤坂に向かっているはずだ。北九州とは比べ物にならない程の渋滞を抜け、目的地に着いたのは8時少し前だった。
「佐々木、上手い事やってこいよ。最悪、中村でも平井でもどっちでもいいけ、一人は確実に生け捕れるようにやってこい。さっきも言ったとおり、お前も一緒に生け捕るけ、何も知らないふりして怯えとけよ。」
 松は佐々木に念を押して送り出した。佐々木が車のドアを閉めようとしたとき、俺は佐々木を呼び止めた。
「おい、佐々木。その腫れた鼻も上手く誤魔化せよ。」
 俺は笑いながら睨みつけた。佐々木の身体中に力が入ったのが解る。完全に俺に怯えているみたいだ。佐々木はドアを優しく閉めて、50m程先にある料亭に歩いて行った。
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真冬の狂想曲14-1

2006-09-15 15:54:29 | 真冬の狂想曲
14-1
 新宿駅東口で白石洋子を待っている間に、キムと初めて見る顔の男が二人俺達に近づいてきた。松が呼んでいたらしい。キムは二人を俺達に紹介した。イとチョンだと二人は名乗った。俺やキムよりも体格が良く、松よりは貧弱だ。どうやらこの3人も俺達と行動を共にするのだろう。
 5時を少しまわった頃、白石洋子が現れた。服装のセンスは悪いが、顔とスタイルはまあまあな女だ。佐々木の横に白石洋子が並んだ瞬間、俺とノブ、韓国人3人とで二人を囲んだ。女は一瞬たじろいだが、詐欺師の女らしく事情はすぐ理解出来たようだった。俺達はキム達が乗ってきた、フルスモークの白いトヨタハイエースに二人を押し込み、俺達もその車に乗り込んだ。
「洋子ちゃん、久しぶり。俺の事覚えてる?」
「…はい。松崎さん、この人がどうかしたんですか?」
「いやー、佐々木は俺達に協力してくれとるから、何ちゃないよ。心配せんでいい。」
白石洋子は佐々木の顔を見て、心配そうな顔をしている。さっき俺に殴られた鼻がまだ少し赤くなっている。
 松はこれまでの事とこれからの事を、簡単に、核心はぼかしながら白石洋子に説明した。説明が終わる頃、ハイエースは「飛鳥ホテル」に着いた。
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真冬の狂想曲13-3

2006-09-13 18:14:45 | 真冬の狂想曲
13-3
 佐々木の部屋のドアがノックされた。俺はドアに近づき、覗き窓から相手を確認する。松だった。俺はドアを開け、松を部屋に招きいれた。松は小便を垂れ流し、鼻血で汚れた佐々木の顔を見て、何があったのかを俺に聞いた。
「やっちゃん、これどうしたん?」
「どうしたもこうしたもないよ、これ見てん。」
 俺は佐々木の携帯電話を取り上げ、発信履歴を表示し、松に渡した。
「これ、洋子ちゃんか?佐々木。」
 松は佐々木の女を知っているようだ。
「はい、そうです。ちょっと彼女に電話しただけです。」
 俺はまた佐々木を蹴り飛ばした。
「ちょっとやねーよ!日に何回かければ気が済むんか!ゆたーっとしとかんか、おう!」
 松は慌てて俺を止めた。
「もう、そんぐらいでいいやろ!」
「松、お前甘いんたい!こうゆうヤツラは身体で教えとかんと、また調子に乗るんやけ!のう!佐々木!」
 佐々木は必死に首を横に振っている。その姿がむかついて、俺はもう一発蹴りを入れた。たいして強く蹴ってないのに、佐々木は派手に転がった。その瞬間、俺の思考は吹っ飛んだ―殺してやる―。腹からマカロフを取り出し、佐々木に向かって構えた。慌てて松が俺に体当たりして、俺を止めた。一回りも身体のでかい松に体当たりされて、俺はベッドの上に吹き飛んだ。その衝撃で、現実に引き戻された。松が止めなければ確実に佐々木はあの世に行ってた事だろう。
「落ち着けっちゃ!やっちゃん!昔から頭に血が昇るとやりっぱなしになるんやけ…。佐々木、お前、洋子ちゃんと何話しよったんか?正直に言わんと、次は止めんぞ。」
「松崎さん達と一緒にいる事は喋っていません。ただ、もう少ししたら何もかも片付くから、それから迎えに行くから、我慢していてくれって事を話してました。」
「お前、それにしては何回も電話しとるやないか!」
 そう言いながら、俺は佐々木の髪の毛を掴んで引っ張った。
「本当です。後は他愛のない話しかしてないです!」
俺は投げ捨てるように佐々木の髪の毛から手を離した。
松は暫く黙ったままだった。そしておもむろに口を開いた。
「佐々木、洋子ちゃんを呼び出せ。お前が忘年会に行っとる間、暫く預かっちょくけ。こっちにきたら事情を話しても構わんけよ。」
「分かりました。」
 佐々木は洋子に電話をかけた。話が終わるのを待って、俺達は佐々木の部屋を出た。
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