S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲13-2

2006-09-12 11:14:27 | 真冬の狂想曲
13-2
 佐々木の息が整うのを待って、電話をかけて確認するよう促した。佐々木は携帯電話を取り出し電話をかけようとした。俺はその携帯電話を取り上げ、着信履歴と発信履歴を確認してみた。着信履歴にはおかしな所がないが、発信履歴には気に入らない所があった。
「こら!佐々木!えらい白石ってのに頻繁に電話しとるみたいやけど、こりゃどうゆう事なんか?あーん?」
「自分の女です。」
懇願するような目で俺を見てるが、俺は信用できない。俺は腹に差している物の威力を試してみた。
「もう一回言ってみい?」
 佐々木の口にマカロフの銃口を突っ込んで凄んでみせた。もちろん弾くつもりはないのだが。
「本当です。本当に自分の女に電話していただけです。今回の事は何も喋っていません。」
 佐々木は涙と鼻水と小便を垂れ流しながら、必死に訴えた。それでも信用する事は出来ない。俺は部屋の電話から、白石の電話番号にかけてみた。
「はい、白石です。」
若そうな女が電話に出た。
「すいません、間違えました。」
俺は明るくそう言い、受話器を置いた。
「佐々木ー、疑われるような事はせんほうがいいぞ。俺はお前等のおかげで東京くんだりまで連れてこられて、あんま気分が良くないんやけよ。」
 佐々木は口から出された銃口を見つめたまま、首が折れそうなほど首を縦に振った。

 佐々木は平井に電話をかけて、忘年会の会場と時間を確認している。俺は例のごとく携帯電話に耳を押し付けて話を聞いていた。場所は赤坂の料亭、時間は8時からという事だった。俺は身振りで電話を切るよう指示した。
 こんな状況でも普段どおりに話が出来るとは、やっぱり詐欺師ってのはたいしたもんだ。なんて感心しながら、マカロフを腹にしまった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲13-1

2006-09-08 14:50:39 | 真冬の狂想曲
13-1
 昼過ぎに目が覚めた。誰からも電話がかからなかったのも久しぶりだ。久しぶりにぐっすりと寝たんで、頭が少し重たい。俺は携帯電話を探し松に電話をかけた。
「おはよう、今日の予定は?」
「…やっちゃん、おはよう…。…今何時?」
 コイツもぐっすり眠ってたようだ。俺の電話で目を覚ましたみたいだ。
「もう2時過ぎちょんよ。いいかげん起きなやろ!」
「そう言うなっちゃ。今日は夜にならんと動いてもしょうがないけ、それまでゆっくりしようや。」
「分かった。ほんでどこで忘年会やるか聞いちょん?」
「いや、まだ聞いてない…。」
「ほんなら俺が佐々木に聞いてくるけ、アイツ何号室やったっけ?」
「頼むわ。708号室やったはずやわ。」
 たぶん、松はまた眠りに落ちただろう。

 708号室のドアを叩くと、すぐにドアが開いた。佐々木はもう身支度を終えていた。俺は佐々木を部屋に押し込みながら部屋へと入った。
「今日、どこで何時から忘年会があるか連絡あったか?」
「いえ、まだありません。」
「お前、ビシッと着替えてどこ行くつもりやったんか?おう!」
「どこにも行くつもりはないですけど、いつ出てもいいように準備しているだけです。」
 俺は一発佐々木の顔面を殴った。ただ言い方が気分良くなかっただけだ。佐々木は派手に転び鼻血を垂れ流している。
「悪いのー、俺は松達みたいに心が広くないけ、口の利き方には十分気を付けろよ。」
 佐々木は鼻を押さえながら何度も首を縦に振った。その姿を見て、また頭に血が昇った。とりあえず、佐々木の脇腹を思い切り蹴ってみた。佐々木はのたうちまわり悶絶した。少しは気分が楽になった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲12-2

2006-09-06 11:24:44 | 真冬の狂想曲
12-2
 5分もせずにノブは戻ってきた。ノブはマカロフを手に取り、動作確認をして鏡の前でマカロフを構えた。俺とまったく同じ事をした。
「それで、俺達明日はどうしたらいいんですかね?」
「たぶん、アイツ等の忘年会が終わるまで張り込んでて、出てきたところを攫うんじゃないの?たぶんそうだと思うぜ。明日になったら、松がどうして欲しいか言ってくるやろ。」
「このチャカは何に使うんでしょうかね?まさか打ち殺せって事ですかね?」
 ノブは焦っているような言い方をしたが、目は全然焦ってはいなかった。ある程度の腹は決めているみたいだ。
「まさかやろ、たぶん脅しに使うか護身用やろう。」
「護身用にチャカ使わないけんような連中なんですかね?」
「そうやのー。…さっき、最後の店におるときに、松とちょっと話したんやけど、アイツ等の後ろには、大なり小なりヤクザが付いてるやろうけ、気をつけた方がいいやろうって事やったけの。まー向こうが先にヤクザ出してくれたら、こっちの勝ちやけの。」
「そうですね。まー明日にならんとどうなるか分からんけ、考えてもしょうがないっすね。」
マカロフ1丁と予備のマガジンを1つノブに渡して、ノブを部屋から追い出した。それから、熱いシャワーを浴びてビールをかっくらってベッドに身体を放り出した。マカロフはベッドの横の作り付けの机に放り出したままだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲12-1

2006-09-05 09:11:33 | 真冬の狂想曲
12-1
 女を2時間程で帰したあと、キムに貰った紙袋を開けてみた。中には黒い鉄の塊が2つ入っていた。ロシア製のマカロフだ。ひょっとしたら59式かも知れないが、俺には解らない。拳銃の他に、予備のマガジンが2つ入っていた。久しぶりに触る拳銃に俺の気分は高揚していた。動作確認をして、ドアの横に付いている鏡の前でマカロフを構えて一人悦に入った。
 携帯電話でノブを俺の部屋に呼び出した。まだノブの部屋には女がいるらしいが、こっちの話のほうが重要だ。ノブは少し機嫌の悪そうに俺の部屋に入ってきた。
「どうしたんですか?首藤さん。もう女帰したんですか?」
俺はベッドの上を指差した。
「チャカやないっすか!…あっ!さっきキムさんが渡してたのはこれっすか!」
「おう、明日はいよいよ仕事せなやけ、これ持っちょけって事やろう。1つはお前のやけ、1つ持っていっちょけ。」
「ちょっと待ってて下さい。女帰してからすぐ戻ってきます。」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲11-2

2006-09-04 14:43:51 | 真冬の狂想曲
11-2
「ここはですね、この前ナイティナインのTVに出た鉄板焼きの店なんですよ。社長のお口に合えばいいのですが。」
 確かに、俺の財布じゃ無理そうな感じの店だ。壁に掛かったメニューには値段が書いてない。
「この店で1番高いワイン出して。」
 カジノの店長がそう言うと、蝶ネクタイのウェイターはすぐに1本の赤ワインを持ってきた。
「このぐらいのワインしか置いてないみたいですけど、いいですか、これで?」
「いいよ、いいよ、胃に入れば何でも一緒だからさ。」
 松のヤツは1100万も失って頭に来てるはずだが、そんな素振りは見せずにクールに装っていた。おまけに標準語を喋っている。田舎の金持ちのくせに。
 それから食った事もないような肉を食い、天然物の車海老に鮑なんかを食いながら、ワインを2本空けた。俺は久しぶりの辛くない食事に、マナーもそっちのけでがっついた。その間に松と店長は、一緒に川口にカジノを開けようなんて話で盛り上がっていた。
 いい加減、腹具合も満足した頃、俺達は勘定をカジノの店長にまかせて店を出た。外は相変わらず寒かった。カジノの店長が俺達を呼び止め、カジノで遊んでくれたお礼と、また寄って下さいと言って、深く頭を下げた。
 今の食事がいくら掛かったかは知らないが、2晩で1100万も落としていった客に使う金としては安い物だろう。

 松が連絡していたのだろう、キムが通りの向こうで待っていた。今日も寒そうな顔をしている。俺達と目が合うと破顔した。愛想笑いか、ようやくこの寒い外での待ち時間から開放される安堵の顔かは、俺には分からない。
 それから俺達は、また「サブリナ」に行き、「マイ・フェアレディ」に行き、女達を連れて帰った。
 昨日と違う事と言ったら、連れて帰った女がミヒャンじゃない事と、キムから貰った紙袋が重たい事だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする