豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

ぐっときた

2008年10月09日 | Weblog
「情熱大陸」のテーマの作曲者にして、もじゃもじゃ頭がトレードマークのバイオリニスト。作曲もされるし、お話も巧み。クラシックの世界には納まりきらずに幅広く自由に活動されている・・・という印象だった葉加瀬太郎さんのコンサートに行ってきました。
いつもの会場とは少しばかり違う小さめの会場なのだとか。今回はアコースティックな音も大切にしたコンサートなのだそうです。
クラシックもたくさん取り上げられたという新アルバムから選ばれた幕開きの曲は「見上げてごらん、夜の星を」でした。いずれクラシックになっていくであろう、日本が誇る名曲中の名曲と紹介されていました。

短めの曲が、次々と畳み掛けられるように続き、楽しく良い気分に浸っていきます。おそらく、極めればかなりの技巧派としてクラシック界でも名をなされていた方なのでもありましょう。伝えたいことを凝縮して、それが最も無理なく伝わりやすい雰囲気を見事に作り上げることのできる稀有な才能の持ち主だと思いました。同じような香りのする方がいらっしゃったなあ・・と。そうです、独自の活動を繰り広げているコンドルズの主宰者、近藤良平さんがその方でした。コンテンポラリーダンスの世界では日本のみならず、海外でも高い評価を得ている方ですが、その飄々とした佇まい、難解なことを噛み砕いて伝えようとされる姿勢に、共通するものがあるように感じました。お二方とも、何かのエッセンスを伝えるに相応しい技量とお人柄をお持ちのようです。伝道師のような・・とでも申しましょうか。
意味あることを誰かに伝えようとするときに取るべき手段、その本質を垣間見たような気にさえなりました。まずは本人がしかめっ面をしていたら何も伝わらないのですね。

葉加瀬さんの選ぶ音は、そのいずれもが「ぐっとくる」。そんな印象を受けました。作られた曲は、どこか南米や東欧の香りがします。情熱と哀愁を感じさせる旋律は、どの音楽と色分けされることはなくても確実に「ぐっとくる」のでした。ブラームスをこよなく愛し、もし、無人島に持って行くとしたらいずれかブラームスの音楽を選ぶでしょうとおっしゃっていた葉加瀬さんです。きちんとした西洋の音楽理論を身につけておられるのは周知のことですが、素直に感性が向かう方向は、そうした民俗音楽なのかもしれません。日本の旋律に対する親しみ・・例えば演歌にぐっとくるような・・感性がそうしたものに寄り添わせるのではないでしょうか。だからこそ、そんな彼の奏でる曲に、私達も同じような心地よさや感動を得ることができるのかもしれません。
「情熱大陸」のテーマは、観客が立ち上がって手拍子を取りながらの、まるでロックコンサートのような盛り上がりでした。この曲は、この番組で取り上げられたことそのものが大事件だった「THE CONVOY」の躍進期の思い出にも繋がる思い入れの強い一曲です。初めて出かけた葉加瀬さんのコンサートで、この曲を聞くことが出来たのもとても嬉しかったです。

今日は、いろんな趣向が施してありましたが、既存の曲を宝くじの抽選のように、回転盤を回して選んで演奏するというコーナーがありました。
そこで、初めて聞いた「流転の王妃・最後の皇帝」のメインテーマ。今夜は、バイオリンとピアノのバージョンで披露されましたが、これもとても素敵な曲でした。じっと目を閉じて旋律を追いかけていくと、バイオリンがメロディを奏でる楽器だということが良くわかりました。息遣いや思いのようなものまで、旋律に乗せることができるのですね。今日の記念にそのアルバムを購入してきました。この曲を含めて、スペシャルドラマ全体の音楽を担当されたということでしたが、これから順に聞いていくのが楽しみです。