先週、岡山の伝統工芸展でギャラリートークをしていた織物の作家さんは、明るい黄土色(日本の色名はあるはずだけど)の紬の無地、家紋入りの着物に、昔風の細かな柄の帯姿だった。
自分で織って自分で仕立てた着物だと、来館者の質問に答えていた。素晴らしい。伝統的手仕事の世界。
「志村ふくみ」さんに織りを習ったとのことで、名前はかねてから知っていたけど、古書のこの本をネットで買った。
元値は5千円、安く買えてよかった。大きくて重い本でした。
主に日本伝統工芸展に出品した作品を掲載。とても素晴らしい作品の数々。
すべて草木染、手織り。
余り大きくすると著作権的にまずいと思うのでこの程度で。
作品とエッセイ。
著者は近江八幡の生まれだそうで、夜の琵琶湖の湖面に明かりが揺れているさまを表現。
エッセイは心象風景を古典文学などを引き合いに書いていて、制作についての説明はありません。企業秘密?
エッセイはパスして作品の方だけ見ました。
私は織りをする人間なので、糸の種類、染料の種類、作品の縦横の長さ、筬目、完成までにかけた時間などの情報が欲しかったけど、それは今は会社組織になった工房の門をたたいて習いに行く必要がありそうです。
10人ほどの定員、試験があり、お稽古代も私立大学の授業料くらい?高いというよりも、不退転の決意で習うに適当な価格かと思います。
私みたいに、良心的なお稽古代で遊び半分以上で習っていたのではなかなか身に着きません。先生には悪いことしました。
すべて草木染めらしい。草木染と言えば地味な色合いを思い浮かべますが、きれいな色ばかり。明度はそこそこ、彩度が高い色の数々。こんなきれいな色がよく出せるものだなと感心しました。
作品作りで一番難しいのは糸を染めることかなと想像します。ある程度の量の染料が必要で、色止めがまた難しい。ずっと同じ色を保つのはよほど媒染がしっかりしているのでしょう。
不思議なことに、化学染料で染めたのとは違い、作品を自然の中においても自然の一部のようによく馴染むように思います。それを纏う人間も、自然と一体化し、昔からの手技に触れて遠い先祖からの末端に連なる感覚。
着れば心も体もリラックスするのではないでしょうか。メルカリで中古で200万円前後。これも技術と作る時間を思うと一概に高いとは言えないかなと思います。でも帯はどうする?そのほか小物も。
私が好きなのはこの二つ。
前もって糸を染め分けておく。絣の一種。
色の組み合わせが好きです。
水と草原を連想。
志村ふくみ氏は現在99歳。お嬢さんとお孫さんが織りを事業として発展させ、京都には工房とショップ、東京にも工房があるそうです。
確か、文化勲章も受賞しているのでしょうか。機織りの技術は弥生時代に大陸から伝わったと言われています。その時から原理は全然変わっってないし、平城京跡から出土した織道具も今も使えそうですが、古い技術にその時々で新しい感覚を盛り込み、織は人類の続く限り続いて行くことでしょうう。
素晴らしい手仕事に感動しました。
私は「きれいに織るだけなら伝統工芸。伝統工芸じゃないんだから」と言われていますが、きれいにさえ織れない私。。。。