日記

日々のあれこれ

「福田村事件」、「日本のデザイン」

2023年11月07日 | 読書

最近読了した本。

どちらも新しい知見、視点が得られました。

日本の財産は美しい国土、それに育まれた独特の感性と美意識。資源の乏しい国だけど、新しい製品、新しいイメージを世界に向けて発信できる。そう提唱する。著者はデザイナーで仕事の幅は広く、長野オリンピックの開、閉会式のプロデュース、愛知万博のポスター、企業のアドバイザー、各種展覧会の企画など工業と美術を繋ぐ架け橋としての仕事をたくさんしてきた人。

日本人の感受性は繊細、丁寧、緻密、簡潔。それを自覚することで経済も文化も次のステップに行けるそうです。

しかし、今の工業製品がとんでもないことになっているのをいろいろと知りました。人に優しいハイテクとでも言えばいいのでしょうか。

繊維、素材、日進月歩の新しい工業製品を世界に向けて発信する。やっぱりこの国は先進技術で勝負するしかないと思います。各分野はそれぞれ専門的な話もあるでしょうが、普通の暮らしている私のようなものには入門書としては最適。10年くらい前の本なので今はもっと先鋭化していることでしょう。

しかし経糸、緯糸のほかに斜めに交差する糸で織る繊維って、その織り機を見たいものです。豊田佐吉翁もびっくり。


福田村事件は、今年が関東大震災からちょうど一世紀で話題にもなり、映画にもなりました。暑くて家にこもっていて、私は見損ないましたが。

香川県から千葉県に薬の行商に行った人たちが、朝鮮人と間違われ、1923年9月6日、千葉県東葛飾郡福田村で、惨殺された事件は、私はこの映画が話題になるまで全然知りませんでした。

著者は旅行作家の文章教室で学び、フリーライターの後、福田村事件を独自に取材し、学術誌に発表、後にこの本のもとになる著作を出版。版元の倒産で絶版になっていたのが、今年別の会社から出されるという数奇な運命の著作です。

2日で読みましたが、朝鮮人、社会主義者、日本人の虐殺は福田事件だけでなく、千葉県だけでもたくさんある。それを読むうち気分が悪くなって胸が苦しくなったけど、真実を知りたい気持ちが勝って、最後まで読みました。

歴史の教科書などには民間人の一部が起こした事件と読める記載ですが、9/3には内務省が各地方の(軍隊の)長官宛に朝鮮人が暴動を起こしていると打電しています。

実際に軍隊が出て朝鮮人を捕まえたり、警察と自警団が一緒に検問したりと、公権力が積極的に関与した史料も残されている。そしてその史料は探せば今でも出て来ると言う。

そして福田村事件である。渡し船に荷車を載せるときに船頭と揉め、船頭が半鐘を鳴らして「朝鮮人がいる」と言い始めたそうな。香川県人が関東に行けば、そりゃ言葉は違う。それで殺されるなんてあんまりである。

手に手に道具を持って集まる村人。その数、数百人とも。日本人と言っても聞き入れられず、惨殺される。

行商人と言うので何となく年配の人を想像していたけど、大人は全員20代、6歳、4歳、2歳の子供に胎児まで。胎児を入れると10人の犠牲者。

後に裁判になったけど、刑が確定した犯人にはカンパが集まり、農作業も村中で手伝い、やがて天皇の代替わりで恩赦になって全員釈放されたそうです。

乏しい史料から真実を明らかにしてきた先人に加えて、著者の仕事は意義が大いにあると思う。

虐殺者を断罪するのではなく、それに至った経緯、原因を明らかにして今の時代、日本人全体で共有しなければならないと私は思う。

著者は言う。背景にあるのは朝鮮人差別、被差別部落民差別、そして職業差別。

げに差別ほど怖いものはなし。人をレッテルで判断して卑屈になったり、尊大になったりは人間の弱くて愚かな部分。そういうものをすべて取り払って、人として向き合いお互いを尊重する。それを目指したいと思う。


昨日の会はとても雰囲気がよかった。偉い先生か親身に指導してくれた。これは高校までの学校の雰囲気。目指すところは一つ。教えたい、教わりたいがかみ合った時に生まれる親密な空気。肩書全部取り払って、いいものを作りたいという目標は一つ。それだけ私が年取って素直になったのかもしれないけど。

しばらくはこの学校で頑張ります。

次に読む本。余った時間で少しずつ。

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