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武士ペク・ドンス 第8話
戻ったなら まずは俺に知らせるのが筋だという天(チョン)
なぜテウンなんかに 先に会うんだと…!
あの腕を斬られたのが“テウン”かと 苦笑するキム・グァンテク
相手が俺でも腕を斬るかと 聞くより早く剣を抜く天(チョン)!!!
その瞬間 グァンテクも剣を抜き 2人の戦いは一瞬で終わった
やはり片腕を失っても 朝鮮一の武士だと称賛する天(チョン)
なるほど時の流れというものは 寡黙な男の口数を増やすのかと
グァンテクは 以前より物腰が柔らかくなった天(チョン)をからかう
フクサモは なぜ天(チョン)と決着を付けないのかと責め立てる
帰って行く天(チョン)を見送り 挨拶に寄っただけだというグァンテク
ヨ・ウンは 去って行く天(チョン)を 無言で見送る
入れ違いに戻ったペク・ドンスが すれ違う天(チョン)の殺気に遭い
ただ歩いて横を過ぎ 睨まれただけで なぜ足がすくむのかと冷や汗を拭う
日が暮れた通りを歩くファン・ジンジュ
すると 少し先を見慣れた顔が歩いているのに気づく
ヨ・ウンが 砦を抜け出し 天(チョン)を追いかけて来たのだ
ウンは 実の父親ヨ・チョサンが 息絶えた時の記憶を失っている
殺したいほどに憎んだ父でも ウンにはたった一人の肉親である
父親を殺したのは誰なのか… その真実を知りたかったのだ
犯人は 思悼(サド)世子ではないかと問う
天(チョン)は ウンの推理をあっさりと認めた
それでも 世子が自ら行動するはずがない
その手足となった者は誰なのか…!
まさか… 剣仙(コムソン)なのかという問いに
天(チョン)は ならばどうするかと問い返し 去って行く
※剣仙(コムソン):朝鮮一の武士の称号
青厳寺では
沙彌尼と会った思悼(サド)世子が 怪しい尾行の気配に気づく…!
すぐに護衛が動いたが 気配は音もなく消えていた
その気配が刺客だとすれば 青厳寺も安全な場所とは言い難かった
同じ時
ドンスは あの薬売りが剣仙(コムソン)であることを知る
そこへ ファン・ジンジュが酒瓶を持って現れる
ウンがいないことに気づき それとなく聞いてみる
天(チョン)とウンは なぜ会っていたのか…
話の内容は聞き取れなかったが 2人は明らかに知り合いだ
ウンは チャンミの酒幕(チュマク)には寄らず ひとり砦に戻る
今は ドンスたちと騒ぐ気分にはなれなかった
※酒幕(チュマク):朝鮮時代の宿を兼ねた居酒屋
ここで初めて ウンは剣仙(コムソン)キム・グァンテクに会う
今は亡きチョサンの息子を 目を細めて見つめるグァンテク
ウンは 剣仙(コムソン)との距離を測る
一瞬の勝負で十分に殺れる…!
殺気をみなぎらせながらも なぜか剣が抜けないウン
鋭い殺気を遮るように グァンテクは ウンの肩をポンポンと叩く
その若さに見合わぬ殺気を感じ取り 行動を封じて去って行くのだった
フクサモは いつまでも帰らないドンスとチョリプを迎えに来て
懐かしいファン・ジンジュと再会する
美しく成長したジンジュに 最初は気づかない程だった
ジンジュが帰ると 遅れてグァンテクがやって来る
酔いつぶれているドンスを見て あの時の青年だと気づいた
思えば ドンスもウンも それぞれ父親に似ているというグァンテク
翌日 グァンテクは あらためてチョサンの墓の前に立つ
まるで 生きてそこにいるかのように 親しく語りかける光景に
墓参りで現れたウンは 近づくことが出来なかった
ホン・デジュは 世子を探った者からの報告を受けていた
密かに沙彌尼と会ったなら 何か関係があるはず
沙彌尼の出身情報を詳しく調べよと 部下に命じていく
青厳寺では
ドンスが ウンとチョリプを引き連れてやって来ていた
何者か知らないが 沙彌尼が 男を招き入れたことは間違いない
夜の闇に紛れ 部屋に招き入れていたのは 確かに沙彌尼だった…!
これが最後でもいいから もう一度沙彌尼に会いたいというドンス
2人には 厳重な見張りを頼みつつ 絶対に出て来るなと念を押す
再び “あの時の男”が 沙彌尼を訪ねているとも知らず…
思悼(サド)世子は 沙彌尼に会い 先日の答えを口にする
「北伐の計」か沙彌尼か… どちらかを選ぶなら 沙彌尼だと
その答えだけで十分だと言い 静かに服を脱ぐ沙彌尼
生まれた時から 自分の運命は決まっていた
世子様の女になるか あるいは尼僧になるか… その2つしかなかったと
決して沙彌尼を 女として選ぶのではないと言いつつ 動揺する世子
しかし その動揺は やがて驚きに変わっていく…!!!
服を脱ぎ捨てた沙彌尼の全身には 奇妙な刺青があった!
そして沙彌尼は 自分の体こそが「北伐の計」なのだと答える…!
それは 10年前にさかのぼる
今は沙彌尼となったユ・ジソンは まだ少女であった
その娘の体に ユ・ソガンは 「北伐の計」を彫り込んだ
1枚彫っては焼却し 最後には跡形もなく消えた「北伐の計」という書物
この世にただ一つ ジソンの体に彫られたものが全てであった
消すことも許されず 死ぬことも許されない
ジソンに許された2つの道は どちらを選んでも苦しみしかない
思悼(サド)世子は 沙彌尼の中に自分と同じ苦しみを見た
静かに服を着せてやる光景が 外からは 影絵のように映って見える
ドンスにも 護衛武士の視界に入る前から見えていた
一体 昨夜といい今夜といい!
沙彌尼と密会する男は何者だ!!!
頭に血が上ったドンスは 見境なく走り出し
護衛武士の制止をかわし 乱暴に扉を開けた…!!!
無礼なドンスの振る舞いに 死なぬ程度に灸を据えよと命じる世子!
そこへ ようやくウンとチョリプが加勢に現れた
剣を突き付けられて身動きできないチョリプ
しかしウンは 護衛武士が動く前に一瞬の隙を突き倒していく…!
戦いながら ウンは 思悼(サド)世子の腰に輝く剣の鞘を見た
そして 護衛武士の腕から推察し 世子ではないかと気づく…!
途端に戦いをやめ ひざまずくウン!
ドンスとチョリプは 何をやってるんだ!とばかりにウンを睨む
服従の姿勢で微動だにしないウンを見て 次第に焦り出す2人
それでもドンスは 最後までひざまずこうとはしない
だいたい… 処女菩薩とされる沙彌尼に なぜ世子が会いに来る?!
そうつぶやきながらも 座り込み ひざまずこうかどうしようかと迷うドンス
そんなドンスを見て 思わず笑いだす思悼(サド)世子
ウンの左手は 剣に手を伸ばそうとして小刻みに震えている…!
世子と話すうち 暗闇に目が慣れたドンスは
あの時 井戸から助けた人だと思い出し 同時に世子であることも認め
死罪に値します!!! とひれ伏した
世子は ますます可笑しくなって 声を上げて笑いたくなる
そして… ペク・ドンス ヨ・ウン ヤン・チョリプ
3人の名を言い当てていくのだった
『何と立派に育ってくれたものだ
お前たちはこの先 朝鮮の新たな希望となっていくのだ…!』
世子が去ると 3人は 放心して酒幕(チュマク)に行く
何と言ってもドンスの悪態は 死罪に値する
もし世子じゃなくても 両班(ヤンバン)に向かってよくもあんな真似を…!
※両班(ヤンバン):朝鮮時代の上流階級
ドンスは 記憶のすべてを消し去りたいかのように 酒を煽る
珍しくウンまでが動揺し 盃を満たしたのに まだ延々と酒を注いでいた
やがて酔いつぶれて眠ってしまう3人
ウンは 気配を感じ飛び起きた…!
思わず短剣を突き付けると そこに座っていたのはキム・グァンテクだった
剣仙(コムソン)キム・グァンテクは 旅支度を整えている
(なぜ父を殺したのですか!)
声にならない声で 剣仙(コムソン)に問う
今こそ殺れる距離であった…!
一方 ファン・ジンギは
慕華樓(モファル)に忍び込んだ娘ジンジュに舌打ちし
袋の中身をすべて出し 盗んだ物を確認していた
すると 中から奇妙な書簡が出て来た…!
※慕華樓(モファル):中国皇帝の使者を迎える施設
慕華樓(モファル)では
皇帝よりの勅書が消え 大騒ぎとなっていた!!!
清の使臣は 直ちにホン・デジュに会い 事態を報告する
使臣によれば 勅書には老論(ノロン)派の“反清復明”が書かれていたという
つまりは 清を滅ぼし再び明を再興するというものであった
そして 朝鮮の現国王に譲位を迫るものであると…!
老論(ノロン)派の 清への忠誠心は揺るぎはしないと明言し
盗まれた勅書は 決して公になってはならないものだというデジュ!
ヨ・ウンは ひとり黒紗蝋籠(フクサチョロン)の砦に向かう
思悼(サド)世子も剣仙(コムソン)も 父を殺してはいない
真犯人は誰なのかと あらためて天(チョン)に問う
※黒紗蝋論(フクサチョロン):清の殺人集団
天(チョン)は ウンが自ら父を殺し そして記憶を失ったと真実を告げた
全てを納得し 一礼して去ろうとするウン
ウンの頭に手を置き じっと見据える天(チョン)
『たとえ頭は下げても 眼光を収めてはならぬ』
その悲しみに満ちた眼光こそ 人の生死与奪権を握る
“真の殺手(サルス)の眼光”だと
同じ時 ホン・デジュは 犯行の現場にファン・ジンギがいたとの情報を得る
さっそく 刺客の手配に天(チョン)を呼びつけるが
代わりに現れたのは 地(カオク)だった
全国に名を轟かせるファン・ジンギを仕留めるため 念には念を入れたかったが
天(チョン)が出るまでもないと言われれば そういう気もしてくる
勅書を探し当てれば1万両
ファン・ジンギを仕留めれば2万両
おかしなことになったものだ
もともと 娘ジンジュが忍び込んだ慕華樓(モファル)である
ジンギは娘を逃がそうと 矢面に立った
そして ジンギを逃がしたのが地(カオク)なのだ
地(カオク)は 密かにジンギを呼び出し 勅書を受け取る
勅書には ジンギが自ら折った剣が添えられていた
勅書は 思悼(サド)世子の安全を守る大切なものである
しかし地(カオク)は ジンギとジンジュを守りたかったのだ
『今この時 お前は死んだのだ』
立ち去ろうとして 地(カオク)は 聞かずにはいられない
娘の名は… 何というのかと
『ジンジュです お嬢様! ファン… ジンジュといいます!』
それからほどなくして 沙彌尼ユ・ジソンも居を移すことになる
思悼(サド)世子の護衛武士が付き添い
青巌寺から さらに安全な場所へと…
山奥の 壮勇衛(チャンヨンウィ)の砦に キム・グァンテクの姿があった
少し遅れて フクサモが ドンスとウン そしてチョリプを連れて来る
※壮勇衛(チャンヨンウィ):正祖(チョンジョ)王が新設した親衛部隊
『あの薬売り…!』
と 思わず叫ぶドンスは 小さな声で『剣仙(コムソン)…』 と言い直す
落ち着きなく言葉を発し まるで集中していないように見え
それでいて 咄嗟に突き出された剣を 瞬時に受け止めるドンス
何とも面白い奴だと 剣仙(コムソン)グァンテクは 笑うしかない
フクサモが 今後は 3人の修練を剣仙(コムソン)が見るという
やがて宮廷に行き 壮勇衛(チャンヨンウィ)として生きる3人
その前に どうしても剣仙(コムソン)から指導を受けさせたかったのだ
フクサモとグァンテク そして酒幕(チュマク)の女将チャンミが見送る
チャン・テポが 自ら盾となり 命を犠牲にして守った3人が
晴れて宮廷へと向かい 歩いて行く
感無量のフクサモは 涙を拭いながら我に返り
世子から預かった沙彌尼を どこへ住まわせようかと考える
宮廷では
イム・スウンが3人を待っていた
くれぐれも軽はずみな行動はするなと言い置き 手続きのため離れるスウン
どこからか聞こえる修練の音に ドンスが歩き出す
見ると すぐ近くに演武場があり 壮勇衛(チャンヨンウィ)が修練している
若き同志たちが 基本の型を 熱心に何度も繰り返している
山奥の砦で 剣仙(コムソン)直々の指導を受けた3人には物足りない
(これから こんな“鼻たれたち”と一緒にやるのか?)
その呟きが 壮勇衛(チャンヨンウィ)の剣士の耳に入る
同じ壮勇衛(チャンヨンウィ)の服を着た若者たちが 一斉に3人を囲む!
ひとりが門を閉めに走り 場内は殺気立っていく…!
ドンスは 面倒そうに身構えながら ウンの耳元に囁く
『おい ウン! 1人ずつなんて面倒だし… まとめてやるか?』