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第52話 太宗武烈王
花郎徒(ファランド)は ずっと新羅(シルラ)の柱となり
数々の宰相や将帥を輩出しながら この国と王室を支えてきた
キム・ユシンは 上仙(サンソン)として
どうしても チュンチュの考えに賛同できなかった
※花郎徒(ファランド):花郎(ファラン)に仕える貴人の子弟
※上仙(サンソン):風月主(プンウォルチュ)を務めた花郎(ファラン)
いずれは王となる摂政が ここまで親唐派を推してくるのであれば
まるで花郎徒(ファランド)が 唐に仕える臣下に成り下がっていくと…!
あれほどチュンチュに協力をと願ったのに…
弟フムスンは 花郎徒(ファランド)の支援なしに
和白(ファベク)会議で 閼川(アルチョン)に勝つことが出来ないと訴える
ユシンは 政争を語る弟を ギロリと睨み付けた!
※和白(ファベク)会議:新羅(シルラ)の貴族会議
何も 和白(ファベク)会議で閼川(アルチョン)に勝とうとは思っていない
王の一存で 自分が摂政になることを拒んだだけのチュンチュであった
チュンチュは 久しぶりに再会できた喜びで 酒を酌み交わしたかったが
ユシンは すぐにも辺境に戻ると言い 頑なに心を開こうとしない
三韓一統を成すために 唐の協力を得ることが なぜいけないのか
大業を成すためなら どんな手段を選択しようと構わないのではないか
この心に誇りを失わない限りは 目先の屈辱など問題ではないというチュンチュ
※三韓一統:新羅(シルラ)高句麗(コグリョ)百済(ペクチェ)の三国統一
ユシンは それには答えず 金官伽耶はなぜ滅びたか?と聞く
その昔 新羅(シルラ)に従っていけば 国が潤うと考えた者たちがいた
今のチュンチュと同じように 心まで売るわけではないと言いつつ
その者たちは やがて新羅(シルラ)の貴族になって
伽耶の民は亡国の憂き目に遭い 辺境に生き 今も差別されている
伽耶王室の子孫であるユシンは 新羅(シルラ)人として生きながらも
心のどこかで 伽耶の血を意識することがあるのだ
共に大業を成そうと誓った少年時代
あの日 ここまで考えが対立し 訣別するなどとは思いもしなかった
そんな2人の諍いを 閼川(アルチョン)を推す者たちは
今こそ好機だとほくそ笑み 閼川(アルチョン)もまた ユシンに会う
自分が摂政になったら ユシンを上大等(サンデドゥン)に推挙し
親唐派で溢れた朝廷を刷新したいと 抱負を語っていく
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の高級貴族階層の最高官職
しかしユシンは 閼川(アルチョン)を勝たせたくてしたことではなく
ましてや 自分が朝廷に出仕するなど 考えたこともなかった
今日はチュンチュと決別したが 2人の大義が違ったとは考えていない
大義を成すため 唐の協力を得ようとすることが許せないのだ
閼川(アルチョン)に対してもそうだと言い切るユシン!
親唐派を排除しようとして 高句麗(コグリョ)に協力を求めるなら
それもまた 決して許すことは出来ないと…!
徐羅伐(ソラボル)を去ろうとするユシンを ボムミンが引き止め
責めるべきは 唐に太平頌を届けた自分であり 父とは和解すべきだと訴える
※太平頌:唐の高宗の治世を称える詩
しかしユシンは 三韓一統を成すべく唐と同盟を結んだことは
信義に背く行為だとして 決して譲ることはない
そしてチュンチュも 情に流され信念を曲げることは望まないはずだと…!
大業を掲げて心をひとつにする2人が まさかこんな形で決別するとは
夫と兄が 親唐か反唐かで こうも対立するものかと嘆くムニ
妻の嘆きを受け 今一度話し合おうと チュンチュは辺境へ向かう
まだ自分を説得しようというのか
閼川(アルチョン)との間に密約があるか確認しに来たのか
ユシンは 和白(ファベク)会議を前に 辺境に来たチュンチュを訝しむ
チュンチュはただ 2人の間の誤解を解きたい一心であった
共に手を取り 大業を成そうと…!
鉄騎兵を有する高句麗(コグリョ)軍と 精鋭揃いの百済(ペクチェ)軍
両国を制して三韓を統一するためには 唐軍の支援がなければ無理だと
チュンチュは その考えを曲げることが出来ない
ユシンが いかに猛将だとしても 永遠に戦い続けることは不可能なのだ
ならば唐軍を盾に 大業を成すことの どこが間違っているのか!
しかしユシンは 自分との信義より 唐との信義を重んじられたようで
もはや チュンチュを信頼することが出来なくなっているのだ
誤解を解こうと訪れた辺境の地で 2人は さらに溝を深めてしまう…!
一方 閼川(アルチョン)は
高句麗(コグリョ)の ヨン・ゲソムンから届いた親書を読んでいた
是非とも摂政になり 両国が互いに親唐派を始末すべく動こうという内容である
この親書への返信として 密書を運ぶ密偵が捕えられた
閼川(アルチョン)は ヨン・ゲソムンとの間に密約を交わそうとしたのだ
和白(ファベク)会議の当日
早朝より チュンチュは 真智(チンジ)王の墓参りに訪れていた
真智(チンジ)王は キム・チュンチュの祖父であり
暴君として汚名を着せられ 廃位となっている
もし チュンチュが摂政になり いずれ王位に就けば
亡き祖父の 無念を晴らすことが出来るのだが…
しかしチュンチュは 身内の無念を晴らすことより
新羅(シルラ)再興と 三韓一統を成すために生きると誓う
そうすることこそが 民を救済すべく生きた亡き祖父の目指す道だったと…
(おじい様 私が王座を欲するあまり不義になり
三韓一統の大義が揺るがぬよう 見守っていてください)
会議の場に 遅れて現れたチュンチュは 決議に参加しないと宣言する
それはつまり 摂政になる資格を放棄することになる
そして 摂政になる道は捨てても 新羅(シルラ)再興の改革は
決して諦めないと言い放った…!
『この場に集った貴族の方々にお願いする!
今日のこの和白(ファベク)会議を どうか最後としてほしい
貴族が王座に挑む和白(ファベク)会議は 廃止されるべきである!』
すべての貴族が既得権を放棄し 厳しい王権のもとに団結してこそ
新羅(シルラ)の再興は果たされると…!
同じ時 ボムミンは 花郎徒(ファランド)を率い 王宮を目指す!
そして侍衛府(シウィブ)の武装解除を行い 大王陛下の護衛についた
和白(ファベク)会議の場には キム・ユシンが兵を率いて現れ
閼川(アルチョン)を摂政とする決議に 異議を唱える…!
摂政と認められぬ者には 断じて従えないと!!!
閼川(アルチョン)の前に進み出て 威勢をはるサジンは
ユシンが揮った剣で 一瞬のうちに斬り捨てられた!
『私は確かに警告した!
高句麗(コグリョ)と内通するなら 決して許してはおかぬと!
なぜ高句麗(コグリョ)に内通する者が 摂政の座に就くのだ!!!』
目の前に示された密書を見て 貴族たちも驚愕する
チュンチュは 三韓一統のために唐と手を結ぶと言って譲らず
閼川(アルチョン)もまた 親唐派一掃のため
高句麗(コグリョ)と結託し 唐に攻め入るというのだ…!
『閼川(アルチョン)公! 摂政の座に目が眩んだのか!!!』
『うるさい! 摂政に楯突く反逆者を捕えよーーーっ!!!』
この騒ぎを知らず チュンチュは 清々しい思いに浸っていた
一時は 摂政の座に執着したが ユシンの心を失っては意味が無い
大業を成すなら やはりユシンと共にありたいと思うチュンチュだった
閼川(アルチョン)によって 羅唐同盟が崩れるとしても
唐と和親を結ぶことは 止められない時代の流れだというチュンチュ
そんなチュンチュのもとへ ユシンから呼び出しがかかる
再び 和白(ファベク)会議の場へ行くと
落ち着きを取り戻した閼川(アルチョン)が 後悔の涙に暮れている
ひとえに国と民を思い あのスクルチョンと対峙してきたというのに
摂政から王座へと挑む権力欲に 負けてしまったのだ
この事実が すべての貴族に知れ渡れば 国は根幹から揺らいでいく!
この事態を打開できるのは もはやチュンチュしかいないと
閼川(アルチョン)が自ら願い 摂政の座に就いてくれと言い出す
少し前まで 清々しさの中にいたチュンチュである
その意思が固いものであることは 誰もが承知していた
臣僚らが 固唾を飲んで見守る中
閼川(アルチョン)が チュンチュの手を取り 衷情を尽くすと明言し
ユシンもまた この難局を打開する道は他にないという
キム・ユシンは 羅唐同盟を受け入れるつもりはない
しかし チュンチュを摂政の座に推挙するからには
臣下となり チュンチュに従うと約束し チュンチュの前にひざまずく…!
これこそ ユシンが 武将として生きる証明であった
西暦654年
真徳(チンドク)女王が崩御し キム・チュンチュが即位し
新羅(シルラ)第29第王 太宗武烈王となる
「三国史記」によれば 貴族らが閼川(アルチョン)を摂政に推挙し
閼川(アルチョン)がチュンチュを推挙したとある
これまで 聖骨(ソンゴル)のみが受け継いできた玉座を
真骨(チンゴル)のキム・チュンチュが 初めて受け継いだ
これはまさに 新しき世の幕開けと言えるだろう
※聖骨(ソンゴル):父母共に王族に属する者
※真骨(チンゴル):父母のどちらかが王族に属する者
羅唐同盟を前面に押し出すチュンチュの即位は
高句麗(コグリョ)と百済(ペクチェ)を緊張させていく
百済(ペクチェ)のウィジャ王は これで新羅(シルラ)の命運も尽きたという
そして一刻も早く 高句麗(コグリョ)のヨン・ゲソムンに会って同盟を結び
新羅(シルラ)に攻め入ろうという
これに対し 長男プヨ・ユンが 今は戦争を控えるべきだと進言する
長きに渡る戦乱に 民心が揺らいでいると…!
すでに太子の座を廃されているユンだが その信念は変わっていない
ウィジャ王は そんな長男が大いに不満であった
高句麗(コグリョ)では
ヨン・ゲソムンが怒り心頭になり すぐにも新羅(シルラ)に鉄騎兵を送り
チュンチュを懲らしめると息巻いている!
太宗武烈王は
クムガンを上大等(サンデドゥン)に任命し 国政を託す
しかしクムガンは 任命に感謝しながらも すぐに受け入れることが出来ない
一時は 閼川(アルチョン)を摂政に指名した責任を感じていたのだ
太宗武烈王は 朝廷の和合を成すため
過去の党派を問わず 優秀な人材を登用すると明言した
クムガンは 恐れ多くも 粛々と任命を受けるのだった
ここでボムミンが
北の辺境に 高句麗(コグリョ)軍が侵攻していると報告する
高句麗(コグリョ)は 百済(ペクチェ)や靺鞨と結託していた
キム・ユシンの鉄騎兵を!と進言するボムミンだが
それでは 百済(ペクチェ)との国境が守れない
鉄騎兵には鉄騎兵をという参謀カンスの考えにも 武烈王は首を横に振る
唐に国書をしたため 高句麗(コグリョ)を攻撃させるというのだ
『辺境を守る兵が 王命なしに動けば 大逆罪を問う!!!』
太宗武烈王となったキム・チュンチュは 絶対的な権威を見せる
辺境に留め置かれた兄ユシンを思い 憤慨するフムスン!
一体 誰のおかげで即位できたのかと…!
何の功労もなく 罪を犯したクムガンが上大等(サンデドゥン)になり
なぜ兄ユシンが冷遇され 辺境を守らねばならないのかと息巻く
キム・ユシンは 国境付近で 時折ケベクと会っていた
時には酒を酌み交わし 朝まで語らい 時には碁盤を挟み対局した
しかし今夜 こうして過ごすのも最後になるだろうというユシン
次に会う場所は おそらく戦場であろうと…
ウィジャ王と善徳(ソンドク)女王は 幾度となく同盟を結ぼうとした
しかし様々な陰謀と思惑が絡み合い とうとう実現できずに終わる
もし両国の同盟が実現していれば…
ケベクとユシンは味方となって 唐に攻め入っていたであろう
互いの度量を認め合い こうして酒を酌み交わす僚友であろうと
国と国とが対立したなら 生死を分ける戦いを繰り広げることとなる
それが 武将として生きる者の運命(さだめ)なのだ
キム・ユシンは 決意を秘め 太宗武烈王に謁見し
百済(ペクチェ)侵攻の先鋒将にと願い出る
同じ大義を掲げていた少年時代とは違う
一国の王と臣下となった2人は 真剣な表情で睨み合うのだった
『キム・ユシン!!! なぜ王命に背くのだ!
お前がどうしても従わぬというのなら!!
この場でお前を斬首し 王としての威厳を示してやる!!!』