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武士ペク・ドンス 第6話
思悼(サド)世子が 宮廷を離れて1か月あまり
清国使節団の来訪を知らせる書信が届く
おそらく 平安道(ピョンアンド)視察の情報が清国皇帝に伝わったのだろう
清国との国境付近に 世子が長居することは望ましいことではない
それはまた 清国のみならず 老論(ノロン)派に足をすくわれることとなる
※平安道(ピョンアンド):朝鮮半島西北に位置する朝鮮八道のひとつ
思悼(サド)世子は 沙彌尼ユ・ジソンに会う
ジソンは 清国の地形を調査し「北伐の計」と同じことを確認してきた
これは 百年経った今でも「北伐の計」が有効であるということだ
※沙彌尼:年少の見習い女性出家者
※「北伐の計」:孝宗(ヒョジョン)王が残した北伐の兵法書
一日も早く「北伐の計」を実現させたいと気が逸る世子に
ジソンは まだ解析できていない部分があると
今少し時間が欲しいと申し出る
そんなジソンに 世子は全幅の信頼を置いているのだった
亡き父によって 全身に「北伐の計」を彫り込まれたジソンは
沙彌尼となって世子の傍で生きてきた
今や 世子が置かれている立場を按じ
世子を守るために 何も出来ない自分が不甲斐ないと嘆く
思悼(サド)世子は ジソンを ソ・ユデに託し
青巌寺で 連絡を待つようにと告げ去って行く
元々は将軍の地位だったユデであるが 何度も降格され罷免され
今は狼煙台の役人となり 世子に忠誠を尽くしている
ジソンは 去って行く世子の背中を見送った
(私はもう 答えが出ています 世子様
答えが出ていないのは世子様だけです)
一方 黒紗蝋籠(フクサチョロン)の頭目 天(チョン)のもとに
剣仙(コムソン)キム・グァンテクが 少林寺から姿を消したと情報が入る
天(チョン)は 常にグァンテクを気にかけ その動向を監視させていた
※黒紗蝋籠(フクサチョロン):清の殺人集団
※剣仙(コムソン):朝鮮一の武士の称号
今さら 剣仙(コムソン)が清国で何を得て戻ろうと
それに何の意味が?と問う地(カオク)
『待っているのは 俺だけなのか?』
地(カオク)の 剣仙(コムソン)への思いを
すでに察している天(チョン)であった
地(カオク)は ファン・ジンギのもとを訪ねる
子供は?と聞く地(カオク)に ジンギは ここにはいないと答える
しかし ジンジュを見てすぐに この子だと気づく
ジンギは地(カオク)を“お嬢様”と呼び
ジンジュを育ててくれて “恩に着る”という地(カオク)
果たして地(カオク)とジンジュの間には どんな経緯があるのか…
清の使節団に同行する沙彌尼を護衛し 青巌寺に送り届けるというのが
ペク・ドンスらに与えられた任務だった
尼僧と沙彌尼の区別も出来ないドンス
護衛とは名ばかりで のどかな商団の行列に同行するだけの
あまりに退屈な初任務が不満だった
『刺客の集団でも相手にしなきゃ 俺の実力が発揮できない』
その“実力”では あっという間にあの世行きだと笑うチョリプ
言い返したいドンスだが 一度もウンに勝ったことがないのは事実だ
しかし そんなのどかな旅は続かない
この行列が 清国の商団であると知った盗賊集団が狙っている…!
集団の中の“若頭”と呼ばれている女は あのファン・ジンジュだ!
その時!!!
岩陰の気配に気づいたヨ・ウンが 矢を放つ!
これに腹を立てたジンジュが矢を射返し 一気に戦いが始まった!
壮勇衛(チャンヨンウィ)の任務は 沙彌尼を守ること
ウンは 手綱を握るチョリプに 逃げろと叫び自分も後を追う
盗賊の狙いもまた 最も豪華な沙彌尼の馬車だった…!!!
※壮勇衛(チャンヨンウィ):正祖(チョンジョ)王が新設した親衛部隊
宮殿では 清の使臣を召致しての便殿会議が始まっていた
イム・スウンは 世子に 康寧殿で待っては?と進言する
※康寧殿:王の寝室
議題はまさに 思悼(サド)世子の行動について… なのである
世子が 辺境で軍事訓練をしているという噂が 清国皇帝の耳に入った
都城を守る兵士が5千なのに対し なぜ辺境に5万もの兵が駐屯しているのか
これは清国に対する挑発かと問われ 英祖(ヨンジョ)は苛立つ…!
世子の行動で 使臣ごときに侮辱された英祖(ヨンジョ)は怒り心頭!
王と世子の関係が悪化し ほくそ笑むのは老論(ノロン)派ホン・デジュだ
貞純(チョンスン)王妃キム氏は 王様から憎まれるような行動は
なるべく慎むように出来ないかと声をかける
しかし思悼(サド)世子は… その優し気な物言いの裏を突く
『王妃様が 老論(ノロン)派と縁を切れなくても… 私は違う』
その頃 沙彌尼を守るドンスたちは ジンジュの集団に追いつかれていた
すでに沙彌尼は ウンの馬で逃走し チョリプも剣をかわし応戦する!
そこへ 1人の旅人が現れ まさに戦いの真っただ中を歩いて行く
男は 見たこともない武術で 剣も使わず盗賊集団を倒していき
ジンジュは 手下に合図し退散していった…!
うまく相手が逃げたからいいものの…! と旅人に説教するドンス
旅人は 瞬時にドンスの剣を奪い 喉元に突きつけた!
その早業に 凍りつくドンス
『いい剣だが 殺人剣は 結局は立派になれない
それに 人を害する目ではない』
一方 沙彌尼を連れて逃げたウンは
ジンジュの矢をかわそうとして落馬する
ジンジュが率いる集団は 単なる盗賊稼業
あくまでもファン・ジンギが頭であるが
若頭のジンジュは 奔放に行動して父の手を焼かせている
商団の最も豪華な馬車の中に 宝はひとつもなく
こうなったら ウンと沙彌尼の懐を狙うしかない…!
ウンは 自らの殺気を表に出すまでもなく いとも簡単に応戦し
沙彌尼もまた 世子から教えられた弓を構える…!
『命は誰にでも尊いもの』
互いに弓を構え睨み合う ジンジュと沙彌尼
一歩も引くつもりはないジンジュだが 捕盗庁の笛が鳴り響く…!
商団が通報したのか かなりの人数で捜索が始まっている
※捕盗庁:治安維持を担当する警察のような機関
ジンジュが撤収しても 沙彌尼は弓を構えたまま動かない
ウンは 凍りついたようなその腕をつかみ 静かに下ろしてやる
荒らされた商団の馬車を検証する役人が 通りかかった旅人に尋問する
自らを“薬売り”と名乗る旅人は 剣仙(コムソン)キム・グァンテク…!
号牌(ホペ)を見せろと急き立てる役人
※号牌(ホペ):朝鮮時代の身分証
“キム・グァンテク”の名を確認しても 役人が気づかないほど
あれから長い年月が過ぎ去っていた
ドンスは 旅人の左腕が 自分の命と引き換えに失ったのだと知る由もない
しかし なぜか気になって仕方がないドンスだった
同じ時 危険が過ぎ去ったウンは 沙彌尼を林の中で休ませていた
沙彌尼ユ・ジソンは 若者らしくはつらつとしたドンスに比べ
あまりに悲し気な ウンの目が気になっていた
すぐにもウンを追いかけねばならないドンスは…
なぜか“薬売り”の旅人を追いかけ 川原の岩場に来ていた
グァンテクは 懐かしそうに岩場を眺める
この場所であの日 赤子のペク・ドンスを見失ってしまったと…
すでに 自分を尾行する気配に気づいているグァンテク
だが あまりに隙だらけの尾行に 苦笑せずにはいられない
20歳だという若者は 無謀にも勝負を挑んできた
奇妙な武術を使う薬売りが なぜか気になって仕方ないドンスは
真剣を構え グァンテクの前に立つ…!
まともに相手をする気のないグァンテクは
胸元から号牌(ホペ)を取り出し 応戦の構えをする
ウンには一度も勝てないとしても 壮勇衛(チャンヨンウィ)のドンスである
決して負けないという気概で挑むものの 剣仙(コムソン)にかなうはずもない
『血気盛んということは まだまだ未熟だということだ
剣は 手で握るものではない 剣は 心で動かすもの!
相手に勝ちたいという 切実な思いだけが 剣を動かす…!』
派手に斬り込み 号牌(ホペ)で殴られ大袈裟に痛がるドンス
グァンテクは したたかに痛めつけ笑いながら去って行った
見学を決め込んでいたチョリプは 何が刺客と戦うだ!と叱りつける
“薬売り”にも負けるお前が 刺客に勝てるわけがないと…!
夜になり ようやく合流した3人
沙彌尼を気遣うドンスは 自分の上着を脱ぎ肩に掛けてやる
『俺が恐れていることは2つ! 飢えることと暑いこと!』
同じ時 清国の使臣の宴を襲う人(イン)テウン…!
“決して殺さず 盗賊と見せかけて脅せ”
それが 兵曹判書(ピョンジョパンソ)ホン・デジュから届いた命令だった
※兵曹判書(ピョンジョパンソ):軍事を司る官庁の長官
ファン・ジンジュの砦では
命令も無しに勝手に動いたと ジンジュが叱られていた
仲間の命を危険に晒すなと 本気で激怒するジンギ…!
そろそろ年頃になったのだから 盗賊は辞めろと言うが
ジンジュは 盗賊の頭なのに心配性過ぎると反抗し
どうやら自分は 母親に似たようだと言い出す
ジンジュがまだ幼い頃 ジンギは国中を飛び回っていた
金持ちから大金を奪い貧しい民に分け与える 正真正銘の義賊だったのに
なぜか今はひとつの場所に居ついて 静かに暮らしている
そんな今の父親に ジンジュは不満を持っているのだ
昨日会ったおばさんが 何だか気になるというジンジュに ジンギの表情が曇る
母親の話題になると 決まってそんな顔をする父ジンギ
義賊の娘は やっぱり義賊だと笑い飛ばし機嫌を取るジンジュ
そして 清国の使臣団が泊まる慕華樓(モファル)には金銀財宝が…!
そう語る娘を またも叱りつけるジンギだった
壮勇衛(チャンヨンウィ)の砦に戻った3人は フクサモの逆鱗に触れる
罰を与えられても 一向に反省する気のないドンス
ウンを信じ そして最も軽い任務を命じたつもりのフクサモは呆れるばかり
それを気にするでもなく ドンスは 沙彌尼の美しさを思い出していた
宮殿では
清国の使臣が盗賊に襲われるという事態に 便殿会議が開かれていた
西大門の外にある慕華樓(モファル)は 狭くて防犯も行き届いていない
この際 新たに建て直してはどうかと進言するホン・デジュ
黒紗蝋籠(フクサチョロン)の砦では
剣仙(コムソン)キム・グァンテクが戻ったという情報に
人(イン)テウンがいきり立つ…!
命を奪われてもおかしくはなかった グァンテクとの無謀な戦い
その時 命と引き換えに斬り落とされた親指…!!!
狂わんばかりに復讐心を燃やす人(イン)テウンだった
天(チョン)の心境は複雑だった
敵対するグァンテクではあるが 互いに認め合う存在であった
もともと 天(チョン)と心を結び合っていた地(カオク)
その心がグァンテクの方へ傾いた時
“友”と“想い人”を 同時に失った天(チョン)の絶望は深かった
それでも 黒紗蝋籠(フクサチョロン)を抜け 駆け落ちするという2人に
わが命を懸けて協力しようとした天(チョン)…!
地(カオク)は そんな天(チョン)を裏切ることが出来ず 引き返したのだ
長い長い年月が過ぎ 複雑に絡み合う3人の想いはどこへ…