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第57話 花郎(ファラン)の決意
黄山ヶ原の決戦において キム・ユシンは大敗してしまう
一時はケベクを追い詰めたが あまりにも敵陣に近づき過ぎ
無数の投石機による攻撃を受け またたく間に劣勢となってしまったのだ
これを受け 参謀カンスは 1万の援軍を送ろうと進言する
しかし武烈王は たかが5千の敵に 5万の兵でも勝てぬ戦に
1万の援軍を送ったところで まったく意味が無いという
百済(ペクチェ)では
たった5千の兵で 5万の敵を蹴散らしたケベクを称える一方で
唐軍に大敗した太子を叱責するウィジャ王
太子プヨ・ヒョは 将軍たちが油断したせいだと言い訳し
プヨ・ユンが 酒に溺れ出陣の機会を逃がしたことを なぜ隠すのだという!
情けない息子たちのいがみ合いに 辟易し激怒するウィジャ王
新羅(シルラ)の陣営では
大敗して意気消沈する兵士たちもさることながら
キム・ユシンこそが戦意を失い 絶望してしまっていた
合流の期日までには もう一刻の猶予もないと 檄を飛ばす太子ボムミン
しかしユシンは その焦りこそが大敗につながったのだという
『なぜそんなに弱気なのですか!!!
これでは兵士たちが失望してしまいます!』
黄山ヶ原の百済(ペクチェ)陣営では
敵を蹴散らしたことも 兵糧を奪ったことも
すべては 王子である自分の手柄だと報告させるプヨ・テ
『しかし 俵の中身は偽物でした』
『そんなことは宮殿の父上には分からぬ! 言われた通り報告せよ!!!』
さらにプヨ・テは 黄山ヶ原をケベクに任せ 城に戻ると言い出す
ケベクは 王子の帰還には反対しないが 臣僚は残るべきだと進言し
それもそうだと無関心の王子に 奸臣たちは渋々納得する
ユシン大敗の報告を受け 高笑いする蘇定方
唐軍の単独勝利は 確実になったも同然であった
そこへ 新羅(シルラ)王より親書が届けられる
〈唐軍が単独勝利を強行するのであれば
羅唐同盟を無視し両国を反目させる総官を 裏切り行為の罪で弾劾する
さらには出征軍に 単独で泗沘(サビ)城を陥落させよと命ずる!〉
この事態を引き起こしたのは 蘇定方の独断であり
すべての責任は総官にあると明言され さすがに蘇定方は抗えない
小国とはいえ 一国の王に弾劾され これ以上押し通すことは出来なかった
副総官キム・インムンは まだ油断は出来ぬ!と警戒する
一時的に進撃を止めることは出来たが いつ蘇定方の気が変わるとも限らない
単独勝利が 唐の皇帝の意向だとすれば 親書の効力も危ういと…!
インムンの命令により 黄山ヶ原に向け援軍が送られた
しかし 当のキム・ユシンは出撃命令を出すことなく沈黙したままである
勝手に兵を動かすことも出来ず もどかしく時を過ごす将軍たち…
するとそこへ 花郎(ファラン)の代表が進み出る
上仙(サンソン)は 大耶(テヤ)城攻撃の時にも同じであったと
※花郎(ファラン):美しく文武両道に秀でた青年の精鋭集団
※上仙(サンソン):風月主(プンウォルチュ)を務めた花郎(ファラン)
つまり 戦意喪失している兵士たちに攻撃命令を出しても
命令には従うだろうが 良い結果は望めないというのだ
兵士たち自らが奮起し 出撃させてほしいといきり立つまで!!!
ユシン公は “その時”を待っているのではないかと…!
花郎(ファラン)の代表は 自分たちが先鋒に立つことで
必ずや 兵士たちの士気を高めてみせるという
たとえケベクの前に死すとも! 誇りと名誉まで傷つけられはしないと!
太子ボムミンは これでいいのかと憤り ユシンに談判する!!!
しかしユシンは 妻子まで斬ったケベクの思いに突き動かされ
百済(ペクチェ)の兵士たちは 死に物狂いで戦っているのだという
それに勝るほどの思いがなければ 数万の兵士でも立ち向かえないのだと…
『花郎(ファラン)が死ぬしかないというのですか! そんな…』
花郎(ファラン)たちが先鋒に立つといっても それは正規軍ではない
したがって 正式に将帥がが命ずるというよりは… と押し黙るユシン
そこへ 右将軍キム・フムスンが 息子と共に陣を離れたとの報告が入る…!
フムスンは 兄ユシンの思いを知り 花郎(ファラン)である息子パングルに
命懸けの出撃命令を下した…!
パングルは 味方の士気を高めるべく 先鋒となって散る覚悟だった
百済(ペクチェ)の陣営
単騎で現れた新羅(シルラ)の兵士に対し 単騎で将軍を向かわせるケベク
いずれの将帥かと思い 戦ってみれば まだ若き花郎(ファラン)だった
ここで初めて ケベクの表情が曇る
あっけなく散った この若者の取った行動が 何を意味するのか察していた
ケベクにより 丁重に扱われ戻されたパングルの亡骸
フムスンは 変わり果てた我が息子に縋りつき号泣する…!
すると花郎(ファラン)の代表が進み出て 嘆くだけでいいのかと叫んだ!
自分たち花郎(ファラン)が先鋒となり 黄山ヶ原に勝機を呼び込むと!!!
この花郎(ファラン)の代表こそ キム・プミルの息子クァンチャンである!
ここでもまた ユシンではなく 父プミルが命令を下す
クァンチャンもまた 単騎で敵の陣営に乗り込み
ケベクを“ウィジャ王の犬”と言い放ち 戦いを挑む口上を叫ぶ!!!
ユシンの策を見抜いたケベクは クァンチャンを生け捕りにする
その気概を褒め 死ぬにはまだ若過ぎるという
兵士たちは 天下のケベクに戦いを挑む若者を笑い 十分に辱めた
兵士たちの中には 間者として潜り込んでいるサムグァンの姿もある
乗って来た馬に括り付けられ 惨めに返されるクァンチャンであった
百済(ペクチェ)の陣営では
サンヨン公が 他の奸臣をそそのかし 都に戻って大王を守ると言い出す
もう自分たちがいなくても 勝ったも同然の戦であると笑い出した
この腐った臣僚たちに憤ったケベクは 大剣を突き付けて一喝する
次の戦いには 臣僚たちも前線に出撃してもらうと…!!!
その時…!
生きて帰したクァンチャンが 再び乗り込んできたと報告が入る
惨めな姿で 一度は戻されたが 今度は鎧もつけず単騎で現れた…!
また帰しても おそらく何度も戻って来るであろうと
これが続くようでは こちらの士気が下がってしまうという側近
果たしてケベクの判断は…!!!
新羅(シルラ)の陣営
またも戻って来たクァンチャンの馬は無人であり 血染めの袋が下がっている
キム・プミルは 袋の中の我が息子の首を抱きしめ 誇らしいと泣き叫ぶ
ようやく高まる士気を感じ 今こそ出陣の時だと言い放つユシン!!!
数に勝る兵力を過信し 合流の期日に焦るだけの兵士たちが
ようやく決死に戦う気概を取り戻した瞬間であった…!
クァンチャンの首を帰した時から こうなることは予測していた
ケベクは 今夜にも攻撃が始まるだろうと警戒する
そして公言通り 臣僚たちにも甲冑を身に着けさせた
老いた奸臣たちが先鋒に立てば 犬死することは間違いない
サムグァンは サンヨン公に接触し このままでいいのかと詰め寄る!
新羅(シルラ)軍は
左将軍と右将軍が それぞれに我が息子の命を差し出し士気を高めた
その復讐心はすべての兵士に通じ おそらく勝つことは不可能である
ケベクの目を盗み 新羅(シルラ)軍に対し降伏すれば 命だけは助かる
反対派さえ 自分の民だと言う武烈王であれば 必ず慈悲を施すと…!
キム・ユシンは パングルとクァンチャンの魂を“英霊”と称え
兵士たちの士気を高め 何としてもこの黄山ヶ原を突破しよう!と言い放つ
そしていよいよ 戦いの火蓋は切って落とされた!!!