チーム・バチスタの栄光 (上・下)
著者 海堂 尊 1961年生まれ、千葉県出身。第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞、 「チーム・バチスタの栄光」(宝島社文庫)にて2006年デビュー。現在、勤務医。
田口は本来ガテン系の外科体質だが、血を見るのが苦手で、手術室から最も縁遠い神経内科に入局する。しかし上昇志向が全くなく、学部内の権力闘争に露ほども関心を示さない変わり者だ。
出世意欲はないけど保身の術には長けていて、医局内の出世闘争を巧みに遺り凄し、年功序列で納まった医局長の地位と引き換えにささやかな自分の城を手に入れる。
その名も不定愁訴外来ー通称、グチ外来だ。田口のグチと愚痴を掛けたこの外来は、病院内部でそれなりの存在価値を発揮し、いつしか教授といえども迂闊に手を出せない聖域となっていった。が、大学の”浮浪雲”ともいうべき窓際族の田口に、ある日、病院長の高階から思いがけない密命が下る。
東城大学医学部付属病院のエース、桐生恭一率いるバチスタ手術チームを調査しろというのだ。
バチスタ手術とは拡張型心筋症に対する手術式のひとつで、肥大した心臓を切り取って小さく成形し、心臓の収縮機能を回復させるというものだ。
正式学術名称は左心室縮小形成術だが、創始者であるR・バチスタ博士の名前を冠した俗称の方が多く知られている。
アメリカの心臓専門病院で技量を磨いた桐生はこの分野の国内第一人者で、臓器統御外科助教授として東城大に招聘されて以来、チーム・バチスタと呼ばれる専門チームを結成し、リスクの高いこの手術で次々と成功を収めていた。
その勇名は「チーム・バチスタの奇跡」という見出しで新聞にも取り上げられたほどだ。
ところが、ここ三例立て続けに術中死が起こり、折しも、次の患者は海外の少年ゲリラ兵士ということでマスコミの注目を集めていた。
そこで、このところの術中死がたまたま不運の連続したものなのか、それとも医療過誤か、故意ーすなわち殺人なのか、内部調査しろというのだった。
なぜ窓際族の万年講師に、大事な調査を任せるのか。まずはここが最初の読ませどころだろう。
作者は、大学病院における権力闘争や、疲弊硬直した内部の実態を暴きつつ、田口と高階の過去の経緯をはじめとする院内の人間模様を巧みに織り込み、読者を納得させていく。
と同時に、田口の変わり者だが変人ではなく、横着者だが真摯に患者に向かい、冷めているようで内部に熱を封じ込めている特異なキャラクタ-を、読者の前で徐々につまびらかにしていくのだ。新人離れした上手さと言っていい。
しかし田口以上に凄いのが「火喰い鳥」の異名をとるロジカル・モンスター、白鳥である。
厚生労働省大臣官房秘書課付技官で、医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長という、いかにもお役所的な長い肩書きを持つこの男のキャラクターは、いわく言い難いものがある。
白鳥が駆使するアクティヴ・フェーズ調査とパッシング・フェーズ調査の違いを理解する以上に、この奇妙奇天烈なキャラを一口で説明するのは困難だ。
白鳥キャラは本書最大の読ませどころだ。読者は実際にその眼で、各自じっくり検証していただきたい。強烈な個性に、脳髄を抉られること請け合いである。
崩壊寸前の大学病院の現状や医療現場の危機的状況など、現代医療が抱える今日的問題を隠しテーマとして内包している点も、見逃すべきではない。(解説一部より)
★少し前の話題になった医療小説ですが、現役の医師ならではの専門知識がミステリー的に発揮されていきます。
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞、この小説がデビュー作品、これからはまっていきそうです。強烈な印象が残ります。
著者 海堂 尊 1961年生まれ、千葉県出身。第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞、 「チーム・バチスタの栄光」(宝島社文庫)にて2006年デビュー。現在、勤務医。
田口は本来ガテン系の外科体質だが、血を見るのが苦手で、手術室から最も縁遠い神経内科に入局する。しかし上昇志向が全くなく、学部内の権力闘争に露ほども関心を示さない変わり者だ。
出世意欲はないけど保身の術には長けていて、医局内の出世闘争を巧みに遺り凄し、年功序列で納まった医局長の地位と引き換えにささやかな自分の城を手に入れる。
その名も不定愁訴外来ー通称、グチ外来だ。田口のグチと愚痴を掛けたこの外来は、病院内部でそれなりの存在価値を発揮し、いつしか教授といえども迂闊に手を出せない聖域となっていった。が、大学の”浮浪雲”ともいうべき窓際族の田口に、ある日、病院長の高階から思いがけない密命が下る。
東城大学医学部付属病院のエース、桐生恭一率いるバチスタ手術チームを調査しろというのだ。
バチスタ手術とは拡張型心筋症に対する手術式のひとつで、肥大した心臓を切り取って小さく成形し、心臓の収縮機能を回復させるというものだ。
正式学術名称は左心室縮小形成術だが、創始者であるR・バチスタ博士の名前を冠した俗称の方が多く知られている。
アメリカの心臓専門病院で技量を磨いた桐生はこの分野の国内第一人者で、臓器統御外科助教授として東城大に招聘されて以来、チーム・バチスタと呼ばれる専門チームを結成し、リスクの高いこの手術で次々と成功を収めていた。
その勇名は「チーム・バチスタの奇跡」という見出しで新聞にも取り上げられたほどだ。
ところが、ここ三例立て続けに術中死が起こり、折しも、次の患者は海外の少年ゲリラ兵士ということでマスコミの注目を集めていた。
そこで、このところの術中死がたまたま不運の連続したものなのか、それとも医療過誤か、故意ーすなわち殺人なのか、内部調査しろというのだった。
なぜ窓際族の万年講師に、大事な調査を任せるのか。まずはここが最初の読ませどころだろう。
作者は、大学病院における権力闘争や、疲弊硬直した内部の実態を暴きつつ、田口と高階の過去の経緯をはじめとする院内の人間模様を巧みに織り込み、読者を納得させていく。
と同時に、田口の変わり者だが変人ではなく、横着者だが真摯に患者に向かい、冷めているようで内部に熱を封じ込めている特異なキャラクタ-を、読者の前で徐々につまびらかにしていくのだ。新人離れした上手さと言っていい。
しかし田口以上に凄いのが「火喰い鳥」の異名をとるロジカル・モンスター、白鳥である。
厚生労働省大臣官房秘書課付技官で、医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長という、いかにもお役所的な長い肩書きを持つこの男のキャラクターは、いわく言い難いものがある。
白鳥が駆使するアクティヴ・フェーズ調査とパッシング・フェーズ調査の違いを理解する以上に、この奇妙奇天烈なキャラを一口で説明するのは困難だ。
白鳥キャラは本書最大の読ませどころだ。読者は実際にその眼で、各自じっくり検証していただきたい。強烈な個性に、脳髄を抉られること請け合いである。
崩壊寸前の大学病院の現状や医療現場の危機的状況など、現代医療が抱える今日的問題を隠しテーマとして内包している点も、見逃すべきではない。(解説一部より)
★少し前の話題になった医療小説ですが、現役の医師ならではの専門知識がミステリー的に発揮されていきます。
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞、この小説がデビュー作品、これからはまっていきそうです。強烈な印象が残ります。
かなり前に駅前の本屋でこの作家の本を
立ち読みしたことがありますが、
たしか医療問題の本(題名を覚えていません) で、作家自身が医師ということで、
社会性のあるテーマをスリルとサスペンスに
富んだ切り口だったことを感じました。
改めて本屋で眺めると、この海堂 尊という
作家は大変多作の人ですね。
あなたがまとめた「あらすじ」を見ただけでも、読んでみたいと思いました。
連続術中死の原因を探るための、医療小説という
ことでスリルとサスペンスに満ち溢れていました。
海道 尊の本、面白いですね。
読んでいく内に、考える力がついてきそうです。
またどうぞ、お読みになってくださ~い。
有難うございました。
解説を読ませてもらうと、とても読みたくなります。
また読み手を引き込んでいく作家の文章力はすごいな、と思います。
行く当てがなければ、貸してください。
医療現場を舞台にするミステリー小説、ドキドキ
しながらページをめくっていました。
文章力は凄いですよね。是非読んでください。
教室に持って行きます。お楽しみに!!