高校時代、朝は東海道線の醒ヶ井駅
から米原へ。近江鉄道に乗り換えて「彦根口」駅で下車し、すぐ間近の学校に登校したのだが、
下校時は、毎日芹川堤を歩き、彦根城内を巡り、あちこちと寄り道しながら彦根駅へ向かった。
内堀に沿って、先年、映画「武士の一分」のロケ地ともなったのが、埋木舎(うもれぎのや)
である。 彦根藩井伊家では、やがて藩主となる世子以外は、養子に行くか、寺に入るのが
決まりであった。
石蕗の花むかし美し彦根かな
大老の苦き若き日初時雨
彦根藩主の14男として生まれた、井伊直弼が15年の長き間、住み暮らし、
「世の中を よそに見つつも うもれ木の 埋もれておらむ 心なき身は」と詠み、
一生を300俵の
捨て扶持の部屋住みの身を、後に腹心となる長野主膳に国学を学び、禅、儒学、洋学、
さらに書、絵、和歌のほか、剣術、居合い、砲術、乗馬、茶の湯など多数の趣味に没頭し、
世捨て人の諦念を抱きつつも、苦悩と屈託の多い青春を送ったのである。
古きものゆかしく残る
彦根の地
千両の実の朱色愛しき
許されて
直弼公のお居間より眺める
庭の石蕗の花