白い指先で髪をすきながら、五月の薫風にほほえむ横顔が眼に浮かぶ。
それは庭に咲き誇る、赤や白の牡丹の花を見つめる、40年前の乙女のままの君の姿である。
わが死せるのちも
愛しき湖山は
君をひとすじ永久に思わむ
今年も長浜・総持寺の境内に、牡丹の花が咲き競う、華麗な季節が訪れた。
それはまた、5月生まれの君だけを40年思い続けた、麗しくも切ない季節でもある。
境内一面に植えられた牡丹は、100種類一千株。 冬の積雪に耐えて鮮やかに咲く花は
五月の初旬に見ごろを迎えるのだが、今日はまだ咲き始めである。 「入山料」200円也。
花の開花にしたがって、その値・・・300円、400円と上がっていくのでありまする。
美しき夢に残していく恋と
冷たく言いぬ
年上のひと
長浜の下宿へ遊びにきたそのひとを、抱きしめて、ブラウスに手をかけた時、
「軽蔑するわ」 と、ボクの腕の下で言ったひと・・・・。
清らかなままで一年後に嫁いでいったそのひとは、伊吹山の麓の邑で安らかに暮らして
いることだろう。
牡丹や石楠花のような、華やかなイメージではない、ひそやかな野の花のようなその人が、
風に吹かれているとふっとむかしのままに、涙のなかに立ち顕われてくる。
「五月のひと」 と名を呼んだ、はるかな恋物語が甦るのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます