サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

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リペア(修理・修繕)に関する情報提供のあり方

2009年08月17日 | 循環型社会・3R
写真:エキナセア


 昨年度、環境省のリペア実態調査を受託し、リペア関連市場の現状把握と将来予測、リペア関連ビジネスの実態調査、あるべき施策検討を行った。

 同調査の報告書(公開)を踏まえ、リペアに関連する施策のうち、特にリペア関連の情報提供のあり方について、提案を整理しておく。


(1)リペアに関する需要喚起の可能性と情報提供の必要性


●リペアの実施率を高める余地

 環境省の委託調査で実施したアンケート調査の結果では、「リペアを実施したことがない・わからない」とする比率は、かばんのリペアの場合で66%、家具61%、履物・靴52%、衣服43%、PC・カメラ42%、家電製品37%という結果である。

 ほとんどの国民がこれらの物を所有している状況を考えると、リペアの実施率を高める余地を残していると考えられる。

●リペアの非実施理由としてのリペアに関する情報の不完全さ

 アンケート調査では、「リペアをすれば使えることがわかっていても、買い換えることが多い」あるいは「リペアのことはあまり考えずに、壊れたり、不要になったら買い換えている」と回答した理由のうち、「リペアをする店を知らないから、リペアの方法がわからないから」とする回答が23%、「リペアをしても、物がよくなるかどうかわからない、安全・安心面で不安があるから」とする回答は20%である。
 
 つまり、リペアの方法や安全・安心面に係る情報の不完全さが、リペアの実施を阻害している。

●リペアに係る普及啓発への国民とリペア関連業の要望

 アンケート調査において行政に要望する施策のうち、「リペアを促すための広く社会に向けた普及啓発やキャンペーン」の回答比率は41%である。

 一方、靴修理業では、靴磨きや修理を劣位な行為と見なすようなマイナスイメージの払拭を課題とし、店のデザインにこだわってきたという。また、衣服修理業においては、新たに設立した業界団体の名称を「ファッション・リフォーム」とする等、業界のイメージアップに努めている。

 このように、各業界として個別にリペアのイメージアップを図っているところであるが、リペアの実施率を高めるために、行政がリペア業界の普及啓発に取り組む意義がある。行政が関与することで、信用度が高まり、普及啓発の効果は大きくなる。


(2)インターネットの利用、人的アドバイス等による需要喚起の必要性

●リペアに関するインターネットの利用意向

 アンケート調査によれば、リペアに関するインターネットの利用は、「インターネットで、リペア発注した」1割未満、「リペアに関するWEB情報は、十分行われているとは言えない」5割という結果である。

 「リペア総合サイトがあれば利用したい」について、「そう思う」とする回答は3割強、「どちらかというとそう思う」とする回答を含めると8割がリペア総合サイトの利用意向を持っていることになる。

 アンケート調査はWEB登録モニターを対象としているため、WEB利用率が高いことを考慮する必要があるが、リペアに関するインターネット利用率は一定程度高く、その利用意向もあると考えられる。

●信頼できるWEBポータルサイトの必要性

 リペア関連団体・企業へのヒアリング調査では、WEBポータルサイトについて、民間でバイアスがかった中途半端なサイトをつくるより、行政が信用性のあるものをつくって欲しいという意見が多くあった。

 インターネットによるリペア関連サイトの実態をみると、既にリペアに関する事業者のリンク集のようなサイトが多く存在する。しかし、これらのサイトは、網羅性やリンク先の抽出基準等が明確にされていない。家具職人の検索サイトにように業界団体が作成されたものや、京都市におけるリペア関連の店を紹介するサイトもあるが、限定的なものである。

 公的中立機関が作成するポータルサイトを構築することで、一般の閲覧者からの信頼性も高まり、利用者のリペアに対する不安を解消し、需要を喚起する効果が期待できる。


(3)リペアに関する普及啓発・需要喚起における留意点

●リペアの実施率を高めるために訴求すべき情報

 アンケート調査結果では、「できるだけリペアをして、長く使うようにしている」と回答した理由の上位3位は、①慣れ・機能の重視、②環境配慮意識、③愛着・味わいといった精神面の側面であった。

 上記を踏まえると、リペアを促進する上では、リペアを心がける理由として多い精神的な側面を訴求することで、リペアへの志向性を高めることができると考えられる。

 例えば、今回ヒアリングを行った衣服修理業では、現在、「愛着キャンペーン」を実施している。愛着や思い出を大事にしたい、楽しみたいという点が動機に訴えるという方法である。リペア業全体の普及啓発においても、廃棄物・リサイクル政策としての必要性を訴求するのではなく、自分の精神的満足感を高めるためにリペアを行うという呼びかけが効果的であると考えられる。

●リペアによる効果等に関する適正な情報提供

 アンケート調査では、「リペアをすれば使えることがわかっていても、買い換えることが多い」あるいは「リペアのことはあまり考えずに、壊れたり、不要になったら買い換えている」と回答した方の理由の上位3位は、①経済性、②利便性、③情報不足であった。

 つまり、買換えを促している理由である経済面、利便面、情報面の課題を解消するような情報提供を行うことで、リペアへの志向性を高める可能性があると考えられる。

 リペアに係る費用と買換えをした場合の費用の比較情報、リペア専門事業者の所在等の情報を提供することで、買換えを抑制し、リペアを促す可能性がある。

 また、環境面の効果について、家電製品について、古いものを修理して使い続けることで環境負荷が高くなるのか・低くなるのか、遠くに所在するメーカーに運んで修理することと近場に所在する修理業で修理することでどれだけに二酸化炭素排出量が抑制されるのかなど、リペアに関する環境改善効果に関する適正な情報提供を求める意見がある。


(4)リペアに関する普及啓発・需要喚起の方策
 
 (1)~(3)に示したように、リペアに関する普及啓発・需要喚起については、必要性があり、施策による効果が発揮される余地も大きい。

 普及啓発や需要喚起の方策を、次のように考察する。

・3Rや地球温暖化対策に関する国民運動で既に実施してきているように、普及啓発・需要起のためには、国、地方公共団体、関連業界団体等が連携し、役割を分担した取り組みを進める。特に、リペア等サービス業は、各事業所の規模も小さい場合が多いため、一般消費者の信頼を得た普及啓発等を行うために、行政が積極的に関与する必要がある。

・行政では、リペアの普及啓発に資する客観的な情報を整理し、インターネット等で広く、一般に提供することが望ましい。この際、リペアによる長寿命化の効果をLCA(ライフサイクルアセスメント)の方法で評価した情報などが必要である。

・実際の需要を喚起するには、消費者の身近にある地方公共団体が、国と連携しつ
つ地域に密着した具体的な情報提供や、リペア関連事業者や地域の大学、関連NPO等と連携した普及活動が有効であると考えられる。この際、環境面だけの効果を強調するのではなく、物を大事する暮らしの豊かさや満足度等を訴求するような、ロハス的な訴求の仕方を工夫することが望ましい。

・地域におけるリペアの普及啓発においては、地方公共団体毎に整備されたリサイクルプラザが役割を持つものと考えられる。家具、自転車等のリユースやリペアに関する講習会を実施しているところも多く、その認知度を向上させるとともに、リペアに関する相談窓口を設けることも考えられる。

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2 コメント

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アンケートの報告書について (谷田 泉)
2010-06-03 18:52:40
記事を読ませていただきました。
この調査結果に興味を持ち調べてみたいのですが、検索してもそれらしいものが発見できません…。
この調査の報告書を閲覧するにはどうしたらよいでしょうか?
返信する
環境省に (白井)
2010-06-04 13:55:29
お問い合わせ、ありがとうございます。

調査の委託元である環境省廃棄物・リサイクル対策部にお問い合わせくださいませ。

もし、それでも、ご不明でしたら、私の方でお教えできる範囲をお教えします。
返信する

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