名門酒会の酒 一人娘を楽しむ
侘輔 今日のお酒は浅野さんからの差し入れなんだ。
呑助 どこのお酒ですか。
侘助 茨城県石下のお酒なんだ。
呑助 今は常総市ですね。
侘助 旧石下町かな。行ってみると小さな酒蔵だよ。
呑助 茨城にも美味しい酒があるんですね。
侘助 茨城には美味しい酒が結構あるんだ。有名なところで言うと水戸の「副将軍」で有名な明利酒類、漫画「美味しんぼ」で紹介され人気の出た結城の「武勇」、つくば市の浦里酒造の「霧筑波」、石岡の府中誉の「渡舟」、それから旧石下の山中酒造が醸す「一人娘」があるんだ。このお酒は「日本名門酒会」のお酒なんだ。お酒の卸問屋「岡永」が茨城県では唯一山中酒造を選び、販売している酒蔵なんだ。日本名門酒会では各県一軒の酒蔵を選び、酒販店を選別する。春日部市には一軒の酒販店にしか卸さない。このようなテリトリー制を採用して販売しているお酒なんだ。
呑助 酒造業界には酒造業界の名酒の販売方法があるんですか。スーパーで買えるような酒は名酒じゃないと烙印されてしまいそうですね。
侘助 スーパーで売られるようになるとなんとなく名酒の品格が落ちて来るようなイメージがあるように思うな。例えば、「獺祭」かな。今じゃ、スーパーで買える所があるらしいよ。すると大量販売の酒になったなという感じかな。「越乃寒梅」はすでにそうなっているよね。
呑助 「越乃寒梅」が有名になったのは今から何年前になりますかね。
侘助 1980年代だからね。もう30年前になるかな。
呑助 もうそんなになりますか。一級、二級、特級という級別廃止になってどのくらいになりますか。
侘助 級別が廃止されたのは1992年、平成4年のことだからもう25年前のことになるかな。
呑助 なぜ級別を廃止したんですかね。
侘助 級別を廃止した理由は簡単だ。その方が税金をたくさん徴収できると当時の大蔵省は考えたということだよ。
呑助 へぇー、そうなんですか。
侘助 間違いなくそうだと思うよ。級別を廃止した背景には、前史があるんだ。1970年になると国鉄が赤字になった。そこで国鉄は電通に依頼し、広告をだした。それが「ディスカバージュパン」、旅行に出かける吉永小百合の広告写真が国鉄駅に張り出されたんだ。
呑助 地方の発見ですか。
侘助 そうなんだ。そこで発見された名酒が新潟の二級酒「越乃寒梅」だった。それからだよ。特級酒や一級酒が売れなくなったのは。特級酒より美味しい二級酒が売れるようになった。
呑助 それからですか。特級酒より美味しい二級酒がたくさん発見されていくんですね。
侘助 そうなんだ。まずは新潟の酒が脚光を浴びた。「雪中梅」「八海山」「久保田」その他たくさん人気が出た。
呑助 そして「日本名門酒会」もできたんですか。
侘助 そうなんだ。その結果、級別は廃止。国税庁は造りで酒を区別し、課税する方法を編み出し、特定名称酒という名前をつけた。「吟醸酒」とかね、その方がたくさん徴税できるから。