*****ご注意 一部ネタバレの可能性があります*****
以前かなり話題となった本書をようやく読みました。
著者は児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務した経歴で、医療少年院での経験から、少年院では更生を目的としているが「反省以前の少年たち」が多数いることを伝えたいと本書を書き上げた
理由は非行少年達の認知能力が低いが、そのことに気づいてもらえないことだという。
その顕著な例が丸いケーキを3等分にするにはどう切るという質問への回答
〇に半分の線を入れてから次の線がかけない。
小学校低学年の段階で学校の学習から落ちこぼれてしまっていた例が多く、そもそも質問の趣旨が分からない可能性も高いという。
背景には家庭環境などもあるが、本人に知的障害がある場合も。
漢字が覚えられない、黒板が写せないなど、ワーキングメモリが低いことも認知能力障害のひとつ。
通常のIQ検査では他の能力の陰にワーキングメモリが低いことが見落とされる例もあるのだという。
また、人を殺したい、性犯罪を犯したい等の気持ちを抑える力を身に着けるのも認知能力だという。
本書の中での事例は多岐にわたり、まだ研究段階のものでもあるが、著者が出会った非行少年の多くが、一般社会で当たり前に理解できると思われていることを理解できず生き辛い生活を送っている例が多いことは理解できた。
著者も言っているが、だからといって犯罪を犯していいわけではないが、非行少年の実態を知らず、更生をさせようとしても表面上のものにすぎず、再犯を抑止するのは難しそうだ。
近年発達障害への理解は大きく進んだ。一方認知能力が伸びない知的障害への理解は社会も教育現場もまだまだだという。