臨済宗・扇谷山海蔵寺は鎌倉市扇ガ谷にあり、水の寺とも呼ばれる花の寺である。
仏殿には薬師三尊像がまつられている。
4月中旬になると境内のカイドウが素晴らしいそうだ。
本堂の背後に瀟洒な庭園があるらしいが今回は見学しなかった。
それでも横手に回ってみると、やぐらとの間にいろんな植物が見られた。
クロモジは葉芽の脇に花序がついている姿が面白い。
ヤマブキはそろそろ花を開こうかという蕾が一つ二つ。
こちらから見ると目の高さぐらいの所に並んだスミレの色がいい。
境内反対側には竹林があり、その前にもいろんな草花たちがある。
シャガは道すがら他の場所でも見られて、ちょうど季節の花らしい。
もちろんタンポポにオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザなど野の花はにぎやかだ。
ハチも花粉まみれになって極楽、極楽の花の寺。
一方で水の寺と言われるのは2ヵ所にある井戸によるものだろう。
鎌倉は良い水にはあまり恵まれていない中で井戸は貴重なものだったにちがいない。
中で美味しいなどと昔からの言い伝えある10か所の井戸を鎌倉十井と呼んでいる。
鎌倉十井
海蔵寺の山門脇の「底脱の井」もその一つだ。
傍の石碑に「千代能がいただく桶の底ぬけて 水もたまらねは月もやどらず 」とあり、
無著禅尼が参禅した時の悟り歌が底脱の井の名前の由来とされている。
もう一つ境内の南側の岩窟に「十六井戸」がある。
海蔵寺はもと真言宗のお寺であって金剛功徳水という井戸があったが、
禅寺となった鎌倉期には天災により埋もれていた。
観音菩薩が中興開山の夢に告げて「この井を掘り出し掃除をすれば清水湧き出て再び霊験あらわれよう」と。
夢から覚めた禅師がその通りにすると観音菩薩像が出現し、
井戸の水を加持し衆生に施したところ霊験あらたかであった。
直径70cm、深さ4~50cmの井戸が4x4すなわち十六並んでいる。
中央に観音菩薩像、その下方に弘法大師像が安置されている。
窟前の句碑は 十六の井その名所やをほろ月 一峰 (金子一峰)