索引 100分de名著 『古代研究』 折口信夫
「マレビト」「常世」といった独自の概念を生み出し、戦前、戦後を通じて、国文学と民俗学に決定的な影響を与えた折口信夫(1887―1953)。
二十年来の研究を集大成し「折口学」と呼ばれる学問構想の全容を示した代表作が「古代研究」です。
来年、没後70年を迎えるタイミングで、折口についての様々な研究書や読み物が出版され、一般の人々の間でも関心が巻き起こっています。
そこで「100分de名著」では、難解といわれる折口の思想に現代の視点から新しい光を当て「古代研究」を読み解くことで「日本文化とは何か」をあらためて見つめなおします。
「古代研究」といっても歴史学の書ではありません。古代人の心性に論理を超えた直観で迫りながら、日本文化の基層にあるものが何なのかを明らかにしようという野心的な著作です。
そこでは、万葉集から新古今集に至る国文学の生成発展から、古代人の生活、聖賤入り混じる日本の芸能史、神道や伝説の深層まで、「マレビト」という鍵概念をベースにした、
縦横無尽な探索、論考が行われ、既存の学問的枠組みを超えた壮大な試みが展開されています。
「古代研究」を読み解いていくと、茶道や華道といった芸道や「おもてなし」に象徴される日本文化の隅々にまで、古代的な心性の深い影響が及んでいることがわかります。
また、ごく日常的な営みにも現れる日本人ならではの感受性が歴史を通じてどう育まれていったかを知ることもできます。
いわば「古代研究」は日本人の心性の原点を探りだす著作なのです。
HAUSER - Song from a Secret Garden