私の勤め先があるビルの4階には、メールセンターがある。
ウチの会社宛に届く郵便物や宅急便を、各フロアの各部署に仕分けて届けたり、
逆に各フロアからの郵便物や宅急便を回収して発送したりするところである。
要するに社内の集配局だ。
郵便物が届くと、メールセンターのおっちゃんは、
各フロアの入り口まで持って来て、担当の部署に電話をし、
電話に出た人(たいていはアライアンスのお姉さん)が受け取りに行く。
ところでこのおっちゃんが、
こう言ってはなんだが、電話口での対応がちょっと悪いのである。
自分の名前を名乗らずに、いきなり呼び出したい相手の名前を言って
「○○さんいますか?」
「××さんですか?」
とはじまるのである。
その後にようやく「メールセンターですけど」と言って荷物を取りに来いという。
文章にしてしまうとただそれだけのことなのだが、
滑舌の悪さとか、語気とか、いろんな要素とあいまって、
なんだかとても印象が悪いのである。
さて、今日の昼間、そのおっちゃんからウチの担当に電話がかかってきた。
私が電話に出ると、いきなり
「Yさんいますか?」
とうちの担当のアライアンスのお姉さんを呼ぶ。
私が答えるか答えないかのうちに、用件も言わずに
「Yさんに来るように言って」
とだけおっちゃんは言った。
来るように、とはメールセンターのある4階に、という意味だ。
私のフロアは12階。
なんだってこのおじじは、うちの優秀なアライアンスのお姉さんをわざわざ
4階まで呼び出すのか。
どうせ郵便物に不備でもあったんでしょ。
私でよかろう。幸か不幸か、手があいてたし。
そんなわけでのこのこと4階のメールセンターに降りていき、
「Y宛に電話をいただいたので来ました」
と(たぶんいささか怖い顔をして)いうと、電話の主をはじめ、
センターのおっちゃんおばちゃんがぽかんとしている。
はて?なにか変なこと言ったかの?
すると電話の主のおっちゃんが
「あれ?Yさんいなかった?忙しかった?」
という。
「えっと・・・Yに何のご用でしたでしょうか」
と(たぶんますます不快感をあらわにして)いうと、おっちゃんは
「あぁ、郵便だと思ってきたの?違う違う、スイカ切ったんだよ」
今度は私がぽかんとする番だった。
一瞬ののち、私は事態をのみこんだ。
メールセンターのおっちゃんは各部署でいつも郵便物の受け渡しをする
アライアンスのお姉さんたちと仲良しだったのである。
誰かのおみやげのスイカをそのお姉さんたちにおすそわけすべく、
仲良しのお姉さんのいる担当に片っ端から電話をかけていたのである。
古きよき?昔のわが社を思わせるのんきさ。
「あぁ、そういうことでしたか。じゃあYを呼んできます」
と拍子抜けして戻りかけた私に
「食べていきなよー」
とおっちゃん。
うん、その一言、まってました。
「いいんですか?すみませんねー」
とか言いながらメールセンターの中にはいっていくと、
机に切ってあったのは黄色いスイカ。
一切れいただくと、さっぱりした爽やかな甘さだった。
あぁ、悠長な会社だなぁ。