羽越本線は羽後本荘辺りで一旦海岸から離れましたが、羽後亀田駅を過ぎてほどなく、再び海の見える場所をはしり始めました。
「岩城みなと」を発車した頃、日本海に沈み始める夕陽が車窓を照らし、電車が線路に奏でるリズムも、心なしか先を急ぐ音色に変わりました。
並走する国道7号と海岸との間のマツ林を眺めていたら、4年ほど前に秋田市内でマツ葉の長さを測ったことなどを思い出しました。
あの時も今日も、「世はすべてこともなし」のままに一日が過ぎ去ってゆきます。
電車はやがて雄物川を渡り、
18時19分 秋田駅に到着しました。
私は昨年も、それ以前も、幾度も秋田に来ていますが、いつも車の旅でしたから、秋田駅に足を運ぶのは数十年ぶりです。
駅周辺の変わりように、本当におどろきました。
記憶にある秋田駅は、駅前ロータリーを渡ると、木造二階建ての居酒屋が並ぶ繁華街があって、そのうちの一軒の「忍」という、小さな小上がりとカウンダーだけの店で、しょっつる鍋に高清水のお銚子を2本、のイメージなのですが、それは40年以上も前の話ですから、驚くのも当然です。
人生を振り返ればあっという間の出来事でした。
足元に想い出だけが散り積もります。
秋田で1時間程の待ち時間があったので、「忍」のような店を探し、西口を10分ほどもうろついたのですが、全ての店がビルに納まり、ノスタルジックな雰囲気を求めるのは勘違いだと、早々に気付かされました。
そこで目にした西武の食品売り場へ足を運び、夕刻のタイムセールで3割引きになった弁当と500㏄の缶ビールを手に、19時30分発の青森行き快速電車に乗り込みました。
発車まで数分の時間がありましたが、健康的な体躯の高校生がロングシート席の8割方を占め、ほぼ全員がスマホを覗き込んでいました。
自動化された車内放送は標準語で、乗客の声は全く聞こえません。
東京からはるばる数百キロを旅してきましたが、「人混みの中に、そを聞きに行く」のような旅愁を期待したことが大きな勘違いでした。
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